美少女たちを【部屋干し】したらどうなる? 〜異世界帰りで疲れた俺は迫ってくる美少女たちを全力で拒絶する〜

エリザベス

『ギャル、魔王、姫様、全員部屋干しにしてやった』編

第1話 ギャルを部屋干ししてみた

「ねえ、そろそろ降ろしてよ……」

「洗濯物は喋らない」

「あたしは洗濯物じゃないよ……」

「濡れたから、乾くまでこのままだ」

「このままだとさらに濡れるよ……」

「……ッ!!」


 おっと、いけない。

 心を平穏に保たねば。


 ギャルはほんとにエロい生き物である。

 俺の部屋に入るなり、いきなり下着姿になって、『パンツ、濡れちゃった、てへっ』って言ってきたもんだ。


 だから、部屋干しして、乾くまで待つことにした。


「てか、これってほんとなんなのよ」

「なにがだ」

「なんでなにもないのに、あたし両手を吊るされてるの?」

「あ、それは俺が異世界に行ったときに貰った【空間操作】というスキルだから」

「さりげなくすごいこと言ってない!?」

「使い慣れたから、今更特になんとも思わないんだよねぇ」

「へー、慣れるんだー」


 異世界で何年も勇者やってたら、そりゃ慣れるさ。

 なに普通なことを言ってるんだ? はなさきさん。


 君は味噌汁に感想も感慨も抱くのかな。

 ずるると飲み干して、飲んだことすら覚えてないだろうよ。


「で、あたしの告白の返事はどうなのよ……」

「乾いてから話す」

「だから吊るされてたらもっと濡れるってば!!」

「変態にあげる返事はノーだ」

「あっ、やっぱ今答えなくていいッ!!」


 はぁ、この調子だと、降ろしたらまたさっきと同じ展開になるな……。


  ◇


さくらひらくんのことが好き!! 付き合って!!」

「断る」

「とりあえず部屋まで案内して!!」

「断る」

「お邪魔しますぅー」

「おい、勝手に上がるな!!」


 花ヶ前さんがいきなり俺の家に押しかけてきたと思ったら、告白された。

 だから、断った。


 勇者をやっていたから、疲れた。

 もう魔王も美少女も見たくない。


 戦いのない穏やかな日々だけが願いだ。

 心の平穏が世界平和より大事。


 美少女に迫られるようなドキドキするシチュエーションはもうまっぴらごめんだ。

 だから、いきなりスカートを脱いで、シミの付いてる下着を見せられたら、条件反射のように【空間操作】を発動させて、洗濯物のように花ヶ前さんを部屋干ししてやった。


 これなら頭を冷やせるだろう。


  ◇


「あたしが言うのもなんだけど、美少女だよ? あたし」

「知ってる」

「スタイルもめっちゃくちゃいいよ?」

「知ってる」

「処女だよ?」

「しっ……それは知らない」

「あら、動揺したの? ちょっ、いきなり高度上げないでよ!!」

 

 君こそ自画自賛の高度を上げないてほしい。


 男子高校生によろしくない発言をしたから、花ヶ前さんの位置を上げてやった。

 下着姿のイエス・キリストの誕生である。


 ちなみに、異世界ではイエス・キリストのネタは通じなかった……。


「美少女より処女のがいいの!?」

「それ以上言うとまじで【空間操作】で帰ってもらうよ?」

「桜ヶ平くんってドSだとは思わなかったなぁー」

「俺も花ヶ前さんがドMとは思ってなかった」

「じゃ、おあいこということで!!」

「なんのおあいこだよ」


 声は荒げない。

 大声は出さない。

 終始平坦な発音を心がける。


『うわはは、俺についてこい!!』


 みたいなノリは異世界に転移した一年目でもう飽きた。

 というか、叫びすぎて喉がやられた。


 一年もハイテンションを保てた当時の俺に、心の中で合掌しておく。

 もう、お前はいない。いてはならない。


 疲れた……。


 ほんとにもうモンスターを討伐したり、人々を救う日々に追われたくない。

 何事のない学園生活が一番だ。


 転移する前に鬱陶しいと思っていた授業も、今は最高に愛しい。

 存在を無視していた宿題も、今は平穏な日常を感じられる恋人のように思えた。


 だから、恋人はいらない。


 痴話喧嘩する気力がない。

 というか、連絡を返すのもめんどくさい。


 花ヶ前さんが彼女になったら、既読スルーでも未読スルーでもしようものなら、間違いなくRINEでスタ爆を喰らう羽目になるだろう。

 それは魔王の【地獄より来たる永遠の業火エターナル・ファイアー】よりダメージがデカそう。


 そんな魔王も【地獄より来たる永遠の業火エターナル・ファイアー】を出し切る前に【空間操作】で空間ごと消してやった。

 今ごろどこかの次元の狭間で泣いてるだろう。


 世界はそれで救われたが、俺の心は憔悴しょうすいしきった。

 なんで異世界に行った当初、ちょっと、いや、すごく楽しいと思ったのだろう。


 もう女の子と付き合うより、漫画を読んでいたい。

 仰向けで手首が痺れたから、今はうつ伏せで漫画を組み敷いてる。


 漫画はいいぞ?

 組み敷いただけでは叫ばない。


 モンスターは攻撃する度に耳をつんざくような声量で雄叫おたけびをするから嫌いだ。

 だから魔王は【地獄より来たる……エターナル・……】のところで跳んでもらった。


 魔王の必殺技のフルネームを知っているのは、『私は【地獄より来たる永遠の業火エターナル・ファイアー】とともに帰ってくるからぁ!!』と彼女が負け惜しみを叫んでいたからだ。


 だから、美少女も魔王も見たくない。

 部屋干しにするのがちょうどいいんだ。


 俺のスキル―――【空間操作】はこのために授けられたのだ。


「ちょッ!! 黙ってないでなんか言ってよ!!」

「はぁ、疲れた……」

「待って、パンツ脱げる!!」


 どうやら、美少女を部屋干ししたら下着が脱げるらしい。

 これに懲りたらもう俺に関わらないことだ……。


 なぜなら、俺はもう異世界を救うのに……疲れた……。


―――――――――――――――――――――

創作意欲を発散するために書いてみました!!

これは決して【キュン死】続出、掛け合いが魅力的すぎると評判の『電車の中で肩を貸したら、『人形姫』と添い寝するようになりました 〜いつも無表情の学校一の美少女は俺だけにひまわりのような笑顔を向けてくる〜』

https://kakuyomu.jp/works/16817330653526538659

ムッツリドスケベお姫様が可愛すぎると評判の『俺の部屋のベランダはどうやら異世界の姫様の寝室に繋がっているらしい 〜えっちでヤンデレな姫様は俺を離してはくれない〜』

https://kakuyomu.jp/works/16817330655898411735

の執筆の気分転換じゃないですよ?笑


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『人形姫』と『ベランダ姫』の執筆の合間に更新しますから!

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