初めての取材とか

結局試しもかねて、インタビューと歌関連の依頼を一つずつ受けた。


勿論歌関連に関してはCMとかではない。声と声量である程度ごり押しできるとはいえ、ド素人の歌がお茶の間に頻繁に流すのは申し訳なさすぎる。報酬は正直ものすごく心惹かれたが。


職員さんセレクトによりインタビューはEGF御用達の出版社、歌関連もEGF関連の情報をよく発信しているようは繋がりの太い番組である。ガチガチではあるけれど、その分安心はできるな。


ちなみに歌の方は生で歌うんじゃなくて、録音したデータを渡す感じなので俺が放送局にいく事はない。


というかド素人がいきなり本番一発でまともに歌えるわけがないんで。緊張やらなにやらで音程外すくらいならまだしも、下手すりゃ歌詞が頭から吹っ飛ぶ可能性もあるもんな。録音なら何回か歌ってその中で一番まともなの渡せるし。


なので歌の方は俺がやることは歌う事だけ。録音とかもEGFのスタッフがやってくれるので、外部の人間と接触する事はない。


なので、本来の時塚 静ではなくEGF所属の”サイレン"として外部の人間と接触するのはインタビューが初めてとなった。


そうそう、広報に顔を出すにあたり、俺の通称が決められた。本名で出る訳には当然いかないので。


名前の由来はウーウー鳴る方のサイレンではなく、ギリシャ神話の歌の魔物であるサイレン(セイレン)。いやそもそもウーウーなる方のサイレンの語源なんだけどさ。


自分の名前から浮かぶサイレスと掛け合わせてセイレンではなくサイレンの方にした。自分考案である。まぁSNSとかで使う仮の名前と同じだ。


その"サイレン"としての初インタビューだが、まぁ緊張したわ。


気を使ってくれたのかインタビュアーは温厚そうな雰囲気を纏う女性だったし、相手側の面子もその女性とカメラマンという最低限の人数でしかなかったんだけど、いかんせんこちらは過去にインタビュー等と一度も受けたこともない何の変哲もない一般人だった人間である、始めた直後なんて完全に表情筋が固まっていたらしくて、インタビュアーさんにフォローされてしまった。


尚インタビュー自体は恙なく終了した。


相手のインタビュアーさんの聞き方が上手かったのと、さすがにEGF御用達なだけあって俺のプライベートに繋がるような質問は全くなかったので。聞かれたのは適合者になった経緯や能力、これまでの戦闘の際の気持ちなどだ。


この辺りはNGな発言は後でEGFの方でチェックしてくれるということで、こちらは気にせずに回答する事ができた。


それに撮影の方も終了後にチェックさせてもらったんだけど、見事に顔は外して映してくれていた。変身後の姿でインタビューを受けていたんだけど、ドレス姿自体はすでに遠隔からの隠し撮りで発覚しているからあまり話題にならないかとおもったら、むしろ細かいデティールがわかるから滅茶苦茶話題になるといわれたよ。俺としてはそれならばと言われるままに撮影してもらった。現代日本にこんなドレス姿の人間なんてコスプレを除けばいやしないだろうから、ドレスに関してはどれだけとられても困らないし気にならないしな。


というわけで、撮影とインタビューを終え、ついでに別の日に歌の収録(以前現場で歌ったのと同じ曲だ)も終えて初めての俺のメディア対応は終了した。


それから一週間程は、特に何もなかった。異星人の襲撃もなかったしな。


そして一週間後、俺の記事が掲載された雑誌が発売された、らしい。


らしい、っていうのはその日俺殆ど出なかったからだ。ちなみに意図的である。


普通こういう初めて雑誌に載ったりした人間は反応が気になって書店に確認しにいったりするんだろうが、俺の場合はそれをやると自殺行為である。


前日にEGF経由で見本誌?が送られて来たんだけど、さすがに表紙ではなかったとはいえ(顔が映っていない写真が表紙とかアレすぎる)思いっきりカラーページで写真使われてるからね(聞いてはいたけど)。顔は写ってないけど背中の髪は写ってるし、日本じゃそれほどみないプラチナブロンドの女が、同じ髪色の女が写っている雑誌の側にいたら間違いなく疑われるだろう。


というか、雑誌は水曜日発売なんだけど、さすがに発売直後は髪の色で人目を引くかなと思って今週いっぱいは在宅にしてもらった。先に話を通して置いてよかったぜ。ありがとうテレワーク。


あと示し合わせたかわからんけど、ラジオで俺の歌が公開されるのも同日に発表されたらしい。正直自分の歌声をラジオ越しに聞くとか何の罰ゲームかと思うし。


俺が有名になりたいとかで取材を受けたのなら別だけど、今回の取材は情報に対するガス抜きとぶっちゃけ金の為に受けただけなので。


なので、雑誌発売後数日間は引きこもりだ。食料とかも買い込んであるし、しばらくなら引きこもりも余裕である。


いやー、人の視線が集まらない生活っていいね。


こっちの姿になってから俺の正体を知っている会社は当然として、通勤途中や近所の買い出しでも外見の銀髪の上外見スペックがクソ高いせいでほぼほぼ視線を貰ってたからな。


ぶっちゃけ以前の生活が陰の者だったというわけではないけれど、そこまで視線を貰うような人生送ってきてないからな。身バレの心配もあり、やはり注目されている生活は落ち着かない。


今後は会社に行く日もあるもののテレワークの割合が増えるから、そういった視線に悩まされるのも少なくなりそうだ。そのかわりめっちゃインドア人間になってしまいそうだけど。


運動不足はEGFでのトレーニングである程度解消できるとして、自宅でもやれる趣味を増やそうかなぁ……現状も外出で遊びに行くなんてほとんどしてないから、割と自宅にいる時は暇を持て余している節があるし。


──仕方ない事だし自分に原因があることとはいえ本当に俺の生活大幅に変わっちゃったなぁ。そもそも性別も変わってるから日用品とかですら変わってきてるし。自分が生理用品とか使うようになるとは思ってもいなかったし。というか女性に変わったとはいえ異星人の謎パワーによるものだからそういったものはないとある種期待したんだけど、残念ながらそういうことはなかったよ……普通に体調も悪くなったしさぁ。


……ようするに今俺の体は子供を産める体になっているというわけだ。ちゃんとそういった女性だけにしかない器官もあるらしい。正直本当にまじかーと思う。


ま、とはいえいつ元に戻るかもわからない体だしな、そんな事を気にしてもしょうがないだろう。


ちょっと話が脱線したが、そんな感じでまあ。テレワークで仕事をしつつ引きこもり生活を満喫しながら週末を過ごし。


週が明けた月曜日、ネットの過熱具合が更に凄い事になっていると会社の同僚に教えられるのだった。


いやまぁこれまでの流れからそれは予想してたけどね。当然チェックなんかしませんよ、大体何が掛かれているかは予測がつくので。


あの情報から俺という人間が浮かび上がってくる事はないので、皆は妄想を含ませてくれているようだ。結構な事である。そのまま俺の実像からかけ離れたイメージを作ってくれると幸いだ。……EGFの方に頼んでそっち方面にイメージが流れるようにサクラ仕込んだりできないかな?






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