これだから野球は面白い

 9回表、1アウトランナーなしの場面で打席には4番の浅村。1点差で負けているこの状況。ここで打てなければ、ほぼほぼ負けだろう。


 迎えた4球目。甘く入った変化球を浅村らしいフルスイングでしばくと、打球は高く美しい放物線を描き、レフトスタンドへ吸い込まれていった。


 狂喜乱舞するテレビの前の僕。あるんだよ、こういうことが。やっぱり流れがきているチームは簡単には負けないもんだよな。これだから野球は面白い。


 そして9回裏のマウンドには守護神の松井裕樹。ここを確実に抑えて延長線に突入すれば、まだまだ試合はわからない。


 1アウトランナー2塁、一打サヨナラのピンチ。なんだかんだ祐樹なら抑えてくれるはずだ。これくらいのピンチ、嫌というほど見てきた。


 迎えた6球目。インコースの変化球を強引に引っ張った打球は、ファーストへの平凡なゴロ。よし、これで2アウト。


 そう思ったのも束の間、1塁ベースに当たって大きく弾んだ打球はファーストの頭上を越え、無情にもライト前へコロコロと転がっていった。その間に、2塁ランナーがホームイン。


 楽天イーグルス、サヨナラ負けで連勝は4でストップ。


 茫然自失するテレビの前の僕。何が起きた。理解が追いつかない。一体何が起きたんだ。こんなことあるかね。これだから野球は恐ろしい。


 僕は大きな溜め息と共にゆっくりと立ち上がり、食器を洗いにいった。


 プロ野球を楽しむために最も大切なことは、引きずらないことだと僕は思う。

 悔しすぎるサヨナラ負けをしたり、大量失点でボロ負けしたりすると、こんな弱いチーム、2度と応援してたまるかと思ってしまう。

 本気で応援してるからこそ、そう思うのだ。


 ただし、その怒りは寝るまでの期間限定だ。


 翌日になれば、昨日の怒りなんてすっかり忘れて、試合開始の18時が楽しみで仕方なくなっている。そして試合が始まれば、大好きなチームを全力で応援する。


 勝っても負けても、毎日一喜一憂できるものがある。それが何より素敵なことなのかもしれない。


 さて、そろそろ野球の時間だ。交流戦、残り6試合。楽しんでいきましょう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る