第23話 相手の実力は?

三人が落ち着くのを待って、アリーサが切り出す。

「今、香織かおりの義手を作っていてね、それで、公彦きみひこと同じ様に魔法を使える手術も行う予定。」

健一けんいち君は、決した様子でアリーサに話す。

「アリーサさん、すみませんが、自分も魔法を使える様にしてもらえませんか?香織かおりを守る力を!」

「・・・分かったわ、もうすぐ、義手が出来るから、その後、二人の手術を行いましょう。それまで、二人共、体を休めなさい。」

二日後、義手が完成し、手術をする事が決まった。


香織かおりちゃんの義手を見ると、自分とは違う本物の腕の様だ。アリーサからの説明によると、元々の腕を素材にしており、普通の義手より動作も良いとの事。自分の足の場合は、傷口が焼けており、この義肢の方法は使えなかったそうだ。最新の義肢の技術を使用しており、元々は洋介ようすけの兄のしんの右足に施した事から始まった。ちなみに魔法が使える様になると、自分の義足の様に動きが良くなるとの事。


香織かおりちゃんの義手の装着が完了後、魔法が使える様になる手術を二人に行う。体内に入れる石は、麻酔を使うので痛みはないが、魔法陣を焼き付ける工程に関して、意識が繋がっていないといけないらしく、麻酔は使えないとの事だ。二人にはその事もしっかり伝え、我慢してもらう。


そういえば、前に魔力が使える様になる石は、どういう物?とアリーサに聞いた事がある。でも、答えてくれなかった。製造方法は秘密なのか?それとも・・・素材自体、人に言いたくないのか?


手術も無事に終わり、四日後には、この家から引き上げ、軍に向かう予定だ。軍に行けば、妻に会えるのか?ちなみに、道中は3日ほどかかるとの事。軍に行くまでの期間、訓練をしながら過ごす。この世界は、殺せなければ、殺される。強くならなければならない。


訓練をしながら、妻の事を思い出していた。


5年前、朝起きたら、妻は亡くなった。突然死だった。以前から妻は医者が嫌いで体調が悪くても行かなかった。もっと強引にでも、医者に連れていければと、今も後悔している。よく妻が言っていたのは「自分が死んだら、そのまま燃やして。死因なんて調べなくていいから。」と。なぜ、あんなに医者を避けていたのか。おそらく話しのあった、妻がシュミール人というのが関係しているのではないかと思われる。アリーサに聞いたが、日本人とシュミール人では、ほぼ同じだが、一部分だけ内部構造が違うそうだ。

魔法を使える臓器がシュミール人の体内にはあるとの事。今回の手術では、疑似的にその構造を再現しているという。


幸樹こうきは、村で見つけたビールを飲みながら、訓練をしている公彦きみひこに近づいてくる。手には3本のビール缶を持っていた。

「お前も飲むか?」

「ああ」

久しぶりにビールを飲むな。やはり旨い。その間に幸樹こうきはもう一缶開ける。

幸樹こうき、俺はシュミール人を殺せると思うか?」

幸樹こうきはビールをあおる。

「お前が死に物狂いで努力を続けられるなら、普通の騎士ぐらいなら何とかなるとは思う。それにな、アリーサが施してくれた魔力整形手術なら、魔石さえ用意できれば、相当量の魔法を使えるから、こっちが有利なのもある。ただ・・・上位騎士は別次元だ。」

幸樹こうきのビールを持つ手が震えている。

「シュミール人には、武家の棟梁と呼ばれる一族がいてな、そいつらはフォージ家という。現当主とその嫡男は、戦いの技量もすげえが、頭も相当切れる。あいつらが出てきたら、他種族連合軍でも、まともに戦えば勝ち目はない。だから、ゲリラ戦術で何とか戦っているというのが現状だ。」

喉が渇いている感覚になり、一気にビールをあおる。とてもじゃないが、目標が遠すぎて、シラフでは話しを聞けないと思った。

「そのフォージ家だがな、三男がまたやべえ奴だ。頭のネジが何本もねぇ様な馬鹿だけど、戦いだけなら、フォージ家で一らしい。シュミール人からは(荒ぶる武神)とも言われている。俺らは(脳のない狂犬)と呼んでるけどよ。ただ、そんな馬鹿も親父がたずなを握って管理していて、言う事を聞くからな。とてもじゃないが、あの組み合わせは、やばい。」

「・・・」

「狂犬の名前は、フォージ=ガイウス。・・・公彦きみひこ、お前の足を切った奴だ」

下卑げひた顔が思い浮かぶ。

「あいつか!」

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