お笑い言語論

今回は以前さまぁ~ずの解説に於いて触れた、お笑いの『言語』についてまとめてみたいと思う。


お笑いの言語とは、主に『方言』や『アクセント』などにより構成されており、その種類は様々である。


では、その一例を挙げてみよう。


【関西弁】


明石家さんま 島田紳助 笑福亭鶴瓶 ダウンタウン 板尾創路 今田耕司 東野幸治 ナインティナイン 雨上がり決死隊など


【標準語】


タモリ ビートたけし 志村けん とんねるず ウッチャンナンチャン 関根勤 さまぁ~ず バナナマン おぎやはぎなど


【博多弁】


博多華丸大吉など


【岡山弁】


千鳥など


【栃木弁】


U字工事など


【茨城弁】


カミナリなど


とても全ては書ききれないが、多種多様なものが存在することはお分かり頂けたと思う。


お笑い言語は大体はその芸人の出身地によるものが多いが、田舎者(かっぺ)と見られることを嫌い、出身地とは違う言語を使う芸人も多数存在する。


数を見ても分かる通り、この中に於いてお笑い界の二大勢力と言えるのが、『関西弁』と『標準語』である。


関西弁は「なんでやねん!!」や「アホか!!」など、とてもテンポとキレが良いのが特徴であり、お笑いをやるにはナンバーワンと言っても過言ではないほど、非常に優れたお笑い言語だ。


日常から笑いを推奨する土壌のある、所謂関西のノリから生まれた関西弁は、お笑いに非常に適した言語であり、正にお笑いに使うために生まれた言語であると言える。


視聴者はさんまや紳助、ダウンタウンなどの関西弁の笑いに慣れきっているため、芸人イコール関西弁のような認識すらあり、その点に於いても非常に受け入れられやすい言語だ。


以前放送室で松本が語っていたが、これほど関西弁が市民権を得ている現在の芸能界と違い、昔は本当に関西弁の芸人というものを下に見る風潮があったらしい。


芸人の中には関西出身でもないのに大した意味もなく関西弁を使う者も多く、それらは全て先人達の努力によって切り開かれた結果なのだということを、よくよく認識しておく必要があるだろう。


東京でお笑いをやるにあたり、関西弁の次に無難と言えるのが『標準語』である。


基本的には芸人は東京を目指してやって来るため、広く誰からも理解され市民権を得ている標準語は、関西圏以外の芸人にとっては非常にベターな選択と言える。


関西出身でもないのに関西弁を使うのはかなりイタいやつと思われるため、地方出身だが標準語を使う芸人は多い。


例えば加藤浩次やタカアンドトシなどは北海道出身、バカリズムや小峠などは福岡出身だが標準語を使っている(小峠は一時期関西弁を使っていたこともあった)。


タモリや内村などの大物も九州出身で標準語を使っているのは、広く知られているところだろう。


標準語は関西弁に比べテンポやキレが劣り、アクセントがないためけして笑いに適しているとは言い難い言語である。


そのため、関西弁より本人のセンスや力量が問われる言語であると言える。


関西弁が何か言われたらとりあえず「なんでやねん!!」とツッコんでおけばいいのに対し、語呂がいいツッコミのない標準語はそうはいかない。「なんでだよ!!」では語呂がイマイチでツッコミとしては弱く、広くどんな状況でも使えるとは言い難い。


そのため、例えばさまぁ~ずやハリセンボンなどは標準語にアレンジを加え、「〇〇かよ!!」や「〇〇じゃねーよ!!」などの力強い言い切り型のツッコミを使っている。


ボケに関しては関西弁も標準語もセンスが問われるのは変わらないが、標準語のツッコミはこのように関西弁に比べ笑いを取るのに一工夫いるのが難しいところだ。


その他の言語に関してはまだまだ市民権を得ているとまでは言いづらく、研究と開拓の余地があると言えるだろう。


使う言語により、同じことを言ってもウケ方がまるで違うのが、お笑いの非常にデリケートな部分であり、難しいところだ。


お笑いをやるにあたり、どの『お笑い言語』を選択するかは、今後の芸人人生を左右するほどの重要な選択である。


そのまま二大勢力におもねるか、それとも新しい言語を開拓し、お笑い界に殴り込みをかけるか。


前者は無難、後者は一歩間違うと大失敗の可能性もあるが、唯一無二の個性として、成功した時の見返りも大きいと言える。


貴方が選択するのは、どの言語だろうか。

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