時の雫 (ときのしずく)~偽りの神
銀の筆
第1話 日常からの離脱
西暦2027年、28歳になった銀太郎は5年間務めた会社を辞め、今はバイトを掛け持ちして一人暮らしをしていた。
両親と妹は、10年前に交通事故で亡くし、天涯孤独で目的もなくただ虚しく過ごしていた。
そんなある日、TVを見ていると突然『ガクッ!』っと
目の前のTVの画像に縦線が入り、右側の風景がズレ下がった。
それはTV画面だけではなく周りの風景もズレて、まるでTVの画面が壊れたように―――
つまり、目がおかしいのだ!
しかも、そのずれた画面は3Dメガネを着けずに見た3D用の画像の様に青と赤色がずれて二重に見えていた。痛みはなかったが、次の日、目が覚めても周りの風景は変わっていなかった。
これは本当に目が壊れたかもしれないと思い、病院へ走った。
眼科の診察室の奥からでてきたのは、女医にしておくにはもったいないくらいの美人だった。30歳くらいで髪は茶髪というよりは、金髪に近く長いストレートで、毛先は不揃いに梳いてあり軽く透明感を与えていた。派手な柄物のワンピースの上に白衣を羽織っていて、怪しい微笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「どうなされましたか」
女医は銀太郎の目を見ながら言った。
銀太郎は、症状をその女医に伝え、目の検査を受けまた診察室へ戻った。
「疲れているみたいですね。心配要りませんよ、目の疲れを取るため一時間ほど隣の部屋で休んで行って下さい。」
と言い、その女医は一番右側にある窓側のベットに銀太郎を導き、こちらで少し横になっていってくださいと言った。
診察室で目を閉じて横になっているとき、突然不思議な感覚が身体中を駆け巡った。
(なんだこれは?)
(周りの風景が止まって見える!)
(というより、すごくゆっくりと動いているように見える―――どういうことだ!)
銀太郎は自分自身を見つめ直し、その感覚を探り始めた。すると、彼は自分が数倍のスピードで動けることを発見した。
(こんなことってあるんだ!)
銀太郎は驚きを隠せなかった。自分が超能力者だったとは、全く気づかなかったのだ。
しかし、この能力を知った時、自分の人生が大きく変わっていくことを銀太郎はまだ知らなかった。
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