(6)勝負はまだこれからだっ!


 不思議な力によって、悠真とパンチョビの距離が離され、カードデッキから七枚の手札が配られる。

 空中には200の文字。これはライフだろう。


 ――モンスターとトラップをセットしてください。


 どこからか機械音が響く。

 悠真はモンスターを四体をセットする。


 ・宝飾天使エンジュエル(コスト3)

 ・泥魔神アース・ノ・マッド(コスト3)

 ・馬忍者シュリケンタウロス(コスト2)

 ・子分小鬼コブリン(コスト1)


 合計コストは9だ。

 モンマスではモンスターとトラップ、合計コスト10までしか場に出すことができない。試しにコスト2のトラップを追加でセットしようとしたら『コストオーバー』の表示が出た。


 パンチョビはモンスターを二体、トラップを三枚セットしたようだ。


 ・魔調理師オークッキング(コスト3)

 ・角鶏トリガラトプス(コスト2)


 モンスターは見えるけど、トラップは伏せられているから中身がわからない。


「それで、先攻後攻はどっちが決めるんだ?」


 悠真の問いを、パンチョビが鼻で笑った。


「先攻後攻だ? バカめ、デュエルはもうはじまってるんだよ!」


 パンチョビのモンスターが二体がかりで悠真のエンジュエルに襲い掛かる。トリガラトプスは撃破したものの、オークッキングの大型フォークによってエンジュエルが力尽きた。


 これじゃ不意打ちだ。

 悠真がルールを詳しく知らないと踏んで、先手を打ちこんできた。


「はあ。やっぱりお前は卑怯者だな。まあいいや。『子分小鬼コブリン(コスト1)』を召喚だ」

「ガハハハハ! そんなザコを召喚していて間に合うのか? お前の召喚をトリガーにトラップ『召喚合戦』発動だ! コスト2以下のモンスターを即座に召喚できる。出てこい、『角鶏トリガラトプス(コスト2)』!! さらにオークッキングのスキル『突撃・斜向かいのディナー』を発動、このオークッキングは斜め方向に無制限移動する!」

「長距離移動スキルは便利だよな。でも対策は当然してあるよ――アース・ノ・マッドのスキル『大地の泥』を発動する」


 泥の壁がオークッキングと悠真の間に立ちふさがった。

 泥壁に足を取られ、オークッキングは身動きが取れなくなる。


「これで1ターン稼げるな……って、1ターンってこの場合どうなるんだ?」

「ふん。やるじゃないか」


 ――ドロータイムです。


 どこからともなく、悠真の元に手札が一枚飛んできた。


「そうか。この世界のデュエルでは1ターンは三分。だから三分置きに手札が補充されるんだ」と、外野で見ていた蓮が気づいた。

「なにを言っているのかサッパリわからないわ」

「今のところは互角に見えるペギ。でも……」 


 少しずつ悠真の方へと近づいてくるパンチョビのモンスターたち。


「三分経ったか。よし。コスト1象妖精エルファント召喚!」

「ふぅん。またモンスターか。」

 

 ――三分経過しました。モンスターの召喚かトラップの設置が可能です。


「シュリケンタウロスを生贄にして、『運鬼人サイコロプス(コスト5)』を召喚。スキル『サイコローリング』を発動、目は……6だ」


 サイコロプスが転がりながら一気に距離を詰め、パンチョビの目の前にたどり着く。


「サイコロプスでダイレクトアタックだ」


 サイコロプスの大きな拳がパンチョビを殴りつけた。

 パンチョビのライフが200から150まで一気に減った。

 しかし、パンチョビの表情はまだまだ余裕といった様子だ。


「おっと。ファーストアタックを取られちまったか。だが俺も50以上のダメージをトリガーにトラップ『痛みを糧に』を発動だ。俺の周りにいる敵モンスターを全て破壊し、新たに1体のモンスターを召喚できる。トリガラトプスをもう一体召喚しよう」


 サイコロプスが塵となって散っていく。


「ああっ! サイコロプスがやられちゃった」

「なになに!? これって、マズいの?」

「コストが高いモンスターは召喚の条件が厳しいから、デッキに入ってる枚数が少ないんだ。つまり――」

「切り札のひとつが潰されたってことペギ」

「ヤバいじゃん! ちょっと悠真、負けたら承知しないからね!!」


 どうにも、外野がうるさいな。

 もちろん悠真だって負けるつもりはない。

 勝負はまだこれからだっ!

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