第33話 親友と道具屋を見て回る

道具屋は色々な物があった。

・キックボード ・冷蔵庫らしき物 ・コンロ ・井戸から水を汲むポンプ ・ランプ等、

その他にも様々な商品があった。幸田こうださんに聞くと、大半がリンデンの発明王、吉井勝喜よしいかつきさん作との事。よく見ると、日本語で「吉井公房」と焼印がある。ただ、これらの商品に共通していえる事は、人力を除き、その場で魔力を使わないと使用できないとの事。なので、自分の義足の様に、魔石を電池替わりに使うアリーサの技術に興味がもったらしい。ただ、魔石を魔力に変換する機関、自分の体に埋め込まれている石の様な物を再現する事に苦労しそうだと。


「恐らく、佐藤さとうさんの体に入ってる石って、シュミール人の魔法を発生する臓器を素材に使ってると思うんだけど。」


・・・えっ、人の臓器が身体に入っている?


「でもすごいよね、身体に拒否反応が出ず、そのまま臓器の一部として使用出来てるなんて。アリーサさん、日本の医療技術も完全に自分より上かもねぇ。」


・・・えっ、アリーサの事を知っている?


自分が複雑な顔をしている事にようやく気付いた幸田こうださん。少し考えてから、自分に話す。

「すみません、また余計な事をしゃべっている様で。アリーサさんの事について、申し訳ありませんが、今日の夜にでもお話しを。それよりも、佐藤さとうさん、聞かされてない?石の素材について。」

以前、アリーサに聞いたら答えてくれなかったのは、多分・・・日本人の倫理観を気にしていたんだろうな。他人の人体から抜いた臓器を、身体に入れていたから。正直、気にならないと言えば嘘になる、でもここは弱肉強食の殺し、殺されの世界、そんなのは些細な事ではないのか。それにしても、この世界に考え方が染まってきたな。

「アリーサさん、佐藤さとうさんが気にすると思って言わなかったんだね。でも、私個人の考えとしては、正直、殺し合う世界で誰かを守りたいとなったら、何でも利用するよ。家族を守る為なら、私もその手術受けたいよ。」

幸田こうださんの顔を見た。この人は、自分と同じ考えを持っていると思った。何故か、握手をしたくなり、手を差し出した。幸田こうださんは、差し出されたその手を握る。おっさんになって、この世界に転移し、友達・仲間と言える人が増えている気がする。

「自分もそう思います!」


なぜか、帰りのキックボード二人乗りも苦ではなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る