液体になった猫「アンナ」
身体が柔軟で「頭が通れば身体も通り抜けられる」といわれる猫さん。
巷ではよく「猫は液体」ともいわれますね。
僕も猫が液体に見えたことがあります。
あれは2017年の終わりごろ。
TNRのため捕まえた1匹の猫さんがいました。
当時の僕は某リゾートホテルのリネン担当をしておりまして。
ホテル内の猫を捕まえて避妊去勢手術をしていたのです。
捕獲はその頃ハウスキーパーをしていた女性が担当してくれました。
「捕まえたよ~」
って、その人もまぁ凄い人でして。
なんと、猫の扱いは不慣れだというのに、素手で捕獲してくるんですよ。
ホテル敷地内の猫たちは従業員が複数餌やりしていたので、人懐っこかったのも良かったんでしょう。
そうして捕まった猫の中に、アンナというメス猫がおりました。
アンナは拙作【猫の惑星~この星の人類は滅亡しました~】に肉屋として登場する猫のモデルです。
この猫がとにかく身体能力が高かった。
「ごめん! 事務所内で逃げちゃった!」
アンナ捕獲後、一時預かりをするメンテスタッフが慌ててリネン室に内線をかけてきました。
ホテル内TNRは捕獲した後、僕が退勤時に自宅へ連れ帰って預かりをしていたのです。
捕まえた猫は退勤までメンテチームの事務所で預かってもらってました。
捕獲されたアンナはキャリーに入れられる際にスルリと抜け出して、事務所脱走してしまったそうです。
素手で掴まれ、抱っこで運ばれてくるぐらい人馴れしてるのに、キャリーに入れられるのは嫌だったらしい。
「すばしっこくて捕まらないよ~」
「じゃあ手伝いますよ」
アンナは事務所内を駆け回る、飛び回る。
捕獲してきたハウスキーパーの子は退勤後で不在。
代わりに僕がメンテ事務所に突入!
猫が棚の上に飛び乗ったところで僕が机の上に飛び乗り、首の後ろをワシ掴みで捕獲しました。
「フニャアッ! ギャオゥ!」
「こっ、怖ぇ!」
アンナ、すんごい声で叫ぶ。
ビビるメンテのオッサン。
僕はジタバタするアンナを無理やりキャリーに突っ込んで、しっかり扉を閉めました。
「はい、捕獲しました」
「よ、よく掴めるねぇ……俺はこんなの怖くて無理だ」
かなりの力技で捕獲したので、怯えたメンテのオッサンが物陰に隠れてしまいましたよ。
怖い人だと思われたかもしれない。
そうして捕まえたアンナを、自宅に連れ帰ってケージに入れた直後のこと。
今でも鮮明に覚えている【猫液状化】!
なんとアンナは、5センチにも満たないケージの格子の間に頭を突っ込み、ニュル~ッと外に出ちゃったんです。
「えぇっ?!」
僕はもうビックリしてフリーズしましたよ。
そのケージには前に仔猫が入っていましたが、外に出たことは無かったんです。
なのに、痩せてるとはいえ成猫のアンナが通り抜けるとは想定外でした。
なにあれ?!
お前、ネコじゃなくてタコだろ!
そんなトンデモ脱走スキルをもつアンナですが、その後捕獲機で捕まり、捕獲機ごと病院へ搬送して手術完了。
TNR後は僕の自宅の庭に居着いてしまったので、うちの御庭番猫となりました。
アンナは5年ほど御庭番を務めた後、フラリと行方をくらましてしまいました。
ホテル敷地内には戻ってきていないので、またどこか居心地のいいところへ引っ越したもようです。
キジ狩りが得意だったので、森の中で暮らしているのかもしれません。
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