言われてみたいセリフを言われてみたい奴に言われたら 2人用台本

第1話 言われてみたいセリフを言われてみたい奴に言われたら

女：ねえ

男：なんだ

女：今暇？暇でしょ

男：決めつけんな

女：じゃあ暇じゃない？

男：…時間はある

女：言い方変えただけじゃない

男：なんか用か？

女：これ、遊びたいの

男：なんだこれ…「言われてみたいセリフ集」？

女：おねえが知り合い１００人に聞いて回って、言われてみたいセリフをまとめてみたんだって

男：知り合い１００人って…美紀こそ究極の暇人じゃねぇか。あいつ再来月受験だろ？追い込み時期になんてもん作ってんだよ

女：おねえ志望校オールＡ判定もらってるから

男：勝ち組かよ。油断してこけんなよって伝えといてくれ

女：オッケ。…でさ？これで遊ぼうよ。これお互いに読んで行って、相手をときめかせたほうが勝ちってルールで

男：ええ？こんな恥ずいの読めっての…？

女：いいじゃん、暇なの

男：暇つぶしに持って来るには疲労度がすごすぎだろ

女：負けた方はコンビニでアメリカンドッグ奢るってことで

男：それお前が食いたいだけじゃねえか。俺はフランクフルトの方が好きだ

女：じゃああんたが勝ったらそれ奢ったげるから、遊ぼ？

男：仕方ねぇなぁ…その言葉忘れんじゃねぇぞ？

女：ふふ。負けないわよ！…はい、こっちあんたの分。印刷しといたわ

男：準備万端かよ。…にしても、随分なげえな

女：１００人分載ってるからね

男：お前、これ一通り読んだの？

女：まさか！まだ数行しか目を通してないわよ

男：ふぅん…

女：じゃあ私から行くわよ

男：こいや

女：「今日のデート、すごく楽しかった！裕也といると、時間があっという間に過ぎちゃって…悔しいくらい。もう少し、一緒にいたいのになぁ…あ、そうだ。回り道して帰っちゃダメ？あと１０分だけ、一緒にいて？…お願い」

女：……どう？キュンキュンした？

男：…ぜーんぜん

女：えええ？これよくない？私は言われたいんだけどなぁ

男：というか、お前勝手に人の名前使うなよ

女：だって○○って書いてあるんだもん。これ相手の名前入れろってことでしょ

男：そりゃそうだけど…（ボソッと）いきなり呼ぶなよな…ビビるじゃねぇか

女：何ごちゃごちゃ言ってんの。次、あんたの番よ

男：わーったよ！…んじゃ、心して聞けよ

女：あいよ！

男：「俺…お前のこと、ずっと見てた。小さい頃からずっと…お前が他の奴のこと好きなのは知ってるけど、諦められねぇんだよ…いい加減俺のこと見ろよ。見てくれよ。お前が…お前が好きなんだよ！なぁ、俺にしろよ…大事にするって誓うから…里美」

女：ほーん…？

男：あんだよその反応

女：いやぁ…あんた演技なんてできたのね。紙ペラ見ずにガン見してくるし…あんた、この短時間で文章覚えたの？記憶力良すぎじゃない？

男：そーか？

女：それに…私の名前入れるし…

男：お前が言ったんじゃん

女：そうだけど

男：ときめいた？

女：まだまだ！

男：あっそ

女：次、私よ！耳かっぽじってよーく聞きなさい

男：へーへー

女：「おかえりなさーい！疲れたでしょう？ごはんにする？お風呂にする？……あれ、なんか物足りない顔してる？ふふっ…安心して？ぜーんぶ済ませたらお布団いこ？一緒にぬくぬくしよ」

男：美紀のやつ、一体誰にアンケート取ったんだ…？これ、高校生の妄想なんか？

女：手当たり次第声掛けて集めたんだって

男：それでＡ判定……呪うぞ

女：人の姉を呪わないでよ。それより、どう？ときめいた？

男：…全く

女：ええ～？やっぱ尻の青いガキにはこのシチュエーションは理解できないか

男：お前俺と同学年じゃねぇか

女：さ、次あんたの番よ

男：ったく…「里美の周り全員が敵に回っても、俺だけはお前の味方だ。…なんて、言葉にすると安っぽいな。でも、本気でそう思ってる。だから…あいつじゃなくて、俺を選べよ」

女：…名前呼ばれるのって、恥ずかしいわね

男：ときめいたか？

女：トキメキって言うか…照れがすごい。ねえこのゲーム、脇汗やばいんだけど！？

男：脇汗とか言うなよ、仮にも男の前で

女：あんた相手ならいいでしょ？

男：…そーかよ

女：ん？なんか怒った？

男：怒ってねぇよ

女：怒ってるよ

男：怒ってねぇよ！

女：怒ってるじゃん！

男：うるせぇ黙れお前の番だぞ

女：まだゲーム続行すんの！？

男：今辞めたらお前の奢（おご）り決定だからな

女：はぁ！？…いいわよ、やってやろうじゃない

男：おうよ、こいやっ！

女：「はいこれ、バレンタイン。あ、勘違いしないでよ？あんたのために作ったわけじゃ…ああ…うん、嘘。勘違いしていい。っていうか合ってる。…あんたのために作った。だから受け取りなさいよ」

男：（ボソッと）ここでかよ…

女：ん？なにが？

男：なんでもねぇ

女：ひょっとして刺さったの？刺さったの？そうかぁ～裕也はツンデレちゃんがお好みかぁ～

男：刺さってねえよバカ！

女：何ムキになってんのよ

男：なってねぇよ…

女：ふぅん…？でも、このセリフを言われたいっておねえに回答した人、誰なんだろう？どんなテンションで回答したんだろう

男：探るなよ、バレンタインは男の夢なんだから

女：あんたもそうなの？

男：俺はほら、貰いすぎて毎年困ってるから

女：へぇ？それは初耳。じゃあ毎年私が渡さなくてもいいんじゃない？

男：お前のは…兄貴のついでだろ。いっつもいびつな方ばっか寄こしやがって

女：うっさいわね！お腹に入れば一緒なの！

男：…次俺の番な。「……なあ、なんであいつなの？あいつのどこがいいの？昔っからあいつのことばっか追いかけて…馬鹿じゃねぇの？こんなに…こんなに近くでお前のこと想ってる俺に…なんで気づかねぇんだよ」

女：あんた、片思いネタ好きなの？

男：…いや。出来れば両想い希望

女：じゃあなんでそんなセリフばっか選ぶのよ

男：なんとなく？

女：それ、トキメキって言うか…なんかこう、胸がぎゅーってなるだけなんだけど

男：さいですか

女：あと、なんで紙見ないの？なんでセリフ一瞬で頭入るの？

男：俺国語得意だから

女：国語と短期記憶って関係あるっけ？

男：いいから、次。お前の番だ

女：ん～そうね…じゃあこれにしようかな。「…ねーえ？私のこと好き？どれくらい好き？…えー？それだけぇ？…私は、その百万倍あなたがだーいすき！」

男：っ……！

女：お！？これは刺さったのでは！？勝ち決定！？

男：まだだ…まだ俺は戦える……！

女：あんたプルプルしてるわよ。……まあ？結局のところシンプルなのが一番破壊力あるのよねぇ

男：ほー？

女：どんな言葉も「好き」には適わないってことかしら

男：なるほどな

女：刺さったみたいだし、あんたの負けってことでいい？

男：なら、これだけ聞け

女：ん？いいよ

男：「いっつも笑ってるとこが好き。泣いてる奴に寄り添えるとこが好き。新発売のコンビニアイス見っけたときの嬉しそうな顔が好き。クレーンゲームではしゃぐ姿が好き。好きだ。全部好きだ。お前が…里美が好きだ」

女：……！

男：……震えてんな

女：こ、れは…！

男：刺さってくれましたか

女：……参りました。フランクフルトはあなたのものです

男：やりぃ

女：すごいわ。具体的な列挙って強いわ

男：さいですか

女：っていうか一個一個めっちゃ刺さるんだけど。新発売のコンビニアイスってやっぱ激熱なんだね

男：（ため息）

女：ねえ…そのセリフどこに載ってる？

男：え？

女：いや、文字でもう一度おかわり欲しくて

男：おかわりはいらないんじゃね？

女：えっとー…えっとー……あれ……ねぇ

男：ナンデスカ

女：セリフ、見当たらないんだけど

男：ソウデスカ

女：……なんで？

男：不思議デスネ

女：ねぇ

男：ナンデスカ

女：さっきのって…創作ですか

男：ドウデショウ

女：あんた…思い付きでよくあんな言葉出るわね

男：……思い付きはない

女：え！？どゆこと！？

男：…俺はお前のそういうところは嫌いだ

女：なにが！？

男：…お前さ

女：なによ

男：今年も兄貴にチョコ渡すのか

女：…なによ突然

男：俺いい加減…失敗作ばっかじゃなくてちゃんとしたやつ食いたいんだけど

女：べ、つに…多少形が悪いだけで味は変わらないんだから一緒じゃない

男：一緒じゃない

女：なによ…あんたバレンタインはチョコ貰いすぎるんでしょ？いいじゃない、一個くらい形の崩れた手作りが混じってたって

男：嫌だ

女：だからなんでよ！

男：その一個が…その一個だけが欲しいからだよ

女：え…

男：勘違いさせろよ…俺の為に作れよ

女：それ…さっきのセリフ…………え？…ええ？

男：美紀の知り合い１００人に幼馴染が含まれてねぇと思う？

女：まさか…あれリクエストしたのあんた？

男：こんな形でまとめられるなんて思わなかったけどな。…言われたいセリフを言われたい奴に読まれた

女：それって…

男：好きだ

女：なっ…

男：お前が好きだ。……シンプルが一番強ぇんだろ。刺されよ

女：あんたが…私を？

男：好きだ。兄貴ばっか見てんじゃねえよ

女：セリフ集の延長？

男：だと思うか？

女：………

男：お前のリクエストしたセリフってどれ

女：え

男：刺しに行きたいから教えろ

女：い、嫌よ…

男：じゃあ１００個全部言うから心して聞け

女：な！

男：一個でも刺さったら付き合うって言うゲームしねぇ？

女：賭けの対象がデカい！

男：んじゃデート。ときめいたらデート

女：そんなん……卑怯じゃん

男：ときめかなければお前の勝ち。…頼むから負けてくれ

女：裕也……

男：んじゃ上から順に読んでくぞー！えっとー？

女：わ、ちょ、ストップ！待ったタンマ！

男：タンマなし

女：負けるから！私の負けでいいから止まって！

男：今週の土曜日、暇？

女：…時間はある

男：上等。隣町のゲーセン行こうぜ。あそこクレーンゲーム取りやすいんだってよ

女：勝負する？

男：お前勝負好きな。いいけど、お前にいいとこ見せるために結構練習したから俺強いぜ？

女：っ…あんた…やっぱ卑怯！！