ダークロード

飛瀬川吉三郎

プロローグあぁ、巨魁、恐怖の大王


新時代、202X年、世界はサイバーパンクそのものの近未来都市になった。


もちろん東京もそうだが、岡山県に遷都して西京せいきょうと呼ばれるようになる。


空には空飛ぶ車があり、高速道路ならぬ亜高速道路がある。


羽の影一つ一つに憂いた時代が懐かしい。それは、もはや機械的になった。


路地裏では、モブのようなサイボーグ黒色忍者達の屍の山が築かれていた、男の娘が、一人いた。盧生の夢の本来の意味とは邯鄲で呂翁という道士から枕を借りて一眠りしたところ、立身出世を極めるという夢を見た。それのようだった。


「だるいっスねぇ………」


真淵風子まぶちふうこは、屍の山の上に座り、不気味で奇妙なお山の大将になっていた。


両手には禍々しく氷結した小太刀が刃をより、伸ばしていた。


「おい」


そこに金髪碧眼の眼鏡をした秘書一級の秘書検定合格した有能な秘書がいた。


そして、カツンッ、カツンッと、杖が鳴る音がする。


髑髏杖、千手観音の左手の持物の一つ、この場にはあまりにも場違いだった。


「………ここは、俺様の禁断の領域ランディングゾーンだ」


その場所をあえて触れるような人間は少ない。


カツンッ、カツンッ、カツンッ、路地裏に小気味よく響く杖と地面が擦れる音。


その後ろには、物凄く既視感がある世界一の速さを誇る空飛ぶ車がある。


風が、どこまでも、獰猛に吹き荒れる、それによって、空飛ぶ車に制御不可能に近い微振動さえ起こるが、それでさえ、誤差の範囲になったのが、この未来だ。


姿を見せた、銀髪だった。アッシュグレーである。更にウェーブヘアーの黒いドレスをした逆十字のペンダントをした女性を四つん這いにして、人間椅子にした。


そこに更に四人のデンジャラスな人間達が現れた。


「………へぇ………これが、秘密の恋人かしら?」


彼女の名前は鬼間渚きまなぎさ、赤い短髪に棘のような両角を生やした紅色夜叉のサイボーグ。


それに、サングラスに狼牙棒を持った黒髪をオールバックにしたオートクチュールのオーダーメイドの青いスーツ姿の糸目の中国人、奇術師マジシャン文戒ふみかいが笑う。


「………問題だ、敵ならば、徹底的に圧倒的に骨の髄まで粉砕する」


魔導書、魔亡無との契約書を手にした黒服のジェニファー・ロールスロイスが笑う。


「フフフッ………まぁ………この死体どう処理する?」


それに、金髪を逆立てた三角の黒いサングラスをした山本金三やまもときんぞうは言う。


「どうでもいいだろ、こんなの、こんな時代にはありふれている、平成時代をいつまでも懐かしんでるんじゃねぇ、強欲に生きる、それが今の世のことわりだ」


山本金三が、走り出す。両靴からジェットを放つ、両腕からもジェットを放つ。


亜音速さえも、これほどまでに再現できる。ロボット技術の亜種、サイボーグだ。


ボンッ、と爆破音がした。真淵京子の右に避けた肩の上である。


「俺は、爆弾魔ボマーだ、そして、この男の一番の親友でもある」


真淵風子はそれを聞いて、どうでもいいと思った。


「………なんでもいいよ、私、帰るね」


パルクールの用法で、ビルとビルの間を駆け上がってその場から華麗に去った。


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