第10話 はさみ将棋

ルール

・盤面が5×5のはさみ将棋

・コマはそれぞれが3つずつ持つ。

・1つでもコマを取られると負け。

・勝者は賞金5000万円。敗者は死。

・持ち時間は1分、それ以降は1分ごとに1000万円の負債。

負債がある状態で死亡した場合は、近親者が代わりに債務者となる。


***


わしが、こんなゲームに参加することになったのは、多額の負債を抱えてしまったからじゃ。

元プロ棋士のわしは、数々のCMに呼ばれ、知育玩具を中心にプロモーションしておった。


でも、飲酒運転で捕まり、CM会社からイメージダウンの賠償金を請求されてしまったのじゃ。老い先短いわしに1億円など払えるわけがなかろう。


現役時代の貯蓄を使ってもあと5000万円は足りないわい。

なんとしても、子どもや孫にこれ以上迷惑をかけたくない。

自分でなんとかしたい。


と思っていたところに、このゲームの招待状とルールが届いたのじゃ。


***

黒ネクタイのスタッフが、説明をしている。

「・・・ということです。ルール説明は以上です。質問はございますか?トマト様」


トマト、というのは、わしのあだ名じゃ。

本名は、ミヒデヒ、78歳。


「うぬ。最初の3つのコマを置く場所は、決まっておるのじゃな」


「さようです」

スタッフは、淡々と答える。


「わかったわい。老い先短いんじゃ。はよ対局しようではないか」


「では、こちらに、対戦相手のシメジ様は、もうお待ちです」


***


簡素な机とイスに裸電球。


反対側に座っておる中年男性がシメジだ。


「では、トマト様も席におつきください」


席に着くと、シメジが口を開く。


「あれ?あんた、CMでよく見るミトマさんじゃないか?最近CMでみないなと思ってたら、Mahoo!ニュースで、言ってたことは本当だったんだな。飲酒運転でCM下ろされたって」


「おい、口を慎め。わしをだれだと…」


「シメジ様、ここでは、この方をトマト様とお呼びください」


いつの間にか、机の横に座っていたスタッフが、トマトの言葉遮って、シメジに注意する。


「ふん、どうせ、老い先短いんだろ。ここは俺に勝ちを譲ってくれよ」


「断る。わしだって、生きて孫に会いたいわい」


2人がにらみ合っている中、スタッフが説明する。


「では、盤面をご覧ください」


――――――――― 

▼ □ ▼ □ ▼

□ □ □ □ □

□ □ □ □ □

□ □ □ □ □

△ □ △ □ △

―――――――――


後攻▼シメジ

先攻△トマト



「この盤面でスタートをします。先攻は、トマト様どうぞ」



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