第8話 二回表が終わって

 一回裏のこちらの攻撃は三者凡退か……。


 相手投手は確かにいいピッチングをしているから、仕方ないといえば仕方ないが、相手はあくまで二軍の一年生投手だ。


 これから先もっとレベルの高い投手、それこそ球速もプラス5キロ以上速く、変化球やコントロールの精度もより高い投手と当たる羽目になり得ると考えると、悩ましいところではある。


 ただこちらも今のところゼロで抑えているのは好材料か。


 一回表は危なげなく三者凡退。

 そして二回表の守りも、ゴロを量産する射水らしいピッチングでゼロに抑えた。守備にも危なげな様子はない。


 二回裏、こちらの攻撃は四番の築城から。


 正直なところ築城には、この試合でなんとか結果を出して欲しい。


 一年にして四番を任せ、好きに打たせる。

 それが許されるだけの実力があるのだと早めに周りに見せつけてもらえると、チームがまとまりやすくなる。この国はいまだに四番を特別視しがちなところがあるから、なおさらだ。


 今のところ明らかに不服な様子を見せているのは高岡くらいだが。射水との対戦でほとんどのメンバーは、築城が四番を打つことに納得しているようだし。


 この試合で逆に反発の声が出る、なんてことにならないといいが、なんて、それは心配しすぎだろうか。


 その築城が打席に立つ。


 不意に喉の渇きを覚えた。

 けれど今、一瞬でもグラウンドから目を離す気にはなれず、相手ピッチャーの投じる一球目を、身じろぎも出来ずに見守った。

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