小国と巨大帝国
須川 庚
プロローグ
エリン王国に待望の男児が誕生したのは山々の樹々が色づいてきた頃。
黒髪に
その後、生まれたばかりの彼に占星術師が将来について占ったのだ。
「この王子は国王、魔法使いとして国を
その言葉に国王夫妻は
しかし、その次に占いをしていた占星術師が顔を曇らせ、国王夫妻にこう付け加えたのだ。
「殿下には死神の影が見えます。このままでは成人を迎えずにこの世を去ってしまうでしょう」
それを聞いたとき、王妃は生まれたばかりの息子を抱きしめていた。
彼の兄と姉は二人とも五歳になるまでに病気で亡くなってしまっているからだ。
そのような悲劇を繰り返したくないという気持ちが占星術師に伝わったのか、一つ両親に助言をした。
「十八歳まで女性の服を身に付けてください。そうすれば死神も気づくことはないでしょう」
「そうか。それは
「私の言葉を信じてください。必ず殿下は十八歳まで生きれます」
そして、彼は国王夫妻に再びこう話した。
「隣の国から王位継承者がやってきて、国を一つにするでしょう」
その言葉が真実になるのは十六年の月日が経ってからのことだった。
それから一年後、隣国のジュネット王国では一人の王女が生まれた。
金髪の巻き髪、大きな青い瞳をしている美しい姫君は、ルイーズ・クララ・ジュネットと名づけられた。
その後、彼女は剣術と魔法に長けるような少女に成長して行った。
しかし、十五歳になったときに彼女は西の大国ローマン帝国から逃げるように姿を消した。
その年の冬、エリン王国のアレクサンダー王子の護衛騎士が任命された。
この出来事は歴史を動かすことをこの世に生を受ける者は知らなかった。
『エリン=ジュネット王国建国記 序章より』
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