第12話


「で、でも!ヴィクトリア様と一緒におられる時の方が、ベンジャミン様は楽しそうでした!」



「……っ!違うんだ。以前ロキやレナードがクラスメイトの前で俺を揶揄ったんだ。……婚約者が好き過ぎて、上手く話も出来ないヘタレだと。」



「ヘタレ……。」



「ああ。それでヴィクトリア嬢は弟やクラブ活動の後輩がルシルと同学年だから、とルシルの様子をよく教えてくれていたんだ。それが嬉しくて……。」



 つまり、私のことを聞いて笑顔を見せていた、ということ?



「因みに、私の様子というのは?」



「ああ。調理実習の時、食べ過ぎて腹痛を起こしていた、とか。他の令嬢のリボンが風で飛んで木に引っかかったものをするすると木に登り取ってあげた、とか。池に荷物を落とした令嬢の為に躊躇いもなく池に飛び込んだ、とか。後は……。」




「い、いやーーーっっ!!!!」




 あまりに恥ずかしい黒歴史をベンジャミン様に知られていたことに取り乱し、私は木から落ちそうになる。がばり、とベンジャミン様に抱き寄せられ、私は落ちずに済んだ。ベンジャミン様は私を抱き締めたまま、言葉を告げた。



「元気なルシルが好きなんだ。」



「……ですが、公爵夫人には私は向きません。ヴィクトリア様のようなお淑やかな方が……。」



「俺はルシル以外妻として認めない。社交は最低限で済むようにしてる。お淑やかでなく、そのままのルシルが良いんだ。」



「で、でも……。」



「うん?」







「ここまで、ベンジャミン様とヴィクトリア様の幸せを願って頑張ってきたのに、納得いきません!!!!!!」



「え?」




 私は呆気に取られたベンジャミン様を置き去りにして、木から飛び降り、スタコラと逃げ出した。

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