第19話 スキルの使い方

 子供達からサプライズもあり、最高の休日を過ごした。


 次の日は、とてもいい目覚めだった。


 そこで俺が持つ聖痕〖食糧庫〗と〖素材庫〗を今一度確認する。中に入れられる数は、限界は存在せず無限に入れられる。さらに〖食糧庫〗には利点もあり、中に入れた『食糧』は全て時間が停止する。二週間前に入れた温かいお茶を取り出すと、さっき淹れたように温かいままだ。


 ここまではメリットばかりが目立っていたが、しっかりデメリットもあった。


 一番のデメリットは、〖食糧庫〗には『食糧』や『食べ物』しか入らないこと。 〖素材庫〗には文字通り『素材』以外は入らないことだ。


 つまり、服を買ったのはいいが、両方に入らないのだ。服も素材だとこじつけてみたけど、やっぱり入らなかった。


 そこで、試しに部屋にキャンプのテントだけを召喚して、中に入れて消してみると、ちゃんとテントの中に入れることができた。


 ただ、これだと出し入れが非常に不便なので、必要なものは持ち歩くことにする。


 そのためにみんなのリュックを購入した。


 ステータスのおかげなのか、三人の力は想像以上に強くて、自分の体よりも大きな石を軽々と持ち上げていたくらいだから、重さは気にしなくて問題なさそう。みんなのリュックにはそれぞれの替えの服を入れておいた。


「レイラ。魔物を狩るだけなら、外とダンジョンとどっちがいいんだ?」


「間違いなくダンジョンだよ。ダンジョンは魔素が集中してできた場所で、外は広くて魔素が一定場所に集まりにくいもの。中には魔素が集まる場所もいて、そこは『魔境』と呼ぶんだけど、あまり見かけないかな?」


「魔素が集まると強いだけじゃなくて魔物も多いんだっけ?」


「うん。そういう意味でもダンジョンは魔素が濃いから魔物がたくさん出現するの。先祖様の説だけど、一瞬で全て狩り尽くしたら、魔素が減り過ぎて魔物が再度現れるまで遅くなるかもみたいだよ? 検証はしていなかったみたい」


 レイラの先祖様は同じく魔王と見ていいかも知れない。となると、魔王様でも一掃は厳しいのか。それくらいダンジョンは広いということだな。覚えておこう。


「じゃあ、今日もダンジョンに向かうとするか」


「「「は~い!」」」


 宿屋で朝食を取ってからダンジョンに向かう。


 その時、誰かが俺達を見ている気配がした。周りを見回ったけど、人が多すぎてよくわからない。


「どうしたの?」


「いや……誰かに見られていた気がしてな。気のせいか」


 三人は首を傾げる。


「まあ、十分に気を付けて頑張ろう。さあ、行こうか」


 それからは地下ダンジョンに向かい、ブラックマウスが現れるゾーンを越えて、スケルトンが現れるゾーンに突入した。


 ここからガンガン倒しながら向かう。


 暫く狩りを続けていると、アレンが「なんか強くなった気がする!」と声を上げて、剣を抜いてじっと集中し始めた。


 アレンの周りに見えない突風が起きてアレンの服がパタパタと動き始める。


 少しずつアレンから感じられる気配が強くなり、目を開けたアレンの体からは今まで以上に強い気配を感じた。


「それは戦士系スキルの〖身体強化〗だと思う」


「ん……? 〖身体強化〗って使うのか?」


「えっ? スキルって使わずにどうやって使うの?」


 …………てっきり自動的に身体が強化されていると思ってた! てか女神様の説明だと【スキル】は発動するもので、【聖痕】は発現するものって聞いたけど……まさか、発動するというのを使う・・というのか……?


 アレンの体から発せられるそれは、強者そのものだ。


「五歳で〖身体強化〗……? おかしいわね……アレンってもしかして……」


 レイラが少しブツブツと何かを呟くが、小さくて聞き取れない。


 それはそうと、俺も使ってみることにした。


 アレンがやったように目を瞑って、体の奥にあるなにか・・・を呼び起こす。


 心臓が跳ねる音がより大きく聞こえ始め、不思議と体中を巡る血液の動きを感じる。


 胸の奥にある小さな光を呼び起こす。


「――――アラタァァァァッ!」


 レイラが呼ぶ大きな声に反応して目を覚ますと、俺の周りに凄まじい風が荒れ狂っていた。


 全身に力がみなぎっており、今でも飛び出したい衝動に駆られる。


「もう少し弱くして! 強すぎるわよ! すぐに倒れちゃう!」


「ん? 〖身体能力〗って強さが決められるのか?」


「そ、そうだと思うわ! 先祖様の記憶だと、垂れ流すのは逆効果だって! もっと集中して細く・・するの! アレンも!」


「う、うん!」


「わかった!」


 また集中する。荒れ狂う泉の波を落ち着かせて、泉に広がる波紋をより静かにさせる。


 ああ。こんな感じか。


「う、上手くできない……」


「アレン? そんなに急がなくていいのよ。アラタがおかしいだけだから。というか五歳でそれが使えるアレンも十分凄すぎるんだから、これから練習していこうね?」


「うん!」


 五歳児におかしいと言われた三十五歳の気持ちを述べよう。記憶の差があるから仕方ないけど。


「二人が使った〖身体強化〗は体内の魔素を全身に巡らせて、身体の能力を引き上げるスキルだからね。魔素が切れると倒れるから気を付けてちょうだい」


「お、おう」「う、うん!」


 取り敢えず、魔素量を確認するために〖身体能力〗をこのままにしてどれくらい持つか実験だ。


 また狩りを始めて、アレンが今までよりも速くなった動きでスケルトンを倒し続ける。


 何だか映画を倍速で見ている気分になる。


 でもそれ以上にアレンの動き一つ一つ理解できる現状・・・・・・・がより複雑な気分になる。


 数十分後、アレンは全身汗まみれになって、その場に倒れ込んだ。


「ふふっ。最初は倒れるくらい使い果たした方が覚えやすいっていうからね~」


「レイラ……意地悪だな。教えてあげたらいいのに」


「だって、アレンくんったら楽しそうにしてるんだもの。止めたら可哀想でしょう?」


「それもそうだ。じゃあ、次は俺が少し戦ってもいいか?」


「うん。シアちゃんと私はアレンくんを介護しているから。行ってらっしゃい」


 シアが結界を張っている間に、俺は全力疾走でスケルトンと戦ってみることにした。




 その結果、まさかスケルトンに触れただけで崩れ去るくらいの化け物ぶりを感じることができた。


 女神様が困らない程度に強くするってこういうことだったんだな…………。


 バカ女神様! 転生する前に〖身体能力〗は使って発動させる・・・・・・・・スキルだって教えやがれええええええ!

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