第38話 紫水晶の弾丸
皇帝の私室には
薄暗いのは照明の少なさもあったが、魔力を込めた目で見たときにさらに視界が悪化する。
それはルイーズでも十分わかるくらいに瘴気の力がとても大きいのではないかと考えていた。
そのなかで一番大きい面積を取っているであろう天蓋付きのベッドに起き上がっているルカ・アンドレア帝いや、レオ・アントニオ皇子は忌々しそうに四人を見つめているのがわかる。
周りに侍従や護衛もおらず、ほとんどが立ち入ることを許されていないようだった。
「イリヤ、しくじったのか」
「いいえ。あの子は生きております」
そう言ってイリヤ皇子を護るように見せながらアンナはそう伝えたのだ。
そのときにイリヤの存在を知ってからおそらく今までにない感情をあらわにしてイリヤ皇子に魔法を仕掛けて行こうとした。
しかし、彼自身にそれが発動させることができないように仕組まれていたようだった。
その姿を見て驚きを隠せずに慌てふためく姿を見てアンナは冷酷に彼のことを見つめている。
たった一人の叔父であるが、彼を敬愛するという感情は全くない。
愛する家族の死にきっかけになる人物であることをしっかり覚えていたのだ。
父を目の前で殺されかけているのが見ていたことがあって、幼いアンナは母のキアラ皇后の腕に抱かれて宮殿に出て行ったことを思い出していたのだ。
「あなたの魔法はほぼ無効になっています。黒魔法しか使えないならばなおさら」
「ふざけるな。浄化系の魔法を使ったのか」
「違いますわ。イリヤには浄化型の魔法の性質を持っております。あなたが破滅型の魔法を持っているだけです」
それを聞いたレオ・アントニオ皇子はアンナを侮蔑的なまなざしでこちらを見つめている。
それを幼い頃に同じようなことを感じているのが見えたのだった。
「あなたはわたしの父を殺めましたね」
「うるさい。あれがいれば、俺の覇道はこの世界を一つにして、我がものにしたい。その願望はできないのだ」
「それをあなたがイリヤに負わせた重責、この国を悪化させていく唯一無二の存在です」
「ガキの癖によく知っているな。そのことを」
「母から教わったのです。この国を父が政を治めていた時代へ戻すことを」
「貴様、俺の物を壊す気か! ようやくこの手で玉座につかんだ栄光だ! どのような手段を使っても、ここは譲らない」
そう大声で言うと彼は大きく咳き込んで血を吐きながら、彼女の魔法を取り出しているのが見えたりしている。
その姿を見たアレクサンダーはルイーズを遠ざけるように見えたりしている。
しかし、ルイーズも感じ取っているのか結界を張ろうと詠唱を諳んじているのが見える。
自らを守るには近い血縁を持っている者以外の瘴気は毒であることは常識だ。
そのためアレクサンダーとルイーズは先に結界を張り、息子であるイリヤと姪にあたるアンナは全く影響がないと考えているようだった。
「アレックス様たちはそのままでいてください」
「ああ」
そのなかで再び深く咳き込んだ彼はどす黒い血を吐きながらアンナの方を向いている。
まるで何かを考えているような姿を見つめている。
「ここでお前らには消えてもらう。貴様らなんぞ、この世には不必要だ」
そのなかでアンナは大きく深呼吸をして後ろに隠していた銃を取り出したのだ。
皇太子の証となる物は邪悪な牙をももぐと言われているのだ。
「そっくりそのままその言葉、叔父上に返しますよ。これ以上、帝国を悪しき国にはさせません」
「うるさい。お前だって愚兄の血を引くやつだな、撃て」
その言葉を聞いて彼女は青紫色の瞳を見開いて、彼を見つめていた。
「もう体も言うことを聞かない。神々からの天罰を一気に引き受けよう。貴様がその白銀の銃を撃つならば、己の体は半年かけて動かなくなるだろう」
「そうですか。これは約束させていただきます」
そのときにアンナはイリヤ皇子の肩を抱いて声を張り上げた。
「イリヤを筆頭にあなた方の子たちは罪のない子として保護します」
「そうか」
そう言いながらアンナは自らの瞳と同じ弾丸を弾倉に込めて引き金を引くための作業を行う。
次第にアンナは手の震えが起きていたが大きく息を吸う。
「この弾丸を入れたとき、破滅型魔法性質の血を引く者は母方の血を優先させます」
「そうだ。いいから早く。俺は地の国へ堕ちるのだから」
それを言い切るのとアンナが引き金を引いたのは同じだった。
ただその銃は弾丸は彼の体に瞬時に入ると、一瞬にして白銀の光に包まれているのが見えた。
それと同時にベッドにレオ・アントニオ皇子は眠るように横になり、意識がだんだんと遠のいていくような表情になっていた。
「急いで、医術師を呼びますか?」
「お願いします。弾丸の効力は医術師でもわかりません」
「アンナ、結界を」
「大丈夫ですよ。ここを浄化させてからですね」
そのまま浄化を行ってからルイーズとアレクサンダーはすぐに結界を解くことができた。
イリヤ皇子は医術師を呼んでからレオ・アントニオ皇子が倒れ、意識が失ったことを伝えて彼らの見立てによるとあと半年くらいの命だと教えてくれたのだ。
アンナはそれを聞いてすぐに離宮へ戻るために走り出すことにしたのだった。
「殿下方、ご無事ですか⁉」
「ええ、離宮に行きましょう。転移装置を用意してください」
「はい。わかりました」
それを聞いてイリヤ皇子はアンナの方を見つめていた。
「姉上、これから僕ら兄妹は無事に保護されるのでしょうか。レオ・アントニオ皇子、父が行ったことは重罪であることを知っています。連座で処分を行うならば覚悟しておりますから」
「そんなことはしない。あなた方の母君も何の罪もない女性、それと同じよ」
「はい」
そう言ってすぐにイリヤ皇子はホッとして彼は涙をこぼした。
「ありがとうございます。姉上」
「いいの。妹と弟たちに会いに行きましょう」
転移装置の前に立つと北部にある離宮へと移動する準備はできていた。
その扉を開いたときにはもう四人の姿はもう離宮へと向かっていた。
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