音楽ランキング SSランク編 たま

たま SSランク


死ぬまでに聴かないと損する度 100 SSランク


【解説】

久しぶりの音楽ランキング、SSランク編である。


突然ですが、『たま』って知ってますか?


SSランクの評価を与えるミュージシャンはひとまずピロウズまでで良いかと思っていたのだが(本来サカナクションの次はSランクのミュージシャンを書くはずだった)、この『たま』というバンドは、そんな筆者の思惑をいとも簡単に吹き飛ばしてくれた。


ちなみに、『たま』というバンド名の前に『金』の字を付けると、非常に危険で悲惨なことになるため、以前からオプションで金でも付けようかと画策されていた方は、是非とも契約前に注意して頂きたいと思う(是非とも、じゃねえよ。なんの話やねん。話が逸れるからあまり序盤からくだらないことを言うな)。(?)


普段音楽を聴いてショックを受けるということはあまりないのだが、たまの音楽を聴いて筆者はしばらくショックで開いた口が塞がらなかった。


なんなんだこれは。


これはヤバイ。


歌詞もメロディーも、ヤバイとしか言いようのない音楽。


そうして、これは死ぬまでに聴かないと損する度という観点で言えば、SSランク以外は考えられない。


ナンバガ、フィッシュマンズ、中島みゆき、フジファブリック、ピロウズ、この筆者が認める錚々たるメンツの中にあっても、けして見劣りしないどころか、ある面では圧倒する程の異彩を放っている。


このバンドには、間違いなくSSランクの価値がある。


たまという存在を初めて目撃した時のイカ天のスタジオは、ヤバイものを目撃した衝撃でしばらく凍りついていたのだが、本当に世界観から何から色々とヤバイので、キングを争っていた他のミュージシャンも茫然として、なんだよこれ……なんなのよこの音楽……この世界観……こんなヤバイ奴らに勝てる訳ねえだろ……という顔をしていた。確かに色々と良い意味でヤバイので、気持ちはものすごくわかる。


キングを争っていたマルコシアスバンプが、たまのあまりにもヤバすぎる世界観を前に、評価を聞くまでもなく自身の敗北を悟り思わず放ってしまったセリフ、「だってすごいんだもん」は、イカ天を象徴するあまりにも有名すぎるエピソードである。


筆者にただ一つだけ言えることは、たまに勝てるミュージシャンなど、たま以外には存在しえないということだ(とか言いながら、当時のたまとブランキーの対決は物凄く見てみたかったりする。果たしてどちらが勝つのだろうか?)。


そのあまりに独特すぎる世界観に負けないレベルで、歌詞もヤバイ。


次の歌詞は、筆者の好きな『きみしかいない』の歌詞の一文である。


『最終避難場所のともだちとキスをして』


最終避難場所……見るからにヤバすぎるワードである。


『きみのあたまは誰かのいたづらでもうこわれちゃってるから』


……ラブソングでこんな歌詞を書いた人を、他に知らない。


『ずぼんにしみついたさばの缶詰の匂いが大嫌いで』


筆者がこの曲の歌詞で一番驚愕したところはここである。


一体どこの世界に、バラードの歌詞に『しみついたさばの缶詰の匂い』をチョイスする人間がいるというのか。


こんな発想は筆者がSSランクの作詞家と認める佐藤伸治にも中島みゆきにも山中さわおにも出来ないことであり、知久の作詞家としてのあまりに非凡すぎる才能を感じる。


このアンバランスの上で成立するギリギリを狙うかのような(というかこれは天性のものであり、狙ってできることではない)、圧倒的すぎるワードセンス、評価としてSSランクは間違いない。


そうして、次の歌詞にはこう続くのである。


『みんなの待つ公園を爆破した』


なんでやねん!!


なんでさばの缶詰の匂いが嫌いだから公園を爆破することになんねん!!


明らかに間に何エピソードか足りないだろ!!


と、理性では思うのだが、何故かこの世界観ならしょうがないと、納得してしまう自分がいた。(?)


最後にこの曲は、怒涛の凄い歌詞の波状攻撃で幕を閉じる。


『誰もいないから きみしかいない』


『誰もいないから きみがこの世でいちばんぶす』


『誰もいないから しょうがないよ』


『誰もいないから ぼくらがいるのはずるいね』


……凄い。ほんとにすげぇよ……。こんな歌詞、他の誰にも書けない……。


バラードでぶすというワードが出ること自体がもう凄いし、他に誰もいないから、しょうがなくきみと一緒にいるんだよとでもいうようなニュアンスを匂わせてみたり、オチで二人とも死んでしまうのではないかと見る者に思わせてみたり、うん、確実にヤバイねこの歌詞(勿論いい意味で)!!


これは好いたはれたのサブい音楽が持て囃される日本では、逆に天才すぎて大衆にはウケないだろう(まあ本人達も良い音楽が出来ればそれでいいという感じで、売上など二の次だったのだろうが)。


ほんとに、その辺のクソシンガーの歌詞が凄いとか言ってる暇があったら、たまを聴いた方がよかですばい!!(?)


ちなみに、ヤバさでいえば同じたまの曲である『あたまのふくれたこどもたち』もタイトルからしてヤバイので、是非聴いてみて頂きたい。


さて、たまのヤバさについては大体こんなところだが、そのヤバさの度合いはある程度は伝わったことと思う。


では、ここで筆者とたまとの馴れ初め(?)をご紹介したいと思うが、筆者とたまとの初めての出会いは、筆者がまだ子供の頃(今も精神年齢は子供)(?)、テレビの音楽番組で観た『さよなら人類』の映像だった。


本ランキングに目を通されている多くの読者の方も恐らくそうかと思われるが、筆者はこのたまというバンドを、大変申し訳ないが単なる『さよなら人類の一発屋』と思ってしまっており、ただのイロモノコミックバンドと思い込んでしまっていたのだ(本当に申し訳ありませんでした。というか、テレビの映し方も悪い。毎回毎回たまを出す時は馬鹿の一つ覚えのように『さよなら人類』なのだから、まだ幼い子供がこのバンドはそれしかないんだと思い込んでしまっても不思議ではない)。


たまファンの方々のためにも声を大にして言っておきたいが、たまはけしてイロモノコミックバンドなどではなく、一人一人が極めて高い作詞作曲能力を持つプロ中のプロ、イカ天キングもけしてフロックではない、音楽の精鋭集団だったのである。


音楽に精通した読者の方には、『今頃たまの凄さに気付いたのかよ!!これじゃ、ランク野郎じゃなくて大バカ野郎だよ!!』と言われそうだが、正にその通り、大バカ野郎だよ~ん。(????)


いや、ふざけている場合ではない。(?)さよなら人類は確かに名曲だが、たまにはもっともっと名曲がたくさんあるのだ。


この『偏見』、『思い込み』というものは、その対象に正確な評価を下す際の、一番の敵となるもの。


例えば、名の売れていない人間と名の売れている人間では、同等のクオリティのものを発表したとしても、後者の方が高く評価されるのは世の常である(いや、下手するとクオリティが勝っていても、売れている人間の方が高く評価される)。


そういったクソほどくだらないゴミのような採点方式が、筆者は大嫌いなのだ。


誰が作ったとか名が売れているとか、そんなものは関係ない。


作品そのものの価値、それを周りの何者にも左右されず、ただ、あるがままに評価する。


そうしたら、たまがSSランクの評価になった。


ただそれだけのことだ。


正にたまはたまとしか言いようがなく、これだけバンドが乱立する昨今に於いても、未だに『たまのようなバンド』という形容をされるバンドが現れないことも、特筆すべきポイントと言えるだろう。


最後に、たまというバンドを一言で表現するには、この言葉以外考えられないことに、今更ながら気付いた。


『だってすごいんだもん』

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