古美術堂ミズキ ~道具の声が聞こえる彼女は人の心を結んでいく~
色彩 絵筆
prologue
「大切にされたものには魔法が宿るんだよ。
祖父は幼い私に口癖のようにそういっていた。
そんなロマンチックな話は私の幼心に刺さったのだ。
【古美術堂ミズキ】は祖父の店であり彼の主な仕事は品物の管理、それと物の声を聞くことだった。
現代においてそんなことを言ったところで信じる人間は少ないだろうし、いたとするならその人は夢想家かオカルトマニアのどちらかになることだろう。
祖父もそのうちの一人?それは違う。それだけは譲らない。翅の衣装が施されたイヤリングそれをつけると本当に物の声が聞こえてくる。
まぁ、それが聞こえたのは私と祖父しかいなかったのだけれど。
そんなわけで祖父の死後、この店をどうしようかという話が持ち上がった。現実的な話をするとこの店は流行ってはいなかった。
常連客はいなかったし好んで何度も訪れるような物好きもいなかった。
私は朝早く霧がかった外に出て看板を『Open』の文字に返した。
だけれど、祖父が好きだったのと同じようにこの店の雰囲気が好きだった私には店をたたむという選択が許せなかったのだ。
特にやりたいことのなかった私はここで祖父の仕事を継ぐことを選んだ。
新鮮な空気を吸い込み一つ伸びをする。
さぁ、今日も暇な1日が始まる。
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