【正統続編】【異世界百合】 アサシン・アジテート 追憶
クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ
第1話 戦争の終結
私は、宿敵テウフェルとの闘いの果てに勝利した。ラータ君、イリーベちゃん、レゼ子が犠牲になってしまったけど、私たちは進んでいくのだ。
「ねえ、すぐにエンヴェルクに戻った方がいいんじゃない?アイツに惑わされてどこかの国の軍が攻め込んできてるかもしれないですし」
「え?でも、まだその身体には慣れてないんじゃない?違和感とかはないの?」
「特に違和感みたいなものはないです。それに、前まで使えなかった空間移動が使えるようになっているので早くそれを試したいというか…」
「よし、だったら早く帰ろうか」
そう、今のユウナはレゼ子が生命力を注いで作ってくれた身体なのである。私と同じ作りの身体なのである。つまり、私とユウナは血縁も同然…。
「何をぼぅっとしてるんですか?もう魔法陣の展開が終わりますよ?」
「あ、うん」
「準備はいいですね?【空間転移】」
私たちの目の前は淡い紫色の光に包まれていく。ここからが新しいスタートだ。
*
気が付くと、目の前にはエンヴェルクの周りを囲んでいる壁がそびえ立っていた。
音を聞くに、普段の生活が特に変わらない様子で営まれているようだった。
「よかった…。どこの国も馬鹿じゃないから攻め込んでこなかったか」
「それよりシエラ、もう家はすぐどこですよ。帰りましょう」
「うん」
私たちが家にしている地下シェルターに帰ると、ここを出発する前と一切変わらない様子だった。まあ、そうじゃなかったらヤバいけど。
「さて、シエラ。これからどうします?もう2人だけですし、国から許可貰わずに使っているんですからそろそろ移住しませんか?」
「えー。でもさ、ここは広いしお風呂もトイレもついてるんだよ。こんないい物件に無料で住めてるだけいいでしょ。それとも、他に何か移住したい理由とかあるの?」
「べっ、別に私はそういう訳じゃ…」
「おやおや~、図星だったんだね。分かり安いなぁ」
「し、仕方ないですね。正直に言いますけど一回しか言わないのでしっかり聞いてくださいよ」
「ほら、早く早く。もしかして、私とえっちなことができるような物件がいいのかな~?でもね、ここは防音性にも優れてるからその為だったら移住する必要ないからね」
「そ、そんな理由じゃないですよ!?ただ、今のお風呂じゃ狭くてシエラと一緒に入れないから…」
「つまり、半分当たりってことね。ユウナったら、本当に甘えん坊さんなんだから」
「ちゃ、茶化すのはやめてください…。ああああ!?!?!」
急にユウナは何かに驚いたように尻もちをついた。何があったのか周りを見渡しても分からなくて床を見ると、数匹のムカデが床を這っていた。
「もしかして、ユウナが移住したい本当の理由って、害虫が出るから?もしかしてユウナってムカデとかは嫌いなの?」
「そ、そんなことどうでもいいから早く駆除してください!!見るに堪えません!」
私は指先から少しの炎を出すとムカデたちにその炎を当てた。その数匹はいとも簡単に燃え散ってしまった。
「へぇ~、ユウナってムカデとかが苦手なんだね。また新しいユウナの一面を知れたよ」
「で、でも、シエラと一緒にお風呂に入りたいっていうのは本音ですからね?」
「分かってるって。それより、もしも移住するとしてそれなりの資金はあるの?もしも賃貸になったとしてもお金がなきゃ始まんないよ」
「資金はてっきり皇帝が戦争を始めた張本人を殺した報酬とかがすぐに出ると思っていたので…。まだ無いです。シ、シエラもそこまでのお金は持っていないでしょ?」
「まあ、そうなんだけどね。でも、もしも報酬が出るとしても1日じゃ出ないよ。調査団の派遣とかもあるだろうし」
なんて考えていた。その時、ドアをノックする音が聞こえた。ここに尋ねてくるなんて、一体誰だ?ここは基本、人が住んでる認識にはなってないはずだけど…。
「はい、どちら様でしょう」
「フェリシエラ・ヘルダー殿のご自宅はこちらで間違いないでしょうか」
まさかの皇帝騎士団の下っ端。一体何の冗談だろうか。
「あ、はい。私のことですね。もしかしてサインですか?なんて…ないか」
「陛下が会いたいとの仰せですので、今すぐ城の方までご同行願います」
「了解です」
こうして、私とユウナは王城に向かった。っていうか、私たちがあそこに住んでるのバレてたんだ…。
*
久しぶりに会った皇帝は、前に会った時とそう変わりはなかった。でも、明らかに何か焦っている。
「シエラ殿、戦争を始めたあの大馬鹿者を殺してくれてありがとう。そこで、今すぐ報奨金を授与したいところではあるのだが、少しイレギュラーが起きてしまってね。そちらに対応していただけるとありがたい」
イレギュラー?今回の戦争で何かあったのだろうか。
「ほら、おいで」
皇帝が玉座の裏に手招きすると、そこから1人の1本の綺麗な角を生やした真っ白な髪の幼女が現れた。
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