第17話「くつろぎタイム」

 クーがつくってくれた晩ご飯を食べたけど、反響は見なかった。


「確認しないの?」


 ふしぎそうな顔をしたクーに聞かれてしまう。


「うーん、いますぐじゃなくてもいいって思ってね」


 隠しごとできる相手じゃないので正直に答える。


「投稿したあとすぐにチェックしはじめると一喜一憂してしまって、時間の消費が激しくなりそうなんだ」


 俺は気になりだすとけっこう沼にハマりそうだから。


「そうね。いい心がけだと思う」


 クーはニコッと笑って支持してくれる。

 

「わたしと過ごす時間が増えるわけだから」


「ああ、そういう」


 機嫌がよくなった理由に納得した。

 クーってかまってほしがる性格なんだよね。


「クモなのに子犬みたいだな」


「むー」


 不満たっぷりの感情を乗せた視線で抗議してきた。

 

「かわいいぞ」


 とほめると、


「ご、ごまかされないから」


 動揺して目をそらす。

 ちょろいと言ったらまた機嫌が悪くなる。


 思うだけにしておこう。

 部屋でクーに膝枕してもらって、スマホで動画をながめる。


「これがほかのモノなのね」


 クーもいっしょにダンジョンを見た。


「クーからすればきっと弱いんだろうね」


 ウチのモンスターたちも弱いあつかいするからなぁ。


「もちろん。わたしより強い者なんていない」


 クーは得意げに胸を張る。

 この動画に映ってるモンスターと、ウチにいる連中とどっちが強いのか。


 俺にはわかんないや。


「クーからすれば誤差なのかな?」


「ああ、ニンゲンの言葉を使うなら、五十歩百歩とやらになるかしら」


 とクーは答える。

 やっぱりそうなんだ。

 

「わたしがいるかぎり安心よ」


 とクーはささやく。


「そうだろうな」


「そうよ。わたしだけを見て」


 まるでフィクションで見るヤンデレみたいなことを言う。


「そういうわけにもいかないよ」


 俺は笑って受け流す。

 彼女がその気になればもっと危険な目にあっている。


 いまの状況こそ彼女が本気じゃないなによりの証拠だ。

  

「そうですよ」


 とエリが部屋に入ってきて口をだす。


「やまとが豊かな生涯を送るためには、あなた様だけに縛られてはいけません」


 彼女が言うとクーと火花が散ったように見える。

 

「くつろぎタイムなのにケンカするなら、部屋から出て行ってくれよ?」


 俺がふたりにけん制を入れると、


「ごめんなさい」


 ふたりは同時に謝った。

 険悪な空気は消えてまったりとした空気が戻ってくる。


「三人でなんかゲームでもやる?」


 許したサインとして提案するとふたりは乗って来た。


「いいですね。トランプはどうですか?」


 とエリが応じる。


「七ならべなら負けない」


 クーも好戦的な笑みを浮かべたので話は決まりだ。

 三人でやってみた結果、クーが最下位になる。


「な、なぜ……」


 一番わかりやすいからだろうな、というのが正直な感想だ。

 エリは常に微笑を浮かべてとてもわかりづらい。


 俺はさすがにクーほどわかりやすくはないって感じ。 


「不可能はあったな」


 と俺はクーをからかう。


「ぐっ……やまとにはかなわない」


 なぜか彼女の中では俺に負けたことになったらしい。

 ちらっとエリを見たら余裕の笑みが返ってきた。

 

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