第十八話 ここが三人の魔法少女の終点

「プレイエレメント!」


 七色の光が。巨大なニワトリの形をしたワクナーイを吹き飛ばした。


『グギィィ!!!』


 耳をつんざくような悲鳴を上げて、ワクナーイは吹き飛んだ。


「マジカルストライク!」


「ナイトインパクト!」


 白と黒の二色が重なってそれがワクナーイの体を打ち抜いた。


『ギャァアアッ!!!』


 ワクナーイが吹き飛ばされて広場の地面を転がる。


「く、結構しぶといな!」


「三人同時じゃないと無理かも……」


 横に並んだ三人は、立ち上がって雄たけびを上げるワクナーイにたじろいだ。


「よし、ならば一気に行きますよ……!」




ユウマが笛を構えたその瞬間であった。広場に続いている道から何者かが歩いてくる。大きな体していた。シルエットだけでも体が分厚いことがわかる。左腕でピンク色の何かが光った。


「レイジ……!」


 誰よりも早くナイトが叫んだ。


 たとえ遠くからであろうとも幼い頃からの付き合いがあるナイトには、いや、サヨにはそれがだれか分かった。


 黒い髪を長く伸ばし、熱くなり始めたこの時期にパーカーに長ズボンで体を覆い切ったその姿。


「レイジくん??」


「レイジ?」


 カミリアとプレイヤーもナイトに続いて気が付いた。


『!! ギギ?』


 三人だけではない、ワクナーイすらもその姿に注視した。


 左腕だけをまくり上げたレイジは三人とワクナーイを順番に見てからゆっくりと腕を空に掲げる。


「……マジカルチェンジッ!!!」


 ピンク色のブレスレットが右手で叩かれて辺りに光がほとばしった。暖かい風が辺りに吹いて、うさぎや猫をかたどったような光がレイジの体を覆い隠した。


「ネオン……?」


 カミリアが震えた声で呟いた。桃色のスカートをまとったその少女は、魔法少女ネオンそのものだ。レイジとはイメージが真逆の姿、そして何よりもアニメに見る魔法少女そのもの、正義のヒロインそのものの姿に三人は息をのんだ。


「やっぱり、お前が……」


『ギュシュイィイイイイイ!!』


 絞ったようなナイトの声は、ワクナーイの叫びにかき消された。


 巨大な爪を地面にかき鳴らしたワクナーイは真っ赤な目でネオンをにらんだ。


「愛の力で昇りなさい!」


 光の中から取り出された、ハートを模したピンク色の杖がワクナーイに向けられた。


 そこから放出されたビームはワクナーイに突き刺さってエネルギーの塊はワクナーイを消滅させてこの世から消滅させる。


 圧倒的だ。生唾を飲み込んで三人は圧巻されたままネオンを見つめた。


「言ったはず。次に出てきたら容赦はしないと。覚悟はできてるんだよね?」


「レイジ……なんだよな。ど、どうしてだよ! どうして!」


「私はネオンだ! それに質問してるのは私!」


 荒々しく叫ぶ姿がナイトの記憶の中の怒ったレイジと重なる。


 しかし、その声は、見た目は、親友のものと全く違う。


「俺達は……戦う。それは、この街のためだ」


「……そう」


「今度は、俺の番だ。聞きたいことはいくつもある。何だよその姿、いったいお前どうしちまったんだ。らしくないぞ……!」


「これが本当の私だ。解らなかった? 幼馴染なのに。私の苦しみ、分かんなかった?」


 その言葉が、ストレートに突き刺さってナイトはうつむいた。


「誰かを救ったりとか。向いてないんじゃないの?」


「ッ……そ、それは」


「そんな言い方ないでしょ!」


「そうです! 彼は……!」


「あなたたちも同じ。力がない。だから誰も守れてない」


 ネオンの言葉が、恐ろしい程に突き刺さる。


「あの程度に苦戦するようじゃ貴方たちにこれからなんてない。いっその事。私が再起不能にしてあげる」


 これから貴方たちを倒す。そんな宣言のような言葉に二人は身構えた。


「!?」「なに??」


 カミリアが吹き飛ばされた。あまりに一瞬の出来事に対応する暇もなく、カミリアが壁にたたきつけられる。


「一人目」


 ネオンの声が聞こえてきて、二人はとっさに退避した。


「ぅ!」


 呻くような声が聞こえた。ナイトは信じられないものを見た。あっさりと倒されて地面を転がるプレイヤーがカミリアの横に叩きつけられる。


「二人目」


 ネオンの瞳が、ナイトに突き刺さった。


「!」


 うねるような右ストレートが飛んでくる。それを何とか防御できたのはナイトの戦闘経験か、それともサヨとして彼の動きを理解していたからか。


 鋭い攻撃にナイトは防戦一方で追い込まれる。


 弾丸のように激しいパンチが何度もナイトを打った。


「ここ!」


 一瞬であった。まるで針に糸を通すように無知のような蹴りがナイトにお腹に突き刺さった。


「ぐぅ……!!」


 口から空気の塊を吐き出してナイトは何度も地面にたたきつけられて壁に突き刺さった。


「強い……」


「う……」


「まずいですね……」


 フラフラになりながら体を起こそうとして三人はネオンを睨む。


「これで終わりにしてあげるわ。ちょっと痛いけど」


 ピンク色の杖を掲げてネオンはスカートをふわっとさせて、最後に杖を三人い向けた。


 金属を引き裂くような音がして、光がハートの部分に集まっていく。


 あれを受ければただでは済まないことが肌で分かった。しかし、うまく体が動かずに三人は息を飲み込んだ。


「さようなら」


「何でだよ……レイジ!」


 ナイトはサヨとして叫んだ。しかしソレは音に塗りつぶされて届かない。


「ミラクルドーム!」


 ゴウッと言う大きな音が響いた。光の槍が三人に飛んでくる。三人は目を閉じて終わりを待った。








 破滅の光が三人に向かって飛んでくる。ソレは、三人を射殺す


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