ミステリという何か
電話番号案内局
4分間で読み終わるミステリ&アンチ 『斑鳩 烏悠はイマジナリー』
斑鳩烏悠は、玄関のドアポストを外側から開けると、狭い隙間から覗き込んで部屋の中を伺った。
「こりゃ死んでるなぁ。僕の見立て通りさ。殺人かどうかは怪しいが、この様子じゃ間違いなくお陀仏だ」
斑鳩烏悠はケラケラと楽しそうに笑いながら、部屋の中をジロジロと覗き込んでいる。
流石に頭に来て、
「あんたねぇ!人から見えてないからって調子乗って好き放題しないでよね!アタシをこんなとこに連れてきて、いきなりドアのポストから覗き見なんて、頭おかしいんじゃないの!!」
私は斑鳩烏悠のイカれた行動と言動に憤りを感じて、その場で怒鳴り散らした。
その様子を見るや、ニタニタ声も出さず笑い出し、私を揶揄う様に、アパートの通路に寝転がりながら肩肘付くと、こう言った。
「君がこの手の話題に興味共感を覚える子だからこそ、僕は君の前に姿を現したんだよ。なんたって僕は君のイマジナリーフレンドだからね。君が推理小説の読み過ぎで頭のネジが飛んで生み出した探偵の化け物なワケさ。狂ってるのは僕じゃない。キミの方なんだよ。」
言い終わるとニタッと笑ってから大あくびをして目に涙を溜めていた。
今もまだ現実を受け入れられないが、今はコイツを信じるしかない。確かに、部屋の中からは微かに腐臭を感じる。通りで何度も電話掛けても繋がらない訳だ…。
でも、こんな馬鹿げた男が私にしか見えていない探偵。
妄想探偵?だなんて事実を受け入れたくなかった。
だって、こんな馬鹿げた態度で、燕尾服を着て、キャラバッシュパイプを口に加え、鹿撃帽を頭に乗せた、大あくびする男の、何処に信用を置っていうのか自分でも分からないし、本当に馬鹿げていると思う。
けれど、今は彼を頼るしかなかった。
彼の言葉は絶対なのだ…。そう感じ取る直感と、複雑怪奇な論理パズルをも容易く解いてしまう頭脳を目の当たりにし、私は彼に誘導されるがままに此処に来てしまったのだから。
「さて…。そろそろ部屋の中でも探索しようとするかな? 嗚呼…キミは管理人を説得して鍵を借りる口実でも考えてくれたまえ。その間に、ボクがチャチャっとやる事は済ませておくからさ。まぁ、ボクは君が産み出した幻って訳だから、ボクはこの部屋で何もしていないのと同意義なんだけどね。」
そんな事を言うと、ハハハと笑いながらスッーっと玄関ドアを擦り抜けていく。こんな光景が何度も何度も立て続くと、流石に斑鳩烏悠は本当に夢幻の類なのだと思い知らされる…。
私は頭がおかしくなったの?と、頭から湯気が出て今にも爆発しそうになりながらも、斑鳩烏悠の言いなりになって、嘘の口実をあれやこれや考えながら、管理人室へ鍵を借りに向かうのだった。
斑鳩烏悠は私にしか見えていない。
私が探偵小説を読み過ぎたせいで創造された妄想探偵なのだ。
だから、彼との会話も虚空に向かい言葉を投げつけている独り言の類の筈なのに、彼との対話の中で物語の真相が結び付けられていく。本当に謎が暴かれていく…。
実に不思議な感覚なのだった。
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