弾けるソーダが飲みたくなった
寝転ぶヤドカリ
弾けるソーダが飲みたくなった
帰ったら、明日までの課題をやらなくてはならない。頭の隅でぼんやり考えつつ、僕は駅前のカフェに吸い込まれていった。
今日もコーヒーにしようかと思ったが、直前で気分が変わった。メニューの端に見つけたソーダが無性に飲みたくなったのだ。なんだか夏の気配を感じた。
シュワシュワと広がる青色は、バイトの疲れを爽やかに溶かしていく。3分の1ほど一気に飲み干した直後、懐かしい音が聞こえてきた。
パチパチ、パチパチパチ、パチパチパチパチ。
この感覚は間違いない。細かく砕かれたキャンディーが口の中で弾けている。これ楽しいんだよな。
もう一口飲む。パチパチ。楽しい。
あまりに単純で、あまりに素敵な仕掛けに心が躍った。
小さい頃、わたぱちというお菓子が好きで、よく食べていたことを思い出す。
確かスーパーのお菓子売り場では、かなり下の方に置いてあった気がする。少しずつ、お菓子売り場を見つめる視線が上がっていったからか、わたぱちを手に取ることはなくなっていた。
今となっては、スーパーに行っても、お菓子売り場には行かないことが多い。今度また買ってみようかな。気になって調べてみると、数年前に生産終了していたらしい。
知らないうちに好きだったものが無くなってしまうのは悲しい。だが、思い出のお菓子はいつの間にか形を変え、僕をまた笑顔にしてくれた。
もう一口飲む。パチパチ。やっぱり楽しい。
あの頃感じたものと同じ。口の中で弾けるこの感覚。弾けてちょっとだけびっくりして、楽しくなるこの感覚。
感じないようになってしまったら、人生楽しくなさそうだ。
このソーダ、またいつか飲みに来よう。
パチパチ。パチパチ。弾ける余韻を味わいながら、カフェを出た。
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