第81話「価値を決めるのは」
晩ご飯を食べてると、ルシオラからメッセージが届く。
【よければ自分たちの戦いを見てください】
指導できなかったからなぁ。
見守るくらいならべつにいいのかな?
「やまとにすり寄るメスブタの気配がするな」
横からスマホの画面をのぞきこんだクーが辛らつなことを言う。
「そういう言い方はやめろ」
ひどい罵倒だ。
「そうですよ、クー様。やまとのすごさを理解すれば、何とか平伏したいと思うのはニンゲンどもなら当然でしょう」
エリはルシオラたちをかばったように見えて、やはりひどい言い回しの気がする。
「お前らそんなひどい言い方するなら、ついてくるのやめてくれない?」
「やまとを理解するなんて慧眼だな。後輩として認めてやろう」
「そうですね。わたしたちと同格は無理にせよ、メイドくらいにはなれるかもしれません」
けん制したら一瞬で態度を変えた。
相変わらずだけど、言えば効果があるだけマシなんだろう。
中には話がいっさい通じないガチの人外だっているのに、彼女たちは通じるからな。
それにジャターユは外だとしゃべるのは厳しいし。
「まあメイドなんて無理だけどね」
そもそも雇用契約の結び方なんてわかんないよ。
「そうだ。やまとにはわたしがいるのだから不要だ」
とクーはなぜかうれしそうにうなずく。
「わたしたちもいますが」
エリは遠慮なく抗議する。
「そうだ」
ほうっておくとまた小競り合いが発生しそうなので、先回りして止める。
「ふん。やまとが言うのだ。わたしの備品程度の価値は認めてやる」
クーは仕方ないという表情で譲歩したようだ。
「あら、価値を決めるのはやまとでしょう。クー様も従うべきでは?」
「ちっ」
おや、エリがレスバで勝つなんて珍しい──というわけでもないか。
三回に一回は勝ってるかもしれない。
「クーが一番だけど、ほかのメンバーもよろしくな」
「ううう……やまとが言うなら」
何でかクーはちょっといやそうにしながらも同意してくれた。
まさかと思うけど独占欲?
さすがにそれはないかな。
エリたちとも長いこといっしょに暮してきたんだし。
「俺はほかのダンジョンのことを知らないから、もうちょっと勉強したほうがいいかなと思ってはいるんだよ」
「それは必要なのか?」
俺の考えを口にすると、どういうわけかクーはふしぎそうに首をかしげる。
「やまとの好きにすればいいかと。意味があるのかわからないという点で、クー様に賛成ですけど」
あれ、エリもクー側なのか?
だとすると俺のほうがズレてる可能性もある?
もちろん彼女たちはあくまでも人外だということを割り引いて考えなきゃいけないんだけど。
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