ニヤニヤが抑えられないっ!!!!!

白深やよい

放課後デート編

 ──月曜日。

 世間一般的に見たら、憂鬱な日なのかもしれない。

 でも俺にとっては,、週で一番好きな日だ。


 ようやく義務教育を終え、野球の推薦でついに入れた商業高校。

 そこで俺はとある女子に初恋をしてしまった。

 好きバレしたり、周りから冷やかされたりしたが、相手も俺のことが気になっていたようで、トントン拍子で付き合うことができた。


 付き合ったらやりたいことなんて何度も妄想してたし、リストだってある。

 学校が終わったら毎日一緒に帰りたいし、土日はデートだってしたい。

 けど──俺には「野球部」があるから、月曜日以外の休みはない。

 土日が全部練習で潰れてしまうし、長期休みだって毎日試合だろう。

 だからこそ俺にとって月曜日というのは──可愛い彼女と”放課後デート”ができる大事な大事な日になってしまったのだ。


 ──キーンコーンカーンコーン。


 学校を終えるチャイムが教室を響き渡る。

 これから彼女とデートができると想像しただけで眠気が吹き飛んでしまう。


(俺、今顔ニヤけてないよな?)


 絶対ニヤけてるだろうけど、もう今更か。

 付き合ったら収まるかと思ったけど酷くなるばかり。

 一体いつになったら治るんだろう?

 そんなことを考えながら帰宅の準備を始める。


 同じ教室に彼女はいるけど、まだ恥ずかしいからここでは話さない。

 だって今から話せるから。俺達には”これから”があるから。

 そんなことを思いながら俺は約束の場所へ向かった。


 ◆


「おまたせ」


 玄関に着くと、最愛の彼女──前田花蓮。

 ただ一緒にいるだけで幸せにしてくれる彼女。

 そんな彼女と放課後デートできる日が来るなんて一週間前は信じることができただろうか?

 まだ高校生活が始まってないのに付き合うことができて、こんなに幸せになれて、これからの学校生活が幸せすぎて不安になってしまう。


「行こっか」


 手を繋ぎたいし──抱きしめたい。

 そんな思いが溢れてくるのを必死に抑えながら、一緒に学校を出る。

 今日行くところはマクドナルドだ。


「……なんか恥ずかしいね」

「……そうだね」


 どんな話題を出したら喜ばれるのか。

 こういう時どんなことをしたらいいのか分からない。

 本当は手は繋ぎたいけど、付き合ってまだ時間経ってないし、周りの目があるしやめたほうがいいよな。


 そんなことを思い浮かべながらマクドナルドへ向かう。

 道中何とか会話を繋いで、この時間が少しでも長く続くようにゆっくりと歩いた。


「ようやく着いたね」

「……うん」


 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 もう少し話していたかった気はするが仕方ない。

 マクドナルドで飲み物でも買おう。


「行こう」

「うんっ」


 流石マクドナルド。

 学校に近いということもあるとは思うが、大勢の客で満ち溢れている。

 どこか座る場所がないかと見渡してみると?


(あっ……)


 目の前にいたのは野球部の部員たち。

 休みなのは俺だけじゃない。なんでそんなことにいち早く気づけなかったのか。

 せっかくのデートが野球部になんて邪魔されたくない。


「花蓮、本当にごめんだけど野球部の人がいるから外でもいい?」

「うん、大丈夫だよ」


 可愛い。ただただ可愛い。

 付き合った今でもその可愛さは健常で、もっと可愛くなっている気がする。


「ありがとう」


 ニヤけてる顔を必死に抑え、2人でメニューを覗く。


「花蓮はどうするの?」

「えっと……じゃあこれで」

「じゃあこれ1つと……これで」

「いや、私も払うよ」

「俺が払うよ」


 デートで彼女にお金を出させるわけ無いじゃないか。

 こういうところで彼氏っぽさを出さないと。


「あちらでお待ち下さい」


 店員からレシート受け取り、野球部にバレないことを祈りながら外へ出る。

 幸いバレなかったようだ。


「本当にごめんね」

「ううん、蓮斗と来れるだけで嬉しいから」


 本当に自分は幸せもんだな。

 心からそう思った。


 ◆


 マクドナルドで少し話をした後、俺達は目的の駅までやってきた。

 花蓮はいつも学校まで電車で来ているが、自分は自転車だ。

 名残惜しいが今日はこれで終わりになる。

 でも彼氏として余裕の表情を見せたい。

 そんなことを察してくれたのか、花蓮が近寄ってきて──


「まだ時間あるから少し散歩しない?」


 そんな、魅力的な提案をしてくれたんだ。


 ◆


 駅の周りを2人で歩く。

 さっきとは違って”周りの目を気にする必要がない”。

 もしかしたら──手を繋いであることもできるのでは?


(でも自分から求めて嫌われたくはないよな)


 絶対に花蓮だけには嫌われたくはない。だけど手は繋ぎたい。

 そんな奇妙な心境に自分自身驚いてしまった。


「あの、良ければなんだけどさ」

「うん」

「手、繋がない?」


 花蓮はどこか恥ずかしそうな目でそんな可愛らしいことを言ってくれた。

 もちろん、断る気はない。


「……う、うん」


 お互いぎこちなく手を繋ぐ。

 初めて触る花蓮の手はどこか愛おしい。


「それじゃあ、歩こう」


 もしかしたら俺の命日は今日なのかもしれない。


 ◆


 ”初めて”手を繋いで歩いた時間は淡々と過ぎ去っていく。

 時間的に今日はもうお別れだ。

 明日また会えるかもしれない。でも今日はもう会えない。

 もっと話していたい。もっと花蓮のことを知りたい。


 ──自分が動かないと、きっと何も進まない。


「よければ何だけど、この後2人で通話しない?」


 今まではグループだったけど、今日からは2人で。

 花蓮と色々な話をしたいから。もっと2人でいたいから。


「うんっ」


 可愛い。思わず頭をなでしまうほどには。


「あ、ごめん本当にそんなつもりはなくて」

「ううん。嬉しかった」


 そんな俺だけに向けてくれるその笑顔に俺は──。


「ここじゃ、ね? それは二人きりの時に」


 思わずハグしてしまいそうになった俺を突き放したりはしなかった。


(二人きりの時、ね)


 それがいつになるかは分からない。

 少しづつ、お互いもっと知っていこう。


 こんな日常が、永遠に続いてほしい。

 今日という日は、一生心に残る思い出になった──。









 次回!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 二人きりカラオケ編!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニヤニヤが抑えられないっ!!!!! 白深やよい @yayoi_san

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ