subliminal 2nd

雨月 史

subliminal 耳から始まる潜在意識

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」



3名の女性がお互いの顔色を伺いながら、

三人とも同時に3本の指をあげる。



「はい3名様ですね。ではテーブルにご案内いたします。」



店員の後ろをおしゃべりしながら、

ついていく女性たちを目で追いったあと、

辛辣な面立ちでヒソヒソ声で恋人で、

ルポライターの百合子が言った。


「ねー伸晃。また3名よ。」


「なんの話だよ。」


「この喫茶店さっきから入ってくるお客さんほぼほぼ3名なのよ。」


「百合子……お前急に黙り込んだと思ったら、そんな事考えていたのかよ。」


「そんな事?これはとても重要な案件よ。3と言うのは実は人間にとって負をもたらす数字なのよ。」


「バカな。何を根拠にそんな事を言ってるんだよ。」



「3と言うのは裏切りの象徴。不協和音のようなものなのよ。」



「なんなんだよ不協和音て?」



「知らないの?言ってみれば、粗雑感があり心地よく聞こえない2つ以上の音のことをいうのよ。反対に心地よく聞こえる2つ以上の音のこと」を「協和音」というの。

言ってみればドミソと続けば『協和音』で

ドレファと重なると『不協和音』という訳。

それを音楽的にはよく「ぶつかる」というみたいだけどね。」



「はー。で?その不協和音と「三」となんの繋がりがあるわけ?」



「あなたって察しが悪いわね。このコロナ禍の影響で昨今は人間関係がより軽薄になってきているわけ。毎日マスクで顔をかくして、同級生や同僚の顔まともに知らないし、見られなくなってしまったでしょう。もはやマスク依存者が多発してる現状なのよ。その上外に出る機会は極端に減り、他人と接しなくなったことで一対一でどう付き合って良いかがわからなくなってしまったのよ。」



「ハハハ。たしかにそれは言えてるわ。でもそれと3と不協和音が、どうしても一つの物として見えてこないんだけど……。」



「そこよね。そこにコロナを広めたとされる某国の陰謀が見え隠れしているわ。」



「なんだよその、某国の陰謀ってのは?」



「2人っていうのは単純よね。相手といる時その相手が自分に合うか合わないかは明らかだから。好きならとことん付き合えば良いし、

嫌いなら2度と会わないだけ。」


「そりゃそうだな。」


「けれど、3人てどう?仲良しのA子とB子の間にC子が入ってくると、A子とB子は2人だけで話すのはなんとなく気まずくなる。だからC子にも話題を振る。けれどもA子とC子が話ていると、なんだかB子は疎外感を感じてしまう。嫉妬心?それを感じたC子はB子にも話題を、提供する。けれども今度はA子が不快に感じるかもしれない。」



「うん。そりゃわかるけどそんな事は昔からある事じゃないの?それに3人いるとギクシャクするならはじめから2人でいるか、もしくはもう1人探して4人で行動すればいいじゃん。」



「それよ伸晃!!それが某国の陰謀なわけ。」


「なんだそりゃ?」


「あなたやたらと3という数字を叫んでいたコメディアンを知らない?」



「え?あの3の倍数だけアホになる人かい?」


「そうよ。あなたも知っているsubliminalというのはね、映像だけじゃないのよ。実は聴覚的subliminalというものが存在するの。」



「聴覚的subliminal?つまり聞いて洗脳されるって事?」


「そうよ。スピードラーニングみたいなものよ。つまり無意識でも毎日耳から入る事って潜在意識の中に残るのよ。CMなんかでもよくあるでしょう。愛が1番とか、ららら〇〇君とか、レレレの奴とかね…。」



「お前そりゃ金貸しばっかりじゃんか!!」



「だ.か.ら.それが問題なのよ。あれは借金という概念を麻痺させているのよ。日常的にTVで流して軽快なテンションで流れるリズミカルなCM。まるで『借金なんて誰でもやってるよ!!』みたいなね。」



「こわ…なんか少しわかる気がするわ。」


「だから『3』もあのコメディアンかどうとかではなくて、それを世の中に広げた人物がいるという事なのよ。」



「でも3人組が世の中に広がったところでどんな不具合が、あるんだよ?」



「想像力に乏しいわね。つまり不協和音が、響き続ければ人と人の繋がりはますます軽薄になる。人間てやつが信用出来なくなって、そのうち誰とも接しなくなって、きっと日本国民は弱体化するわ。」



「……考えすぎじゃないか?」


「そうかしら、けれどもあなたも私も耳の奥に『3』という数字が刻まれているのは確かよ。私調べてみるわ。この日本に『3』を広めた人物を……。」



そして彼女はいなくなった。



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