第40話「確認してよかったね」
「これからどうしようかな……」
クーが落ち着いたことで、予定について考えをめぐらす。
またどこかのフロアを配信するのが無難なんだけど、どこがいいだろう?
「やまとが映したいフロアでいいのでは?」
クーが提案するけど、そういうフロアがとくにないから迷うんだよね。
なんか要望来てないかなーとスマホをいじっていると、「青月鉱(ブルームーンアルク)」を売って欲しいとメッセージを見つけた。
「『青月鉱(ブルームーンアルク)』かぁ。あれって役に立つのかな?」
夜でもピカピカ明るいから、電気代の節約になるとか?
首をかしげているとクーが口をはさむ。
「売るのはいいけど、すこしだけね。ニンゲンなんかにはすぎたオモチャだから」
「まあそうだろうね」
彼女は俺以外にはいつも辛らつだけど、今回は賛成だ。
青月鉱って鋼鉄よりもずっと頑丈らしい。
クーやエリやファリが俺の希望通りに加工してくれるから、個人で利用するときは何も困ってないけど。
よその人に大量に売ったところで加工が大変だろう。
「ヘタすりゃ、加工にかかるコストが売値より高かったりして」
「人間社会ではそうでしょうね」
ジョークのつもりだったけど、エリが真顔で肯定する。
クーも同感だという顔だった。
「うーん……売るのやめようかな」
そのままだと使いづらい鉱石だもんね。
買った相手が利用できないかもしれない代物を売るのはまずいだろう。
「なぜ? 売ればいい。身のほど知らずには思いしらせるべき」
クーはふしぎそうな顔で容赦ないことを言った。
「それはダメだろう」
彼女はほかの人からの信用なんて気にしたことないだろうから、平気なんだろうね。
『青月鉱(ブルームーンアルク)の加工手段をお持ちですか?』
余計なお世話かもしれないが、メッセージで確認しておく。
ほどなくして返事が届いた。
『はい。自分は戦力30の探索者です。強力な敵に備えてぜひ欲しいのです』
文章を見てふむふむとうなずく。
「加工できるならいいか」
青月鉱(ブルームーンアルク)が必要な強敵ってどんなやつなんだろ?
戦力30がどういう意味なのかわかんないから想像できないや。
「青月鉱ならわざわざ採りにいかなくても、未加工の分がどこかにあったはずだよね」
クーとエリなら記憶しているだろうと振ってみる。
「あれは大きすぎ。やめたほうがいい」
ところがクーに反対されてしまった。
「加工手段があると言っても、サイズが大きいほど大変なのですよ? わたしたちなら平気でしょうけど」
エリも懐疑的であるらしい。
「うーん、ほかの人が加工できる限界がわかんないや……」
下手に取り扱うとトラブルに発展してしまうのでは?
俺が自分で加工した経験があればわかったかもしれないけど、クーとエリが絶対にさせてくれないんだよね。
「そうだ、必要な量を聞けばいいんだ」
どれくらい欲しいですか? とメッセージで送る。
加工できる手段を考慮した答えをくれるはず。
「さすがやまと。かしこい。天才」
クーが目を丸くして拍手してくれる。
「いやいや、褒めすぎだよ」
もっと早くに思いつけばよかったなと反省したいくらいだ。
『えっと10グラムもあれば充分かと思いますが』
困惑がにじんだ返事が来る。
「たったの10グラムか……確認してよかったね」
俺はびっくりしたし安心もした。
「だろうね」
クーもうなずいている。
「家の中にある分はたしか5キロくらいあったはずですからね」
とエリの指摘に冷や汗をかく。
とんでもない不良債権を相手に発生させちゃうところだったかも。
ふー、危なかった。
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