第7話 神の衣
「教会の狗めが。お早い到着だな」
レイカは相手を煽るようなことを平気で言った。今のエレノアに、挑発はマズい。
かといって、声を出せば身元が割れるので、俺はレイカを手で制した。
【主の御霊から離れて、どこへ行けよう。主の御前を離れて、どこへ逃れ得よう。天上にも、冥界にも主はおられる。汝が暁の翼を駆って、海の果てに住んでも、主の御手が汝を裁くであろう】
エレノアは何も答えず、ただ聖句の詠唱のみを繰り返す。
不気味だ。何をする気だ? 異端と交わす言葉などないということなのか?
「参る」
エレノアはそうとだけ口にし、目にも留まらぬ速さで抜剣した。
俺はすかさず風魔法で迎撃しようとするが、避けられた。そしてそのまま、レイカのもとへと突進していく。
「がはっ、」
振り返ると、レイカが首筋を斬られていた。
マズい。これは致命傷になりうる。早く倒して治療せねば。
俺は土魔法で剣を作り出し、エレノアと斬り結んだ。幼女とは思えないほどの膂力で押し返される。
俺もそれなりに鍛えていたとはいえ、【剣姫】相手に斬り合えば、何分持つか分からない。スキルを使うか。
俺は魔術師でもあると同時に、教会の司教でもある。教会で昇進するには、生まれつきの強力なスキルが不可欠。
つまり、俺は魔術とスキルの両方を使いこなせる。
俺はエレノアに接近し、スキルを発動させる。
俺のスキルは【神の衣】。敵と認識した者が一定の距離に近づいた際、焼き殺すことができる。
教会内部でもこのスキルについて知る者はごくわずか。使ってもいいだろう。
何より、ここでエレノアを殺してしまえば情報は洩れない。
「あぁぁあああ!」
エレノアの全身は蒼炎に包まれ、剣の刀身も熱で赤く変色する。エレノアは絶叫しながら、【天の滝】の滝壺へと落ちていった。
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