第14話「考えることが多い」

「今日はどこに行くかな」


 と俺は自分の部屋で、椅子にもたれかかりながら悩む。


 動画への反響をチェックした感じ、果実は意外と需要があるらしい。

 他にもなんかみんなが欲しいブツはあったりするかな?


「聞いてみないとわかんないな」


 とつぶやく。

 もっともリスナーだって、どんなブツがあるのかわかるはずがない。


「どうやって?」


 とクーが合いの手を入れてくる。


「たしかにいまクエストを受け付けるって無茶すぎるね」


 こういうものを売れます、とアピールするほうが必要な人に対しても親切になりそうだ。


「ウチのダンジョンには何があるのか見てもらうのが先かな」


「それだと配信というよりは商売ね」


 クーのツッコミがもっともすぎて苦笑しか出てこない。

 

「売るのはどうかと思うけど、誰にでも提供するのは無理だろうからなぁ」


 買える人だけっていうふるいわけはしたい。


「ニンゲン全員に配るのはさすがに無茶ね」


 とクーも同意する。


「それに不死鳥の羽などは世に出さないほうがよいかと思いますよ」


 いつの間にか来ていたエリも意見を言った。


「なるほど。何を出すとやばいか、そこも考えなきゃか」


 考えることが多い。

 ひとりだと大変かもしれない。


「誰かに相談できればいいんだけど」


 そんな都合のいい人なんているのかな?

 

「調べてみるか」


 いればラッキーと思って検索してみたら、ダンジョン協会なるものが存在しているらしいと出てくる。


「ダンジョン産の買い取りもオッケーなのか」


「信用できる?」


 クーの一言は何気ないようで鋭い。 


「うん? 国の機関だし大丈夫なんじゃないの?」


 民間企業よりは安心なんじゃ?

 と思っていると、クーとエリが目を合わせうなずき合う。


「わたしたちもついて行こう」


「なんで?」


 クーの言葉に疑問を返す。


「俺、おつかいくらいできる年だよ」


 いくら何でも過保護すぎるのでは、と思いたい。

 

「ソーク氏は未知の外国人だったけど、今回は日本の国家機関だよ?」


 安心できる相手じゃないかな。


「ついていく」


「わたしもです」


 ふたりに譲る気配は全然ない。

 こうなると頑固なんだよなぁ。

 

「わかった。じゃあエリに頼もうかな」


 俺が恥ずかしい以外にデメリットないのであきらめる。


「なぜ!? またこいつ!?」


 クーが納得できないと憤慨した。


「信用が違うのでしょう」


 エリは得意そうに胸を張ったけど、煽ってない?

 気のせいだよね?


「わたしも、行きたい!」


 クーが俺の両手をしっかり握って懇願する。


「じゃあそのうち三人で行ってみようか」


 エリを外すのはなんとなくこわい。

 クーのやりすぎを止められるとしたら彼女だからだ。


「むう……留守番よりはマシ」


 クーはちょっとむくれたけど、いちおう納得はしたらしい。

 

「今日は四階にしようかと思ったけど、やっぱ二階にするよ」


「外に出すことを考えるなら、そっちのほうがいいですね」


 とエリが賛成し、クーもうなずく。


 よそのダンジョンはどうか知らないけど、ウチのダンジョンは下の階層に行くほどいいアイテムが出る。


 その分危険度も増すんだけど。


「じゃあジャターユを」


 と呼ぼうとしたら、エリに止められる。


「わたしなら実況もできると思いますけど」


「むー」


 クーが先に反応したものの、否定はしなかった。

 たしかにエリならソツなくできるかも。


「だからあいつを推薦したのに。あの鳥め」


 クーが何やらぶつぶつ言ったけど、早口すぎて聞き取れなかった。


「でもエリもみんなこわがるからダメだな」


「ガーン!?」


 却下するとエリは珍しくクーみたいな反応を示す。


「くく、ざまー」

 

 クーがお返しとばかりに彼女を煽る。

 ふたりがバチバチにやりあったら家が吹き飛ぶからやめてくれない?


 

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