第2話 宇宙人君のオカルティックジャーニー

その1週間後の正午、前澤はアパートの面々ともだんだんと打ち解け、近くの公園に花見に来ていた。コロナがある程度収まり、その反動もあってか公園は人でごった返し、人々はお互いにせせこましさを感じているようだった。


アパートの面々を紹介すると、アパートの一階で開業している初老のオカルトグッズの骨董品店の店主は山田辰夫さんといった。


自称キャラクターデザイナーのメガネでボブヘアーの女性は田中ミキさん。


ドラムスを叩いていたじいさんは影山カゲロウさん。


「なぁ前澤君、ナミビアで取れた隕石のかけらがあるんだけど買わないかい?」


「いやぁ、大丈夫ですものが多くて置く場所がなくて…。」


「前澤くん、オリキャラのグッズの売れ残り買い取ってくれない?缶バッジとか。安くしとくわよ。」


「いやぁ、今月カツカツで…」


じいさんはへたくそなアコギを弾いて周りの花見客から嫌われている。


少し恥ずかしかった。


宇宙人くんはマッコリを一人でガブガブ飲んでキムチをつまんでいる。


「すごい飲むね。」


「こんなもん水と一緒ですよ!いくら飲んでも酔えやしません。味が好きなんです。別にアルコールなんかなくとも僕は自分に酔えますから!酒がないと酔えないやつはつまらん奴です。」


でもベロンベロンにしか見えない。 


田中さんが宇宙人くんに話しかける。


「ところで宇宙人くんは小説の進捗はどうなってるの?」


「ある旅館に取材に行こうと思っています!UFOが目撃された場所がすぐ近くにあって、ネタの一つにしようかなと。知り合いの怪談師がUFOを目撃したらしいので。」


「内容はホラー?オカルト?」


「SFです……よかったら前澤さんも行きませんか?」


「え?俺?」


「旅館が二人部屋しかなくて、ワリカンでどうです?なんかその旅館幽霊も出るらしいし、歴史もあるし、漫画のネタ探しになるかも!」


「あんたが寂しいだけでしょ(笑)」


宇宙人くんというのは彼のアパートでのあだなで、ぱっつんの前髪に、毎回全身一色にまとめたファッションで、(日によって色が変わる)自分のことを宇宙からやってきた異星人、伝導者だと宣い、(自分が宇宙人だと本当に信じている。)なんだかよく分からない説教をしてくることから名付けられたらしい。本名は絶対に教えてくれない。ダサいから嫌いなんだそうだ。ちなみにいくつか世に出た作品はあるらしいが、売れない小説家をやっている。


前澤は面白そうなのでついていくことにした。当日、二人で最寄りの駅で電車を待つ。


「目的地はいわゆる限界集落というやつで住人は老人がほとんどです。なんかアニメの聖地になったり、温泉が出るので観光地化しようと頑張ってるらしいですけど、厳しいみたいですね。」


「よくある感じだなぁ。」


「今回行く宿は600年くらいの歴史があって、今年取り壊されちゃうらしく、結構部屋取るの大変だったんですよ。今年はUFOが目撃されるし、幽霊も出るし、オカルトファンとかも駆けつけてるらしいです。」


「面白いね。」


「ちなみになんか僕らさっきからつけられてるっぽいですよ。」


「えぇ!?」


「そっと後ろを向いてください、キヨスクの横にサングラスかけた二人組がいますから。」


サッと後ろを向くと、サングラスをかけた二人組の女性がキヨスクの後ろに立ってこちらを見ていた。お揃いのベージュ色のコートを着ていて、大きなアタッシュケースを持っている。彼女らがこっちの目線に気づいてキヨスクの向こう側に隠れた。


「メン・イン・ブラックじゃないですかね、あれは。」


「メン・イン・ブラックって何?」


「世間から宇宙人の存在を隠そうとする組織の名前です。」


「えぇ…。」


「僕が異星人だということがバレたみたいですね。この前アパートの前にも張ってたし。」


「そうなの!?」


「でもメン・イン・ブラックがついて来ようと僕がやるべきことは変わりません。僕は100%自分自身でいるだけです。前澤さんだってそうでしょう?」


「うーん…。」


その時宇宙人くんのリュックの後ろから顔面蒼白のオッサンの顔がにょきっと生えた。


「怖いな〜怖いな〜。」


「わぁっ!?」


「あっ井藤さんじゃないすか!!」


「いや〜どーもどーも怪談師の井藤です。」


彼が前澤に手を差し出してきた。前澤は握手した。


「彼は前澤さん。僕と同じアパートに住んでる漫画家志望さんです。」


「どうもはじめまして前澤です。」


井藤さんははんてんを着て、サファリ帽を冠り、白髪混じりで、笑い皺が特徴的で、年齢は50代くらいに見える。あの稲川淳二に似ていなくもない。だが宇宙人くんと同世代で30代らしく、驚いてしまった。苦労人なのだろうか。


「えっ30代なんですか!?」


「よく言われます。ふけ顔なんですよね。前澤さんは先輩ですね。」


「すみません、…いやぁそんなに気を使わないでくださいね…ははは。」


宇宙人くんが割り込んでくる。


「年齢なんて関係ないです。いつだってどれだけ突拍子もないことができるかのほうが人間として大事ですよ。」


「まぁでも気になっちゃうけどね、ははは…。」


その時、前澤は宇宙人くんの後ろから視線を感じた。髪の長い小学生くらいの女の子が一人でじっとこっちを見ている。彼女は男の子のような地味な服装をしている。


女の子はそのまま振り返り、雑踏の中に消えていった。


なんだろう、俺らになにか用があったのかな。


3人は特急列車に乗り、メン・イン・ブラックが同じ車両に居ないことを確認し、ボックス席に座り駅弁を食べて談笑していた。


「それでね、私は確かに見たんですよ、UFOを。」


「どんな形だったの?アダムスキー型?」


「そう、オレンジ色の斑点があって、多分それは窓なんだろうけど、中から宇宙人が手を振ってるのね!それで牧場から牛を捕まえようとしてるんですよ。」


「それで井藤さんはどうしたの?」


「急いで宿に逃げて帰りました。もうUFOはこりごりだと思って、布団に潜っていたんです。そしたら宿の入口にメン・イン・ブラックがやってきて…。」


前澤はまた視線を感じて振り返った。車両の前方の貫通扉の前にさっき見た髪の長い女の子が居た。


「ねぇ宇宙人くん、井藤さん」


「なんすか?」


「なんか車両の前の方でこっちを見てる女の子がいるんだけど、知り合いだったりする?」


前澤がもう一度振り返ると女の子は消えていた。


「誰もいないじゃないすか。」


「あれ??」


井藤さんが話し始める。


「前澤さん、もしかして、それはあなたにしか見えない座敷わらしかもしれませんよ。」


「座敷わらし??」


「座敷わらしってのは子供の姿をしてるんですけど、その人の家の守り神みたいなもんでね、その家の住人一人ひとりを監視してるんです。その人が独り立ちしても、付いてきて、ひとりひとりどんな徳を積んだか、悪行をしたか全部記録してるんです。」


「へぇ、そうんなんだ。」


「それである程度善行が貯まるとね、家が富んだり、その人に良いことがあったりするんですけどね、問題はある程度まで悪行が貯まった場合なんですよ。その場合はねその家にふさわしくないっていうことで、座敷わらしがその人の前に現れて、その人の魂を食べちゃうんですね。」


「えぇ、そうなの?」


「私魂を食べられちゃった人を取材したことありますよ。精神病院で、人間がもぬけの殻になっちゃって、その座敷わらしについての話しかしてくれないんです。」


前澤は冷や汗をかいていた。あの女の子が来ていたTシャツに見覚えがあったからである。


あれは小さい頃俺が実家で着ていたお気に入りのTシャツだ。真ん中に犬の絵がプリントされていて、それが飼っていた犬に似ていて父さんに頼んで買ってもらったんだ。そのうちなくしてしまったけれど。


そして彼はこれまでの人生の色々な悪行を思い出してしまう。


中学生の時に好きだった女の子の水着を盗んでそれを友達のせいにしたこと。


お金に困っていて、バイト先で後輩の女の子の連絡先を知りたがってた先輩にはした金で教えちゃったこと。彼女は後でストーカー被害に遭ったらしい。


そして何人か、人のいい友達や、人前でカッコつける友達の善意につけ込んでお金を借りてそのまま返さずにトンズラしたこと。


生きるためとはいえ、トンズラは良くない。父親にも座敷わらしにも顔向けできない。


前澤は尿意を催し席を立った。


「俺ちょっとトイレに行ってくるわ。宇宙人くん、俺が出てくるまでトイレの前に立っててくれない?」


「ええ〜?なんでです?」


「だって座敷わらしが魂を…。」


「ええ〜。子供じゃないんですから。なんかやましいことでもあるんすか?…はぁ、分かりましたよ、手がかかる先輩だなぁ。」


前澤はトイレの前に宇宙人くんがいることをなんども確認する。


「誰も入れるなよ!見張っててくれよ!」


「もう分かりましたよ。」


前澤は周りに気を配りながらトイレで用を足し、手を洗っていた。すると鏡の端っこにあの女の子がスッと写った。


「ひ…ひぃう、宇宙人…くん…!」


うまく声が出ない。


個室の中でその子の血走った目と目があった。


「黙れ…。」


「え…ええ…。」


「ちょうだあああい!!」


「ぎゃあああああああ!!」


ガチャ!「前澤さん!!」


そこからの記憶はあまり定かではない。


「あれ、父さん?」


彼は田舎の実家の庭先に居て、そこに父さんと飼ってた柴犬が居る。犬の名前はポチだったような気がする。


「ともちゃん、借りたお金はちゃんと返さなきゃだめだよ。」


「ワンワン!」


「ごめん父さん、ポチ、家の名を辱めるようなことをして、…でもしょうがなかったんだ給料日前だったし、貯金もないし、液タブも壊れてて…。」


「前澤さん!前澤さん!」


「はっ!?」


「大丈夫ですか!僕が誰だか分かります?」


前澤はボックス席に寝かされていて、宇宙人くんと井藤さんと車掌さんが目の前にいる。


「宇宙人くん…井藤さん…」


「よかった正気のままだ。」


「お金……返さなきゃ。」


どうやら座敷わらしは前澤を見逃してくれたようだった。


3人は宿の最寄りの駅に着き、井藤さんの案内でUFOを見たという場所へと歩いていた。その牧場はなだらかな丘の中腹にあり、丘の向こうからオレンジ色に発光するUFOが現れたのだという。牛が退屈そうに草を食んでいる。


「ここが牛がアブダクションされてたっていう…。」


「そうですね、ここの牧場ですね。」


「なんかミステリーサークルみたいのないのかな。」


「やっぱりメン・イン・ブラックがついてきてる。」


「え?」


後ろを見ると例のサングラスをかけた二人組がこちらを目指して歩いてくる。


「宿まで逃げましょう。」


その時空にオレンジ色の光が瞬いた。


「あれは!」


「UFOじゃない?」


牛がUFOを恐れてお互いにいななき始める。


井藤さんはスマホを取り出しパシャパシャ撮っている。


UFOが動き始めた。


「追いかけよう!」


3人がUFOを追いかけると、メン・イン・ブラックも足早についてきた。


UFOは道なりに宿の方へ向かって飛んでいった。3階建ての古風な宿の周りにはUFO目当ての宿泊客が集まっている。UFOやUMAが描かれたシャツを着てたり、なんだか元ネタの分からない宇宙人や怪物やアニメキャラのコスプレをしていたり、様々な格好をした人達がスマホ片手に写真を撮っている。


「ありゃあアダムスキー型だ。」


「本当だ、中になにかいるぞ。」


「すげえ、すげえ!」


前澤も写真を撮る。


宇宙人くんが話しかけてくる。


「あれドローンを改造した偽物だと思いますよ、下からプロペラが見えてるし、中の宇宙人も作り物っぽいし。」


「確かに言われてみれば…。」


「あっまたUFOだ。」


宇宙人くんはあさっての方向を見ている


何人かが宇宙人くんを訝しげに見る。


「何言ってるの?」


「僕は向こうのを追いかけます、向こうの方が本物だと思うので。」


「待って、そんなの見えないよ。」


「僕はどんなに不利でも、どんなに共感されなくとも、突撃します!それが僕のいいところですから!しばらくサヨナラです。」


宇宙人くんは誰も居ない方向へ走り出した。メン・イン・ブラックが宇宙人くんを追いかける。前澤はその後を追いかけたが、3人について行けず宇宙人くんを見失ってしまった。


「はぁはぁ…足遅いなあ俺、もう40だからなぁ。」


前澤は3泊の間、宿で宇宙人くんを待ったが、彼は帰ってこなかった。前澤は歴史を感じさせる、広い茶室のような2人部屋を一人で占拠していたので、ちょっと寂しかった。座敷わらしがまた現れるのではないかと思うと心細かった。夜になると井藤さんがお酒を持って部屋に遊びにきた。井藤さんは宇宙人くんが勝手にどこかに行ってしまったことに腹を立てていた。


「あの人時々こういうことがあるんですよ!自分本位っていうの?勝手なことばっかして、案内してくれって言ったのは宇宙人君なのに、心配かけて、迷惑かけてるって自覚はないんですかね!」


前澤は警察に連絡し、チェックアウトの時間になったので、あとは警察に任して、井藤さんと帰ることにした。


帰るときに宿の写真をパシャパシャ撮っていて、裏口をちらっと見たら、大きな倉庫があった。隙間からオレンジ色の光が漏れている。気になったので開けてみると中にはあのUFOがあった。ドローンを改造した物で、コントローラーもあった。倉庫には他にも、お神輿やお祭りで使うであろう屋台骨のようなものが乱雑に詰めてあって、多分これは町おこしの一環で作られたのだろうと思われた。


宿の中から、従業員の声が聞こえて来る。


「これで来年も廃業せずにやってけるかなぁ。」


「アニメファンにも来てほしいなぁ。」


「俺だめだったらもう東京行くよ。」


従業員が裏口から出てきそうなので二人はそそくさと逃げた。


「前澤さんごめんなさいヨタ話に付き合わせちゃって…UFOは本物だと思ってたんですけど、実はUFOが牛を捕まえてたというのは僕のホラ話です…盛ってました。」


「いいよ、虚実織り交ぜるってのは俺もよくやるから。」


二人は帰りの列車に乗り込んだ。列車に乗っている間、前澤は宇宙人くんが心配だった。もう数日宿に残っていればよかったかと思った。


「おい!」


前澤が振り向くと、あの髪の長い小学生くらいの女の子が後ろに立っていた。


「ひぃ!ざ…座敷わらし…。」


「え?……何言ってるんですか前澤さん、普通の女の子ですよ、僕にも見えてますから。」


「え?」


「アタシあんたのシャツの犬の絵がすごい好きなんだよ、だからそのシャツが欲しいんだ。」


女の子は前澤の着ているシャツを指差す。


「あっ!」


前澤が着ているシャツには犬の絵が描かれていた。彼自身がデザインしたシャツだった。


「あんたの描いた犬の絵が、アタシが飼っていた犬にそっくりなんだよ。その犬が去年死んでしまって、だからできたら譲ってくれないかな。」


「君が着てるその犬のシャツは…。」


「ん?古着屋で手に入れた。」


前澤は犬の絵なら今ここで描いてあげるよと言ったが、女の子はシャツをくれと言って譲らない。


「アタシはその絵の犬が好きなんだ。」


「でもこのシャツ汚いよ。」


「大丈夫洗うから。」


前澤はシャツを脱いで渡した。


「ありがとう、アタシはあんたの絵が大好きだ。トイレで驚かしてしまってごめんな、まさか倒れるとは思わなかったんだ。」


「あぁ…いいよいいよ勝手に勘違いして気絶してただけだから。」


彼女の母親が迎えに来た。


「あんた他人には敬語使いなさいって何回言ったら分かるの?!すみませんうちの子が迷惑かけて、お金払いますから!」


「いえいえいいんですよ、大したものじゃないのでおかまいなく。」


2人が別の車両に行ってしまったら、今度はあのサングラスをかけた二人組がやってきた。


井藤さんは「メン・イン・ブラックが来た!」と言って警戒している。


「あの〜小松右京さんのお知り合いですよね?」


片方の女性がサングラスを外した。


「!!…小松右京ってのは宇宙人くんのペンネームですよ。」


「私達小松右京さんの小説の大ファンでして、彼にサインもらいたいんです!」


「え…あ、そうなの…彼は今ちょっと別れちゃってて、別の場所にいるんですよ。」


「そうなんですか、私達、宿の近くであなたがたが一緒にいるところをお見かけしたので…残念です。」


2人は去っていった。おそろいのサングラスをしている友達?カップル?のようだった。


「メン・イン・ブラックなんかじゃなかったね。」


「ははは…オカルトなんて案外そんなものなのかもしれないですね。」


二人はアパートの最寄りの駅で分かれた。


「宇宙人くんが無事に帰ってきたら教えてください。」


「了解です。何日間かありがとうございました。お元気で。」


宇宙人くんがアパートに帰ってきたのはそれから50日後だった。


田中さんが共有スペースで宇宙人くんを見つけた。服はボロボロで、髭と髪が伸び、悪臭を放つ仙人のようだった。


「どうしたのあんたそんなボロボロになって!」


「旅先から歩いて帰って来たんです。」


「風呂入りな!」


前澤が帰ってきたのを聞きつけて、共用スペースに行くと、彼はそこに居た。


宇宙人くんはシャワーを浴びて、散髪して前髪をいつもの如くぱっつんにしてさっぱりしていた。


「前澤くんが来たよ。」


「宇宙人くん!」


「前澤さん!」


しばらく二人で再開を喜んだ。


「僕ねあの後、UFOを気付かれないように一人で追いかけて行ったんですよ。」


「どうして帰ってこなかったの?井藤さん怒ってたよ。」


「あのですね、そのUFOに逆に捕まっちゃったんですよ。」


「ええ!?」


「そこで身体をいじられてね、人体実験される寸前で、僕を追ってきたメン・イン・ブラックがUFOに侵入してきて、銃撃戦になっちゃって、その隙を縫って脱出したんですよ。」


「ええ!?」


「宇宙人くんらしいわね。」


「その後は奴らに見つからないように歩いて帰ってきました。でもどうやったら帰れるのか検討もつかなくて。前澤さんからメールが来て、すぐにバッテリーがなくなっちゃって返信できなかったんですど、また前澤さんやアパートのみんなに会いたいなと思って。そしたら、アパートに住んでる座敷わらしが僕の前に現れて、アパートまで案内してくれたんです。この広い宇宙の中でどこに行こうとも何をしようとも、そこから生きて帰るのが大事なんだって、僕の責任だって途中で気づいたんです。待ってくれてる人や僕の作品を読んでくれる人がいる限りは僕は絶対に帰ってきます。」


「そうなんだ。…色々大変だったんだね…。」


「また前澤さんに会えて嬉しいです。」


なんだか宇宙人くんの体験はにわかには信じられないけれど、だからといってそれを頭から否定してしまうことはできなかった。彼の目がとても真摯なのだ。


「僕は今回の旅を題材に作品にしたいと思ってます。」


「俺、宇宙人くんのそういういつでもどこでも本気なところ尊敬してるよ。」


人間はどれだけ個性的でも、生きていればどこかには行き着くし、何からでも学ぶことができる。それが大勢から見たら気が狂っているように見えたとしても。世界を共有できなくても、宇宙人くんの世界には彼なりの物語や教訓があるのだと彼は悟った。なんだか、宇宙人くんの書くであろう小説を読むのが楽しみになった。

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