第11話 非情な決断

 その直後だった。


 恐るべき速さで飛来した剣が、レギアの脇腹を抉った。続けて2本目が背中に突き刺さり、鳩尾まで貫通する。


 なんらかのスキルで強化されているのだろう。放ったのが誰かまでは見えない。


 レギアは地面に倒れこむ。


 まずい。


 このままでは、【天の滝】に来ていたメンバーは全滅だ。


 転移魔術は間に合わない。どうする?


 どうやって逃げきる?


「パルマコン様、私の死体をお使いください。あなたのスキルで燃やし、教会に引き渡せば、引き続き教会に潜伏し続けられる」


 レギアはとんでもない申し出をして来た。


 だが、このうえなく合理的。それ以上の案は思い付かない。


「申し訳ない、レギア。俺が不甲斐ないせいで、お前たちの命を徒に消費してしまった」


「何を仰います……教会打倒の礎となれるのなら、それは尊い犠牲! 消費されたなどとは思いません!」


 俺は仮面を剥ぎ取り、法衣を纏った。


「すまない……本当にすまない……」


「どのみち……助からない命です。有効に使ってください……」


 レギアの息が徐々に弱くなっていく。


 追っ手はもうすぐ来るし、カサンドラと正面から戦って勝てる見込みはない。


 俺は覚悟を決め、スキル【神の衣】を発動した。蒼炎がレギアの身体を焼いていく。


 俺は思わず、目を背けた。


「どうしてあなたがここに? ゼスト・ダンヴェールどの?」


 追い付いてきたカサンドラが問いかけてくる。


「カサンドラどのか。ちょうど異端どもの襲撃の噂を聞いたのでな。レッドフォード女史とここに向かったまでだ。たった今、異端の男を一人始末したところだ」


 俺は平静を装い、炭化したレギアの身体を見下ろす。


 我ながらむごいことをしたものだ。


 だが、だからこそ、この死は無駄にできない。

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