第15話 悪役令嬢は華麗に乱入する?!
「何をしてますの?!」
凛とした、けれど怒気を孕んだような声が聞こえた後、ヴィオリーチェがスカートを翻しながら小走りに走ってくるのが見えた。
ヴィオリーチェは物凄い剣幕で、クラウスとジャンくん2人と、対面している私の間へと割り入るように飛び込んできた。
「騒がしいぞ。ヴィオリーチェ」
クラウスは、特に驚くような様子もなくやれやれ…と言った顔で彼女に対応する。
「わたくし、何をしているのかをお聞きしましたのよ?」
あの氷の王子相手に一歩も怯まないどころか、問いかける声に物凄い迫力が感じられた。私からは彼女の背中しか見えず、その表情は見えないが、どんな顔をしているのか…知るのが怖いくらいだった。
「ヴィオリーチェ!落ち着いてよ!俺たち、アルカの悩み事を聞いてただけなんだよ。それでアルカも話してるうちにちょっと感極まっちゃったと言うか…!」
クラウスとヴィオリーチェの間の空気に耐えられなくなったのか、慌ててジャンくんが割り込んだ。
「早とちりしてこちらに噛みつく前に、本人に確認したらどうだ?」
クラウスも相変わらず淡々とした調子で、ジャンくんの言葉にそう付け加えた。
「………え?…悩み事?」
ヴィオリーチェは驚いたような声を上げ、ゆっくりと私の方を振り返る。
私は、恥ずかしさと決まり悪さで逃げ出したい気持ちになってしまっていたけれど、逃げる訳にもいかないので、そのまま彼女の顔が私を見るのを眺めていた。
「…そ、そう…デス…」
私の引きつった笑顔を見て、ヴィオリーチェは一瞬目を見開いた後、急に肩の力が抜けたみたいにがっくりと肩を落として、大きくため息をついた。
「…………もう……心配させないで頂戴……!!!」
先ほどまでの気迫はどこへやら、私の知っている優しいヴィオリーチェの声と雰囲気に戻って、少し困ったような表情で私にそう唇を尖らせるヴィオリーチェ。
それを見た私の方が何だか急に安心してしまって、泣きそうになってしまう。
「私とジャンがよってたかってアルカシアを虐めているとでも思ったのだろう?」
「………だって、まるで泣いているように見えたのだもの!」
「その原因はお前にあるようだが?」
「……………どういうことですの?」
「アルカシアはお前に愛想を付かされたと――――」
「あー!あー!あー!!!!ちょ、クラウス先輩!!!!それは!それは!」
クラウスはだめだ!あまりにも赤裸々に物事を話し過ぎる!!!人の心がない!!!私は慌て過ぎて奇声を上げてでも彼のセリフの続きを掻き消そうとしたのだけど、それは無情にもヴィオリーチェ自身の手で防がれてしまう。
「アルカ、少しお黙りになって」
「もがっ…!?」
私の口を手で押さえて、ヴィオリーチェは再びクラウスの方へと向き直る。
「クラウス、それは本当ですの?」
「ちょうど今本人からその話をきいたところだ」
「…アルカ……貴女………………」
ヴィオリーチェは私の口を押えたまま、真剣な眼差しで私を見つめている。
多分、私の口を押えてることは忘れている…。
「とりあえず、その手を離してやったらどうだ?」
「あ」
この日初めて、私がクラウスに感謝した瞬間だった。
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