第十六話 人よその魔法少女をネオンと呼べ

 凄まじい銃声が響いて。それに続いて悲鳴がこだました。


 黒いドレスを着て、黒い機関銃を掲げた少年、魔法少女アーミーが声高々に笑った。


『逃げまどえカスども!!』


 アーミーが高笑いを挙げながら叫ぶ。まるで悪魔のようにアーミーが市民を襲う。


「マジカルストライク!」


 ゴウ! と空気を引き裂いて、桃色の閃光が飛んだ。


『きたか!』


 バシュッと現れた黒い何かが閃光を防いでアーミーはその向こうで笑っていた。


「皆さん! 早く離れてください!」


「ココは俺たちに任せてくれ!」


 先に到着し、着陸したカミリアに続いてプレイヤーとナイトが叫んだ。


 ぞろぞろと逃げていく気配を背中でしっかり確認して三人はそれぞれ武器を構えた。


『同じ魔法少女同士の戦いと行こうじゃないか!』


「俺達とお前たちは同じでも何でもない!」


「そうだ! 魔法少女型ワクナーイと僕を一緒にするな!」


 ナイトとカミリアは二人続けて反論した。アーミーは薄気味悪い笑みを浮かべてケタケタと笑うだけで何もしない.


「行くぞ!」


 ナイトの合図を皮切りに三人は一斉に駆け出す。先陣を切るナイトが銃弾をはじきながら。後ろから二人が炎と光線を飛ばす。


 爆裂がアーミーを中心に発生するものの、爆発で生じた煙の中から銃弾がナイトに向かって真っ直ぐに飛んでいく。


「ナイトインパクト!」


 藍色の光を拳にまとわせて、銃弾を吹き飛ばしながらアーミーに向かっていく。


「!」


 バシッ。と、拳はアーミーに受け止められて、藍色の光、エネルギーが霧散して消え失せた。


『雑魚が!』


「あぐ!?」


「ナイト!」


 ナイトの体が持ち上げられて投げられた。小柄な体がたたきつけられかけて、ナイトは何とか壁に足をつけた。


「大丈夫だ! 警戒を怠るな!」


 その一言で、カミリアとプレイヤーが同時に向き直った。煙が晴れて、無傷のアーミーがニヤリと笑う。


『よう、無駄な攻撃お疲れ様、ハハハ。笑えるなぁ。雑魚が!』


 腹を抱えて笑うアーミーは真っ赤な瞳をギラギラさせて首を大げさに傾けて三人の顔を見回した。


(明らかに強くなってるな……)


「体ばらばらにされても同じことが言えるかな?」


 生唾を飲み込みながらナイトは剣を向けた。カミリアはレイピアを向けて、プレイヤーは笛に光をまとわせて剣のようにそれを構えた。


 今度は合図もなかった。それでも三人は同時に動いて先ずは両隣からカミリアとプレイヤーが切りかかった。


 しかしレイピアはつかむように受け止められて、プレイヤーは腕をつかまれて動きを止められる。


「はぁぁあああっ!」


 素早く剣が振るわれる。少し遅れてナイトが襲い掛かった。黒い何かが剣をはじく。


「なにくそ!」


 さらに続けて黒い剣が空気を切る。追尾するように何かは剣撃をはじき続ける。


 防御と攻撃その繰り返しは素早くなっていき挙動を変化させた黒いそれがナイトが剣を振るよりも早くナイトの腹を殴って地面に押し倒した。


 数秒にすら満たないほど短い刹那で繰り広げられた出来事とその結果に二人は目を見開いてカミリアはレイピアから手を放して後方にとんだ。


 しかし腕をつかまれたままのプレイヤーはそういうわけにはいかない。


「まずい!」


 アーミーが笑った。その体は突如襲い掛かってきた光に吹き飛ばされてプレイヤーの腕を話した。


 カミリアのマジカルストライクが横からアーミーの体を薙ぎ払ったのだ。離脱したカミリアと助けられたプレイヤーが目をあわせるだけで頷いて着地した。


「いけたか!?」


 呼吸の荒くなったナイトがかけて戻ってくる。三人は近くによって吹き飛ばされた先を注視する。


『……!』


 煙の中でアーミーが体を上げるのが見えた。。


「ナイトインパクト!」


「マジカルストライク!」


「プレイエレメント!」


 三つの光が重なって金色の光がアーミーに襲い掛かる。


『ダークインパクト!』


 声が、帰って来て黒い球体が飛んでくる。


 金色と黒の人知を超えた力がぶつかり合って夜の街に太陽のような光のエネルギーを生み出す。


 バジバジとエネルギーがはじけて爆発が起きた。


「!」「なに!」「そんな!」


 真っ黒な塊が金色の光をぶち抜いて三人にぶつかった。


「「「ッ!!!!」」」


 大きな爆発が響いて、サヨ、ユウマ、ツバキはそれぞれ床や壁にたたきつけられた。


『フハハハハハ! 大したことねぇなぁ!』


 アーミーが大きく手を広げて笑う。ゆっくりと、三人に向かってくる。


「--」


『あ?』


 美しい光がその場に降り注ぎ、三人と一体は同時に顔を上げた。


 ツインテールが風に揺れる。ピンク色の人影は、まさに正義の魔法少女。


「ネオン」


 サヨがフラフラと立ち上がりながらその名を呼んだ。


「この世に闇があるのなら……私が全てを照らして見せる! 魔法少女ネオン!」


 アイドルの踊りのようにフリフリしたポーズを決めたネオンは次に高く飛んで三人の前に飛び降りてアーミーに向かっていく。


『あぁ?』


 あざけるように笑うアーミーをネオンはふわっと飛び上がって蹴り飛ばした。


 凄まじい轟音が響いてアーミーの体が壁につき刺さった。


「ネオンビーム!」


 可愛らしい声が発せられて、それに釣り合わないほど、破壊を具現化したとしか思えないほどの勢いでピンク色の光が飛んだ。


 アーミーのいた場所から煙が上がる。それはアーミーの消滅を意味していた。


「つ……」


「つよい……」


 誰が言ったのか、それとも同時につぶやいたのか。三人は生唾を飲み込み振り向き、今度は三人を標的にしたようなネオンを確認して身構えた。


「他二人はともかく、言ったはず。もうやめろって」


「……出来ない。俺は、俺は守りたいんだよ、この街を」


「できてなかったじゃん! 何も! だったらこれ以上何もしない方がいい」


 鋭い気迫に三人は思わずたじろいだ。


「後ろの二人も同じ……もしも何もできないのにこれからも貴方たちがヒーロー気取りを続けるなら……」




「次は容赦しない」


 鋭く言い放つその語気には恐ろしいほど鋭いものが秘められていた。






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