第4話
「……ふぅ、ようやく着いたな」
歩き始めて計三時間は歩いたんじゃないか。
それだけ歩いてようやく街らしき場所に着いた。だけど、ここに関しては少しも知らない場所だ。大きい門に関しては原作と同じだけど広さだったり、壁の高さだったりが聞いていた話とは全然、違う。
それにしても……よく歩いたよな。
でも、不思議と疲れは感じていない。ここら辺は恐らくステータスを手に入れたから起こっている現象なんだと思う。……とはいえ、HPが二だけ減っているから疲れていないは多分無いな。
一応、ここまでで数体の魔物を倒した。
全部、ゴブリンだったせいで大した価値は無いと思うが……まぁ、何も無いよりはマシだろ。それに倉庫から換金もできるし、回収しておいて損は無い。ましてや、討伐証明の両耳は取っておいたからね。これを冒険者ギルドに提出すれば端金くらいにはなると思う。
ゴブリン一体につき銅貨三枚、ただこれでもギルドで売るよりは高いはずだ。原作準拠なら一体で銅貨一枚、下手をすれば売る事ができなかったはずだし。
ポーチの準備はOK、魔法拳銃はしまった。
腰に片手剣を差している……なら、街に入っても問題は無いか。言い訳は……まぁ、原作通り主人公と同じやつを使おう。門に二つの入口があるけど……確か馬車の無い方だったな。
「うん……見ねぇ顔だな」
「すみません、少し難がありまして……それでここまで来たんです」
「ふぅん……まぁ、いいさ。あまり人に話したくない内容であれば、あちらに進め。そこでなら幾らかは話を聞いてくれるはずだ」
無常髭の生えたオッサン兵士。
でも、丁寧に教えてくれるから悪い人では無いのかもしれない。「ありがとうございます」とだけ伝えてオッサンの指さしていた方向に進んでみる。恐らくだけど……あの小さな小屋みたいな場所だよな……?
「すみません、用事があって来ました」
「あ、ああ、何の用だ」
「いえ……旅の途中でオーク共に襲われてしまい身分証明証を無くしてしまったのです。ある程度の金銭は持ち合わせているのですが……」
ここら辺は適当に合わせておく。
見た感じ……威厳を作ろうとはしているけど、二十代半ばくらいの青年だ。軽い嘘であれば騙せるだけの相手だと思う。既に隠蔽も発動させているからね。固有スキルとログは隠せているはずだ。
ただ……ここも原作通りなら……。
「分かった、仮の身分証が欲しいんだな。なら、入市税として銅貨五枚だ」
「銀貨一枚で換金してください」
「いいぜ……えーと……」
「大銅貨九枚と銅貨五枚ですね」
時間がかかりそうだったから教えたが……そこまで驚くような事かよ。なんか、「すげー」とか、「頭良いんだな」とか言われているんだけど。原作の知識で咄嗟に返してしまったけど失敗したな。ここら辺の簡単な計算もできないくらい教育が行き届いていないとは……。
「悪ぃな、計算が苦手でよ」
「良いですが……嘘をついている可能性もあるので全てを信じない方がいいですよ」
「おう、計算以外は信じないようにするぜ」
はぁ……なんだ、この人……。
アレか、時々いるグイグイ系の陽キャか。元文系大学でテニサーに入っていた男か……それなら俺とは相性が合わないな。なぜなら、あのような美女だらけの空間に入れるだけの勇気など俺には無い!
「一先ず、お釣りだ」
「……ありがとうございます」
「それじゃあ、今から仮の身分証を作っていくからな。ちょっと待っていてくれ」
そう言って棚から出したのは……はい、何度もラノベの挿絵で見た水晶玉です。確か、これに手をかざせば俺の簡易ステータスが出るんだよな。ええい、ままよ!
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名前 コウ
種族 人族(ヒューマン)
年齢 15歳
レベル 3
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……うん、これなら何の問題も無いな。
たださ、どうして名前がコウになっているんだ。ここに関しては少しもいじっていないはず……まさか、この世界ではカトウとか、コウタは禁句なのか。スラングとかで卑猥な意味になるから弾かれた……とかは無いよな。
まぁ、気にするだけ無駄か。
「コウ……おし、問題は無さそうだな。街に入る事を許可する。んで、これが仮の身分証だ。一週間くらいで効果が切れるから」
「何かしらのギルドに属して新しい身分証代わりにした方がいい、ですよね」
「そうだな……うーん、俺の見立てとしては商人ギルドが向いていると思うぜ。アレだけ計算も早かったら商売なんて楽勝だろ」
商人か……いや、あまりしたくないな。
だってさ、商人ってもろ社畜みたいなものだろ。どうして社畜から開放されたいのに社畜に近い仕事をするんだよ。……入るなら冒険者ギルドとかになるかな。いや、最初だけ生産ギルドに属するのも悪くは無いか。
それこそ、薬術だったり、鍛治だったりはある程度の知識と経験が必要になってくる。それらを学んでから冒険者になるでも……大して遅くは無さそうだな。
「期限内には決めておきますよ」
「おう、お前に任せるぜ」
おざなりな返答をして、その場を後にする。
もしかしたら、この対応こそが兵士の言う商人に向いている証拠なのかもしれないけど……知らね、そんなのになる気は微塵も無い。転移か転生かは分からないけど異世界に来たからには社畜に戻るつもりなんて無いからな。
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