異世界らびっと!

飛鳥部あかり

第一話 ウサギと入れ替わったついでに転生しちゃいました

知らない森林の中で私は目が覚めた。


ここ、どこ?

体中がしびれるように痛い……。


……もしかして私、誘拐されちゃった!?

まあ、世の中には物好きもいるし……でもなんで私!?


静かな川の流れる音がする。

私は呼び寄せられているように近くの水面を覗き込んだ。


「ええええええええ!!!!???」


水面に映った自分の姿に私は思わず声を上げる。



白いもふもふした体。赤い目。長い耳。

 


私、りりはどこにでもいる中学生の 

     

は  ず  だ  っ  た


学校帰りに迷子のウサギを触っていたら、急に体中が痛くなって、意識がなくなり…気が付いたら変な森林の中にいて、


私 が ウ サ ギ に な っ て い た … 。(というか喋れるし…)


現状を理解できないまま私は短い足でひらけた場所を目指した。(結構速く走れるから楽かも……!)

そして一応助けを求めてみる。


「だれかああああ!!!いませんかあああ!!!???」


演劇部だから肺活量には自信があるけど、ウサギの肺ってちっちゃい……!!

喉が痛くなってくる……。あと、私の声とちょっと違う……。


私の声が聞こえたのか、4人組の中の一人の女性が話しかけてきた。

「あなた、迷子のウサギちゃん?」

「あ、はい…?」

私は消えそうな声で答える。(ウサギがしゃべっても違和感ないのかな?)

……にしてもこの人の格好派手だな…。

コスプレイベントとかって近くにあったっけ?



「ウサギちゃん、急で申し訳ないけどアタシたちのパーティーに入ってくれる?」



え…パーティーって勇者とか戦士とかいる、ファンタジー系の!?


もしかして、ここって異世界…だったりする?


ウサギに何かしらの力があって私が転生しちゃった系…とか!?


もしかしてさっき触っていたウサギと入れ替わっちゃた…とか!?



好奇心でワクワクしながら頷いた。勇者とか魔法使いとか小説の世界の物でしかないと思っていたからまるで夢のようだ。


「ありがとう、ウサギちゃん。最初に私たちの紹介をしましょうか。アタシはエデル。女戦士よ。」

エデルは重そうな鎧を身にまとって、強そうだ。それにかっこいい。あれ……でも戦うための剣が見当たらない……しまってるのかな?


「ほら、あなたたちも自己紹介しなさい。」

エデルの声に他の3人が頷いて、私を向いて言った。


「僕はマルク。勇者だよ。」

次に5歳くらいの少年が言った。え…勇者ってこんな子供なの?一応なんかぶかぶかのマントみたいなのしているけど……正直がっかり。


「俺はリッヒ。ヒーラーだ。」

年は30代くらい?……腕は丸太のように太くごつい体でヒーラー…。イメージと全然違う…。絶対肉体で戦った方が強いよね?腰に小さい救急箱を持っているし…。


「私はラルド。魔法使いだ。」

ラルドは細身の白衣を着た男性でヤギの角が生えている。少し特徴的だけど一番しっくりくるかな?でもローブじゃないんだ…。そこは残念。


すっごい疑問に思うんだけど「勇者」「女戦士」「魔法使い」のながれで「僧侶」じゃなくて「ヒーラー」なんだろう……?

自由に選べる系?


「さあ、ウサギちゃん。あなたの名前は?」

「え…。りりです。」

「リリね。わかったわ。これからよろしくね。」

「よろしくお願いします……ところであなた達の目的って何?」



「魔王、ザイートを倒すことよ。」



おお…!王道のファンタジー世界みたい!戻れるまで満喫しちゃおっかな?


「魔王ってなんか悪いことしたんですか?」


「……。…?」

「?」

「え?」

「……?わからん。」


えええ……魔王を倒す必要なくない?魔王がかわいそう……。


「まあ、とにかく王様に、魔王を倒したら金くれるって言われたから倒すのよっ!」


嗚呼。お金目的か…。

やっぱり現実って小説とは違うんだ……。


「リリ。ウサギのあなたにはわからないかもしれないけれど、ヒトは金が絡むと強くなれるのよ。」


いや、私も人間だったからその気持ちはわかるけど……。お金欲しいけど……。


小説の世界では国の人を守るために…!みたいな感じだったから想像と違って悲しい…。魔王だって何もしていないのに……。


「さて、リリも仲間になってくれたからこれで百人力よ!!さあ、魔王のもとへいざしゅっぱーつ!!」


私には、なにもできませんって!!!

というか、それって勇者のセリフじゃないの?

マルクがすごく羨ましそうな顔でエデルを見ている。


……マルクかわいそう……。




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