第5話 第二のテロ
「近衛騎士団長に近い人間を洗うつもりか?」
「えぇ。そのつもりです。私たちが姿を見せれば、下手人どもも何か動きを見せるはず。そこを押さえて戦闘に持ち込みます」
戦闘前提なのか。荒事は面倒なんだがな。
だが、アルド帝国に同胞はいない。捜査しても何も見つからないはずだ。適当に付き合ってやろう。
俺たちは遠くに見える市街地に向かって、ゆっくり歩き始めた。畦道に差し掛かったところで、早速盗賊らしき男たちに囲まれた。鉈や棍棒で武装した大男が4人。意外と治安悪いんだな。
「聖職者様か。たっぷり金持ってるんだろ? ちょっと分けてくれよ」
そんなアホなことを尋ねてきた。
「俺も彼女も高位のスキル持ちだ。痛い目に遭いたくなければとっとと去れ」
俺は一応忠告しておく。
「知ってるぜ? 聖職者様は異端でもない一般人を傷つけられないんだってな。当然だよなぁ。同じく神を崇めるか弱き信徒に手を出すなんて、あり得ないよな?」
確かに。教会の法典では暴力は明確に禁じられている。異端を狩る場合を除いて。
「確かに陽光教では暴力は禁じられている。だから、お前たちが力に訴えるなら、即座に教義を守らぬ異端と見なし、取り締まる」
エレノアは容赦ない言葉を浴びせた。
「へっ、嬢ちゃん。本当に聖職者なのか? それともごっこ遊びか?」
まぁ確かに。こんな10歳くらいの幼女が法衣を着ていても、そうとしか見えないよな。
「相手にするな。行くぞ」
俺は先を急ごうとする。
「ちょっと待てよ!」
男の一人が俺に掴みかかってきた。と同時に、懐に何か入れられた。
俺は男の襟をつかみ、首筋に手を当てる。
魔力の流れを感じた。
こいつ、盗賊のふりをした同胞か。
エレノアに気付かれたらまずいな。
「貴様っ!」
エレノアは剣を鞘に納めたまま男を打ち据えようとするが、俺が制止した。
「問題ない。こいつ、酔っているだけのようだ」
「しかし!」
「俺がいいと言っているんだ。行くぞ」
俺はエレノアを引っ張り、先を急いだ。
その隙に懐に入れられた紙片を確認する。
【明朝。天の滝にてレイカ様が教会支部を襲撃予定】
そう書いてあった。
前々から出ていた話ではあったが、遂に決行するのか。成功すれば、シグニフィカティウムに続いて、天の滝でもテロが起こる。三大聖地のうち2つを襲ったことになる。大きな前進だろう。教会を恐怖に叩き落す好機だ。
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