8.手伝いとセーラー服

今日は月曜日、本当は学校なんだけどまだ制服がないからオレは今日明日と休みになってる。

亮と奈江ちゃんは学校があるから朝ごはんの時間が昨日より早くその為に早めの時間に準備して…たはずなんだけど身だしなみに思っていたより時間がかかってしまい、少し遅い時間に亮宅へ向かう。

明日からはさらに30分は早く起きないと行けないな。


玄関についたら亮と奈江ちゃんは出かける所だった


「塁遅かったな、今から出るところだから相手してる時間もない、いってくる、おとなしく待ってるんだぞ」

「塁ねえ!女の子は朝時間かかるでしょ、もっと早く起きなきゃね!じゃ行ってくるね!」

「はは…、いってらっしゃい」


普通にいい声の亮と凛とした声の奈江ちゃんを二人仲良くすれ違いで見送った。

義道おじさんはすでに出掛けた後のようだった。

オレだけの朝ごはんになってしまった、明日からはもっと早く起きて迷惑を掛けないようにしないと、反省だ。

マヤさんは片付けと食器洗いをしている、そしてそのまま洗濯を始めた、う~ん、主婦って感じだ。


自分はというと口の許容量と胃袋が共に小さくなってて食べるペース、食事量が分からないままで時間がかかる割には減っていないという、把握するのに時間がかかりそうだ。

男の時ならこんな量10分もかからなかったと思う。



マヤさんと一緒に病院でTS症の診断書を貰って役所へ向かうところ。


「一応精神科の病院への案内も受けてるから必要になったら言ってね、塁ちゃんは大丈夫だと思うけど、不安になったら直ぐに頼ってね♡」


役所ではほとんど全てをマヤさんがやってくれた、流石の頼もしさ。

オレは言われた書類に記入しただけで終わった。


午前中で今日やる事は終わってしまった、まだ昼前なんだけどどうしたものか…。


「塁ちゃん今からお昼ごはん作るんだけど、手伝って貰っていい?」

「あ、はい、手伝います」


ご飯を毎食頂いている身なんだし、それくらいは手伝いますとも、それに暇だったから丁度良い。


「あ、そうだ!ついでに料理のお勉強もしてみる?料理出来ると胃袋を掴めていいわよ♡」

「誰の胃袋を掴ませるつもりですか…でも折角だから覚えてみます、1人で買い物出来るようになった時に便利そうだし。」

「そうね~、じゃあ今日のところは食材の切り方と簡単な炒めものから初めてみましょうか♡」

「はい、お願いします」


なんだかんだ言っても料理が出来る女の子は魅力的だと思うし男であっても覚えておいて損はないだろう。

とは言っても包丁なんかまともに持ったことが無い、扱い方の初歩の初歩から教えて貰ってなんとか炒めもの1品出来たのが昼1時過ぎてからだった。

それとご飯と朝の残りをお昼ご飯にしてマヤさんと食事した。

味のほうは大分薄味で失敗していた、野菜からの水分を考慮する必要があるのは言われてみればそうなんだけど分からなかった。


マヤさんは楽しげにお喋りしててよく微笑む、声も艶のある声で男の人は皆魅了されてしまうんじゃないだろうか。

見た目も40才くらいには見えず30前後にしか見えないと思う、16才のオレじゃ宛にならない観察眼だけど。俺位の年齢だと40から60位の男の人はみんな同じにしか見えない。


「また5時頃になったらお手伝い頼んでもいい?」


毎日食事を頂いているし、他にも色々お世話になってる、ここは恩返しのつもりで毎日でも手伝おう。


「分かりました、今後も晩ごはんは手伝いますよ、本当は朝も手伝いたいですけどまだ起きれないのでちゃんと起きれるようになったら手伝おうと思います。」

「あら~いいの?それじゃ頼っちゃおうかな、お料理上達の教育も合わせてして上げるわ♡」

「よ、よろしくお願いします!」


「じゃあそれまでは自由にしてていいわよ♡」


という訳で自由になった、なったけど別にやることも無いのでまたしても亮の部屋でダラダラして時間を潰そう。


スマホを取り出し、クッションを敷いて…と、気づく、もう始めからベッドで寝転がればいいか、と。どうせ寝てたらベッドの上で目覚めるんだし、亮の手間も省けていいじゃない。

という訳でベッドの上で寝転がり、スマホのタイマーをセットしてからサイトめぐりを始める。


ゴロゴロしてると亮の匂いがめっちゃする、特に枕、めっちゃ落ち着くヤバい、そのまま枕に顔を埋めて呼吸なんかもしてしまう。

掛け布団も掛けてしまおうそうしよう、…全身亮の匂いにつつまれて安心できる~ヤバい~。

まさかここまでの匂いフェチになってしまっているなんて、こんな姿を見られたら変態と言われても仕方がないじゃないか。

男なのに男の匂いで落ち着くってどうなの、体は女の子だけどさあ。

そんなこんなで落ち着いていると穏やかな睡眠に入っちゃうのでした。


――――――――――


ゆさゆさと肩が揺らされる


「おい、累起きろ!おい!…キスしないと起きないつもりか?」

「…んー?…ハッ!?今何時?」

「もう5時過ぎてるぞ、母さんが起こしてこいって、何かあるのか?」

「あーすっかり寝てたわ、起こしてくれてサンキューな、マヤさんとこ行ってくる」

「おい大丈夫か、まだちゃんと目が覚めてないじゃないか」


起きて直ぐに立ち上がって歩こうとしたために少しフラついたが亮が体を支えてくれた。


「おい!本当に大丈夫かよ、目が覚めるまでこのまま支えとくぞ」


支えるっていうか正面から抱きしめられてる感じになってるんだけど、あー亮の匂いだわー。

…っと、イカンイカンしっかり起きて早くマヤさんとこ行かないと。


「あー、うんもう大丈夫、じゃあまた後でな」



「マヤさんすみません、しっかり寝てました」

「大丈夫大丈夫、いまから野菜切るところだから♡」


すでに1品作り終わってたマヤさんを見て反省する事しきりだった。



「今日の晩ごはんはねー累ちゃんが手伝ってくれましたー、拍手~」

「「「おお~」」」パチパチ

「いや恥ずかしいので止めてください、大して手伝いも出来てないので」

「まあ、俺のベッドでぐっすり寝てたしな」

「え!?お兄ちゃんのベッドで!?いいな~羨ましい」

「今は俺のベッドで寝て良いのは俺と累だけだからな、愛の巣だからあそこは」

「へ~」

「いやいや何もないからね!ただ亮のベッドは落ち着くってだけだから!」

「へ~」


亮以外の3人がオレのほうを見てニヤニヤしてくる、亮はニコニコしてるし、そういう目で見るのはやめようね!


「塁の手作りのおかずどれ?」

「おかず自体はないけど、切った人参ならコレね♡」

「じゃあ俺人参多めでお願い」

「そう言うと思って多めにしておきました♡」

「流石母さん、―――塁~次は俺お前の作ったおかず食べたいな~」

「まずは出せるレベルにならないとダメだからまだまだ先」

「よっしゃ、一番は俺な!」


残念、失敗作ではあるけど一番はマヤさんだ。まあまともな物が出来たら食わせてやるか~。


――――――――――


今日は30分早く起きて亮宅の朝食に参加する事ができた。

流石に朝だと晩ごはんの時のように緩やかな空気は流れない、それにマヤさんは食事に混ざらずお弁当を作っていた。

オレは食事が遅いため亮達を見送るぐらいしか出来なかった、コレ明日から出かけるのに間に合うのかな…?


片付けの手伝いなどしつつ、マヤさんと雑談してから一緒にセーラー服を取りに行く。


「セーラー服って清楚っぽくていいわよねぇ、累ちゃんの金髪にもよく似合うと思うわ、

ただちょっと…胸が大きいと太って見えちゃうなんて聞くけど♡」


亮宅に戻り、セーラー服に袖を通してみると


「あーこれは…確かにおっ、胸がちょっとキツイかもです…」

「サイズ大きいのに変えてもらう事って出来ないかしらね、聞いてみるからちょっとまってて♡」


ちょっとこれは想像以上にキツイかも知れない、直立して動いてない状態でこれなのだから動いた日には最悪弾ける事もあるかもと思える。


「累ちゃん!なんとか今日中に大きいのに変えてもらう事が出来そうだって、夕方になっちゃうけどいい?」

「全然大丈夫です、変えないと本当にヤバそうです」


なんとかなりそうだ、夕方にマヤさんにお願いして一緒に交換しに行こう。


「あ、これなら大丈夫そうです」

「うんうん、そう見たいね、後スカートの丈はこうやって折っていって膝上丈にするのよ♡」

「あー、みんなそうやってたんですね」


確かに半分以上の女の子達は膝上丈にしてたな、明日やって見て浮いてたらやめよう。


――――――――――


晩御飯の後に少し話がある、という事でリビングで明日からについてのお話。


「暫くは1人で出歩かない事、通学は今まで通り亮と一緒にしてね、学校内だと常に一緒って訳にも行かないと思うからしょうがないけど、今は女の子だ、という事は男の人に対しても女の人に対しても忘れないようにしてね♡」

「昨日教えた事も忘れないようにしてね!」

「トイレは多分しばらくは職員用のトイレ、着替えは空き教室かどこか別の場所になると思うわ、着替えは亮が付き添った方が安全だと思うんだけどね♡」


いやいや逆に貞操の危機になりそうですけど、と思ったけど親の前で言えるはずもなく、ハハハ…と苦笑い。


「これは脅す訳じゃないんだけど、学校は人が多いから色々な考えの人がいて、塁ちゃんに対して直接的じゃなくても心無い事を言ったり行動する人が必ずいるわ、でもね、塁ちゃんには亮がいるし、奈江や私達がいる、必ず支えるし頼って欲しいの♡」

「そうだ、何かあったら必ず呼んでくれ、出来るだけ近くにいるようにはするから」

「お兄ちゃんモテるから女子から嫉妬の対象にされちゃうかもね、私は妹だったからそこまででも無かったけど、結構キツイかも」

「他にはそうねー、今まで友達じゃなかった男子が近づいてきたらそれはしっかり警戒しないとダメよ♡」

「亮と恋人どうしになってくれれば解決なんだけど、こればっかりは塁ちゃんの気持ち次第だから♡」

「ええ、はい…」

「とは言ってもいきなり万全に対処できる人はいないから、まずはいつも通りにしていてもいいのよ、言葉で聞いていてもある程度体験しないと分からない事ってあるものね♡」


この人達は色々考えて経験でもって明日からの学校生活のアドバイスをしてくれている、男子や女子にも気をつけろと言われても正直まだ何に気を付けていいか分からない状態だけど、それは伝わってくる。

だからちゃんと答えなければ。


「分かりました、皆さんにはきっとご迷惑を掛けてしまうし間違った行動もしてしまうかも知れません、なので頼りにさせて下さい!」


明日から学校だ

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