弱肉強食
やざき わかば
弱肉強食
エサになりそうな子供を拾った。
すぐに食っちまおうかとも思ったが、これでは小さすぎて食いでがない。なので大きくなるまで育ててやろうと思う。人間で言うところの家畜ってやつだろうか。
俺は鬼である。森を散歩をしていたら、人間の子供が道端で眠っていたので、住処に連れてきた。なぜこいつがあんなところで寝ていたのかはわからないが、ゆっくり食ってやろうと思ったのだ。
しかし身体の大きい俺にとって、このエサはまだまだ小さい。
人間が何を食うかはわからないが、とりあえず果物や木の実、鹿や熊の肉を与えてみた。少量ながらも食っている。歯はちゃんとしているし、健康的にも申し分ないようだ。
せっかく育てるので、どうせなら健康的に成長させて美味しく食べたい。俺はエサの体調もキチンと管理した。病気にさせないように、弱らないように気を配った。
たまには散歩に連れていった。筋肉を付けさせることも大事だ。エサはとても楽しそうで、その感情も美味しさとなって現れるだろう。
だが、あまり野菜を食べないので、そこだけは苦労した。肉ばっかり食べさせては味や臭いが悪くなる。出来るだけ野菜を食べさせるようにした。言い含めて、なんとか野菜を多めに食べさせることに成功。今では野菜が大好物だ。
そんな生活をしばらく続け、エサもある程度大きくなった。まぁまだ小さいと言えば小さいが、贅沢も言ってられない。そろそろ食い時だろう。
「おい。今まで俺がお前を育ててきたのは、お前を大きくして食うためだ。今日この時を俺はずっと待っていたんだ。これから俺はお前を食う。悪く思うな」
「えっ、私を食べる? それ本気で言ってるの?」
「誰がこんなことを冗談で言うか。さぁ大人しく食われろ」
「そっか。これからはご飯を持ってきてくれないってことだね。しょうがないな」
突然、エサの頭部が開き、俺よりも大きい口が飛び出してきたと思うや、俺に向かって襲いかかってきた。こいつは人間ではなかったのだ。
「自分より身体が小さい相手は全て、捕食対象である。なんて思わないほうが良いよ…って、もう聞こえてないか。ごちそうさま」
弱肉強食 やざき わかば @wakaba_fight
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