10.新しい友だち

自宅で着替えてから亮宅へと向かう。


食事時にマヤさんに昨日学校で何か無かったか聞かれた。


「特に何も…ないですね」

「そうだな、概ね想定通りの事しか起こってないよ」

「あーでも、やっぱり友達じゃない男子は視線が露骨でした、それに女子達からはよそ者オーラ出てましたね、今後上手くやっていけるかは分かりませんけど。

でも亮がしっかりサポートしてくれたので助かりました」

「あらあら、しっかり亮がやってくれてるみたいで安心ね♡」


「明日の体育は助けてやれないからそこは塁1人で頑張れよ、無理そうなら体調悪いと言って逃げても良い」

「出来れば逃げたく無いんだけどね、でも女子に混ざるのは緊張しそうだ」

「早く友達が出来るといいんだけどね♡」


亮宅からの帰り際、玄関で


「そういや今週末からゴールデンウィークだよな、今度の日曜空いてるか?良かったら2人で遊び行かないか?」

「え?別にいいけど…?そういや最近一緒に外で遊んでなかったな」

「よし!じゃあ後でメッセージ送る」


そういや通学が一緒だったので帰りに遊びにいく事はあっても、休日どこかにってのは少なくなってたな、まあ偶にはいいだろ、どうせ暇だし。というか1人で外出しちゃダメって言われてたな。

丁度いい機会だから行きたかった店を亮と回ろう。


夜寝る前に亮とメッセージのやりとり

「日曜朝9時に迎えに行く」

「おっけー」



RYO view


あいつ…絶対デートの誘いだって気付いてないだろ―――

まあいいか、初デートで気付かせて意識させたいし、もう一回くらい連休中にデートしたいとこだ。


目を閉じると瞼に塁のセーラー服姿が浮かぶ、塁のセーラー服姿可愛すぎだろ…

おっぱいガン見してるやつは埋めてやりたいくらいだ、アレは俺のモノだ。まだ俺のじゃないけど。

エプロン姿も可愛いし、いつまで平常心でいられるか、本当に俺はどうにかなりそうだ。


――――――――――


しっかり朝起きて亮宅で朝ごはん、3人で通学。


電車を降りて歩いていると途中で1年女子が2人待っていた、昨日紹介された娘達だ。

たしか名前は、芝田 真(まこと)ちゃんと岩辺 亜美(あみ)ちゃんだったか。


「おはようございまーす、芝田でーす」

「おはようございますー、岩辺です」


どちらかというとノリは軽めな感じで悪い印象は無い、オレたちも挨拶を返す。


「おはよー、真ちゃんに亜美ちゃん!、今日からよろしくね」

「おはよう、妹をよろしくな」

「おはよう、よろしくね」


昨日ほとんど喋ってないオレはどう対応していいか分からず無難に返した。


「お兄さん!奈江ちゃんは任せて下さい」


元気な芝田ちゃん。

そういって奈江ちゃんを引っ張っていき、オレたちの後ろを3人並んで歩き始めた。


「やっぱりお兄さんって凄いカッコいいよねー」

「自慢のお兄ちゃんだよ!」

「うちのもこんなに格好良かったら違ったのになー」

「彼女さんもすっごく綺麗で羨ましい」


なんて話をしている、岩辺ちゃんのお兄さんは頑張れ、知らんけど。

そしてオレは彼女ではない、この兄妹から見ればおまけのような存在なのだ。


「彼女じゃなくてね―――オレたちは幼なじみで親友なだけだよ」


後ろを振り向いて2人に言う、亮は露骨にがっかりする。

2人共不思議そうな顔して


「えーそうなんですか?とってもお似合いなのに勿体ない」

「オレ?」

「今のところは彼女じゃなくて親友って事にしてるみたいなんだよねー」


何勿体ないって、それに今のところじゃないし、その予定も無いです。


後ろの娘達に見られていると思うと少し緊張する、多分オレが元男なことは今までの会話から奈江ちゃんは言ってないんだろう、つまり普通の女の子として見られているという事だ。

全く知らない他人がオレを女の子とみる分にはなんとも思わないが、奈江ちゃんの友達ともなれば話は別だ、おかしな人と見られたくない。


そういう意味では”オレ”と言ってしまったのは失敗だったか、”私”というべきだったか、いやしかし認めたくない感情があるのも事実だし、オレっ娘って事で通すしかない。


「オレ、塁って言います、よろしくね」


努めて優しく、そういってニッコリ微笑んだ。

2人は急に背筋を伸ばし、顔を真っ赤にしながら


「ハイ!よろしくお願いします!」


と答えた、なんで顔真っ赤になってんの。


「凄い美少女だよ~奈江ちゃんと違うタイプだよ~ヤバい~」


小さい声で言ってても聞こえちゃうんだけどなー。


「お前ちょっとは手加減してやれよ…」

「いや何がよ」


なんなんだよ一体、オレが何したってんだ。


――――――――――


体育の時間前の休憩時間、オレは空き教室へ移動して着替えた。

体育は2クラス合同なため先生からあらためてTS症の簡単な説明と紹介をされた。


「今日から女子に参加する事になった瀬名です。体は完全に女になってますのでよろしくお願いします」

「えー」

「大丈夫なの?」

「なんかやだ…」

「え?あの娘元男なの?」

「ヤッバいめちゃ可愛い…」


別クラスの女子の反応とうちのクラスだと思われる変わった反応があった。

まあ多少言われるのは覚悟してたし、これくらいヘーキヘーキ…。

ああでも結構ダメージあるわコレ。拒絶されてる感て思ったよりクル。


そして授業が始まって直ぐに、3人組が寄ってきた。

名前は…ごめん覚えてない。


「やっほー、瀬名さん今1人だよね?こっちも3人だし4人で一緒にしない?2人ペアでも出来るし」

「え、いいですけど、大丈夫?」

「何がー?大丈夫大丈夫、なんかしらんけどー」

「元男ってところ?でも今は女の子なんでしょ、私ら気にしてないから」

「むしろー、瀬名さんの超絶美少女っぷりにうちらメロメロですわー」

「ぜひお友達になりたいなって、どうかな?」

「…お友達になって、美少女の瀬名さん」


え、本当に?なんか裏とかない?いじめられたりしない?

あとなんか美少女って持ち上げるのやめて?もしかしてそれが理由?

一応確認しておきたい。


「あの、友達になりたいって美少女だからが理由?」

「そうだよ!よく気づいたね、私ら美少女大好きでさ、本心から友達になりたいと思って!」

「こぉんな美少女がいたらー友達になるしかないよねー」

「…ぜひ、友達に」


下手な理由より数倍信じられる気がする、よし信じよう。


「こちらこそ、友達になって下さい。」

「うん、よろしくね」

「これさー自慢になるでしょ絶対」

「…毎日の楽しみが増えた」


その日の体育授業は3人のお陰で楽しく最後まで出来た。

さらに着替えも空き教室で一緒にしてくれたのだ。下心なく嬉しかった。


「うわー、近くで見ると本当に綺麗だよね着替えも様になってるっていうか」

「美少女かくあるべし、だなー」

「…鼻血でそう」

「あんまり近くでじっくり見ないで欲しいかなー」


オレのほうが見られる立場だったなんて思わないじゃん?

むしろ3人のほうに下心がありそうだった、逆に大丈夫なのかオレ。


色々話して3人の分かった事。


とさかトリオ1

山口 智子(ともこ)3人のリーダー的存在、おっぱい大きい、ハキハキ喋る、バレーボール部に所属、男子にも女子にも人気、美少女好き、髪型は少し茶髪のストレートロング肩甲骨くらいまで、バレーボール時にはポニテにするらしい。


とさかトリオ2

中山 沙也加(さやか)変わった喋り方、おっぱい無い、バイト掛け持ち、帰宅部、美少女好き、髪型は茶髪で肩までのミディアム。


とさかトリオ3

佐伯 奏(かなで)おっぱい普通、言葉少なめ、おとなしめ、パソコン部、一部男子に人気、美少女好き、髪型は艶々な黒髪ボブ。


どうやら美少女好きの3人組みたいだ。

で、ターゲットはオレ。

着替えてる最中に名前の呼び方について話し合い、名前で呼び合おうという事になった。


お昼休憩時、智子ちゃんに呼ばれて4人で食事をする事になったので亮にスマンと伝えた。

明日から出来れば5人で食べられないものか、無理かなー男女だもんなー。


お昼色々話していて今度の土曜に買い物行こうという話に、オレが全然小物とか女の子らしいものを持ってない事を知ったためだ、最初は別にいらないからいいよと遠慮していたが中々に沙也加ちゃんの押しが強く、最悪ついてくるだけでも、という事になった。


「明日からさ、亮とも一緒に5人で食事したいんだけど、ダメかな?」

「ちょっとまって、そんな表情で言われたら断れないじゃん!」

「金髪美少女強すぎんよー」

「…カッコいいからいいよ」

「え!?じゃあ5人でもいい?」

「くっそ可愛い過ぎて死ぬー」

「塁ちゃん、すごく嬉しそうに言うね、しょうがない、いいよ」

「…うん」


よし!可愛いとか嬉しそうとかは聞き流して、5人で食べられる!


「ちょっと亮に言ってくるね」

「いてらー」


「――こないだまで男同士で親友だったってマ?」

「今は付き合ってるようにしか見えないよね」

「…あれだけ可愛いと分からなくもない」

「それなー」


「亮!明日からのメシなんだけど、あの3人と一緒で5人でも良い?」

「うーん、塁がいいなら良いぞ」

「よっしゃ、じゃあ明日からはそれでな!」

「接点が全くないから帰ってから色々教えてくれよ」

「分かってるって、じゃあ戻るわ」


これは嬉しい、友達が出来て亮と一緒にメシも食えるとか。

だって今までずっと昼メシ一緒に食ってきた仲なんだし、居ないと寂しく感じるもんよ。

まあ今は朝昼晩と一緒なんだけど。


――――――――――


亮は帰宅中ソワソワしていた、奈江ちゃんが心配なんだろう、途中でメッセージが来たみたいで無事に帰ったようだ。


「今日は塁ちゃん機嫌が良いけど何か良いことでもあったの?」

「はい、友達が出来まして…それで…」

「え?女の子?」

「はい、女子3人です、まあ理由が美少女だから、だったので良いかなって」

「あー、そういう理由なら多分大丈夫かもね、でも気を付けないとダメよ♡」

「同じクラスだし明日からは昼メシ時には俺も一緒に食べるから多分大丈夫だと思う、一応注意して見ておくよ」

「オレはそんな警戒しなくても大丈夫だと思うけどなー、3人共面白い娘達だよ」


「奈江のほうは大丈夫だったか?」

「うんなんとか、途中まで友達と一緒だったし、明るい内に帰れるなら大丈夫かな」

「暗くなってきたら直ぐに俺か母さんを呼ぶんだぞ」

「分かってる、そこはちゃんとするよ」


亮も本当はオレじゃなくて奈江ちゃんと一緒に帰りたいはずだ、またあんな事が起きないとも限らない、恐怖で足がすくんで動けなくなるそうだから逃げる事も出来ない、心配だろう。

逆にオレはいつになったら、ってまだ1週間も経ってないからなー。

自覚?ないよ、というか何?としかいいようが無いし。

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