第4話 紛失金

友人が金を失くしたとやってきた。



夏真っ只中

朝からネットの動画視聴サービスでアニメやドラマの一気見をするという

なんと自堕落で至福な休日だろう。

太陽が真上まで昇りきる手前、一番暑いと言って良い時間にはアイスを食べる。

一人暮らしの休日なのだ。文句を言われる筋合いはない。

動画の続きを見ていたそんな昼過ぎに友人はやってきた。


友人の前に麦茶が入ったグラスを出し、俺はテーブルを挟んで向かい側に座り話を聞いている。普段はおチャラけている奴なのだが、相当堪えている様だ。

財布は無事。クレジットカードも無事。現金の数万円だけが無くなっていたらしい。

「気付いたのはいつ?」と聞くと、2日前だと言う。

「じゃあそこから何をしていたか思い出してみようか」俺は紙とペンを用意して

メモを取る用意をして言った。

まとめると、3日前の夜、大学のサークル仲間と飲みに行って酔って帰宅。その時は皆と割り勘して、まだ財布に現金が入っていた事は覚えている。時間にして早めに切り上がったらしく19時位だそうだ。翌朝、財布の現金だけが無くなっていた。と

そこからはサークル仲間に連絡したり、思い付く限り探し回ったらしいのだが見つからず、警察に届け出ようとした時に、以前からちょっとした相談は受けていた俺に思い当たったようだ。

探偵じゃないんだけども、無下にもできない。


「飲みに行った店にもう一回行ってみようか」

「ありがとうな、何度も助けてくれて、お前に話すとなんだか落ち着くよ」

「何もしてないけどなw」

頼りにしてくれているのは悪い気はしない。



「無いな」

「無いんだよ」

通り沿いの飲み屋から出た二人は再確認した。

「ここからどこに行った?」

「家に帰った。...はず」

「ここを19時に出たんだよな?家に着いた時間は覚えてるか?」

「・・・22時位?」

「ここから家まで1時間として、2時間の空き時間か」



空白の2時間

「↑謎めいてカッコいい言い方だよね」

「うるさい」



「とりあえずここから家まで行ってみよう。どういう道順で帰った?」

「どう?って普通なんだけどなぁ」と友人を先頭に歩き始めた。

商店街の通りを歩くいつものルート

二人で歩いていると「そこのお二方」

ドラマで見るような占い師が声を掛けてきた。

「俺たちですか?」まだちらほら通行人がいる中、確認を込めて聞き返した。

「どうです?お一人分のお代で結構です。お二方を見させて頂けませんか?」

「いま急いでるんで」「ぜひお願いします」

「え?どっち?」

占い師は困っている。

俺は断った。

友人はすでに占い師の前にいる。

藁にも縋る思いなのだろう、俺は友人の横で占いを見ている。

「最初からこういう人に見てもらえば直ぐに見つかったかもなw」

(あれ?こいつもしかして調子者とかじゃなくて・・・あれ?)

「あなたもしかして、探し物をしてますか?」

『!?』

占いの第一声がピンポイント過ぎて驚いた。

「そういう相が見えるのよ」

「どうすればいいですかね?」

友人が聞くと

「探し物に関しては私より専門がいるわ。ここに行ってみて、連絡しておくから」

占い師から地図の書いてある名刺を渡された。

(怪しすぎる)

「次はあなたよ」

俺はとっとと済ませようと思い、代金を置きながら占い師の前に座った。

「あなた利き手はどっち?」

「右ですけど」

「近い内に怪我ではないけど痺れるような痛み?が起きるわね。気を付けて」

「雑じゃないッスかね!?」

「占いとはこういうものよ。はい時間を無駄にしないの」

凄いのかインチキなのか。


「どうする?行ってみるか?」

名刺を指しながら友人に聞くと?

「ここまで来たら行くでしょ」

「はいはい」

乗りかかった船とはこういう事を言うのだろうな

名刺の地図はマンションの一室を指している

インターホンを押すとドアの向こうで音が響いている。

暫くするとドアが開き

「いらっしゃいませ、どうぞ」

占い師の女性と同じ位の世代の女性が現れた。

招き入れられてソファに案内された。普通のマンションの部屋だ。占い師の怪しさが無い。

「話は聞いてるわ、探し物よね」

女性が対面して座った。

「占い師の方に探し物専門だって聞いたんですけど?」

俺はまともに話が進められるのか身構えている。

「私は占い師じゃないからよく分からないわね、私は一種の超能力で探し物を何件か受けた事がある位よw」

(うわっ怪し)

「テレビでたまに見ない?外国の人が探し物してるやつ」

(ある。テレビ的に伸ばして最後うやむやになったりするやつ)

横の友人の顔を見ると目をキラキラさせている。

(・・・こいつ金を騙し取られてないだろうな)

普段居合わせた事がない状況と友人のリアクションで不安が増す。

友人が経緯を説明し終わると。

「分かったわ。それじゃ始めるわね」

彼女は友人の財布を両手で持ちながら、目を閉じて集中している。









賑やかな所ね


たくさんのボールと


柱かしら 何本も見えるわ






ちょっと待って



文字が見える



アルファベットみたい


     友人の顔が青ざめ、険しくなっていくのが見える。何か思い出した様だ。








R?





音・・・声も聞こえるわ










まりんちゃん?

「パチンコじゃねーか」俺は右手で


【右手に痺れるような痛み?が起きるわね】


占い師の言葉が過った。敢えて左手でチョップをする。

「海物語か!?酔ったままで行ったのか!?その分だと牙狼とエヴァもやってるだろ?」

変に騙されていないだけ良かったが、前にパチンコは辞めると言っていたので自分も盲点だった。そのイライラが沸いた上での友人の開き直り。

「休日にどう過ごそうと文句を言われる筋合いはない‼」

スパーン‼‼ 


俺はそいつを・・・友人をビンタした。

右手が少し痺れている。

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