ユーラシア異世界転移記
猫又
第一章 新たな世界
第1話 始まりの汽笛
───ベルギー王国 ブリュッセル 欧州連合本部 2026/6/12 ██時██分(UTC準拠)
本部の中にある会見室には多くの記者と欧州連合加盟国の面子が一挙に揃っていた。何故か、それは仮想敵であったロシア連邦の欧州連合への加盟が承認され、今日ここで発表されるからである。
壇上にはロシア連邦欧州議員団の代表であるセルゲイ・ナザロフ氏が立っており、演説を行なおうとしていた。
そして壇上の前には多くの各国報道局員がカメラを回し、この瞬間を世界に発信しようとしていた。
「皆さん、今日は歴史的な日となりました、我がロシア連邦がこの欧州連合に加盟する日となるのです。一度は敵対し、睨み合っていた者同士が手を取り合い、国際的な平和に向けて歩もうとしているのです。
これを気に我がロシア連邦は……」
その瞬間、人々は何処から現れたのか分からない閃光に目を瞑ってしまった。何秒経っただろうか、セルゲイが目を開けると欧州連合会見室ではざわめきが起こり、警備員が自体の確認のため走り出し、ボディーガードが要人の周りを囲っている、無論自身も囲まれているのだが。
「何が起きている!」
「分かりません!ですがまず議員を会議室に避難させるべきでは?」
「そうだな、ありったけの人員を集めろ!このビルを封鎖するんだ!」
「了解!」
警備員が慌しく走り回る。
セルゲイを含む欧州議員たちは会議室に移動したが、各国報道陣は混乱しながらもカメラを回し続け、現状を発信し続けた。
───カンデラ王国 王都メリーナ 5026/6/12 ██時██分(カイチ標準時準拠)
神殿のような見た目ではあるが内装は中世ヨーロッパによく見られる宮殿の中ではカンデラ王国の重鎮たちが集まり、突如出現した新大陸について議論を行っていた。
「ワイバーン飛行警備隊が発見した土地は完全に新大陸であると言えるでしょう、昨日までは海だった場所に突如出現したようです。」
「我が王国から近いのか?」
「ええ、一番近いのはクゥエリィでしょう、あそこなら海路を使って移動が可能です」
「原住民はいるのか?」
「確認が取れています、大きな街があるようで、これから調査部隊を送る予定です」
島国であるカンデラ王国は国防のために強大な海軍力を保持しているが、陸軍などはこの世界における中では弱い部類に入り、基本的には侵攻など行う事ができない小国である。
「彼らが友好的であれば我々は新たな貿易相手を見つけることが出来ますね」
「だが敵なら?こんな近くに敵対国がいれば安全保障に関わりますぞ!」
「話してみなければ何も分かりませんよ、外交官の派遣をお許しいただきたい、国王陛下」
一人の重鎮が話しかける先には重鎮たちの会議を聞いていた国王であるカルロス2世が王座に座っていた。そして口を開く。
「いいだろう、外交使節を派遣して様子を伺え」
「仰せのままに」
これはカンデラ王国とヨーロッパの国交樹立の一歩となる。
カンデラ王国がそのような議論をしている中、新大陸を狙おうとする者も現れる。
地理的にはイギリスから北に200kmほど行くと見える異世界第二の大きさを誇る大陸、メーメル大陸内で雄一の列強、ザボッド帝国であった。
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