13話 闇かわいい
「そんな要求、応えなくていい」
「エッ、エット、石壁ニンゲンが現レタです?」
「はああああああ!? お前には関係ないだろーが! てか小汚い恰好してっけど、どこの誰だよ!?」
石壁を塗りたくったような姿の妹に、片方は動揺し、片方はキレ散らかしていた。
「嫌な人に自己紹介、しない。関わりたくない。私はそこの女の子に話しかけてる。だからあなたに関係ない」
淡々と言葉を返す芽瑠に、やっぱりナリヤさんはピキリときてしまったようだ。
「はあああああ!? おまえみたいなゴミ女は一度ぶっ叩いておかねえとだな? おら、
「別にそれでいい。
よく見ると芽瑠の頭上にはLv13と表記されている。
え、レベル上げるの早くないか? お兄ちゃん、まだLv7なんだけど?
そしてピキり散らかすナリヤさんはと言えば、芽瑠の指摘通りLv12だった。
「……おまえ、Lv13のくせにそんな汚ってねえ防具つけてよお。課金もできない貧乏人が突っかかってくるんじゃねえよ」
「課金なら、してる。それで私と戦う?」
芽瑠は無表情のままだが、ナリヤさんの目が本気で据わり始める。
「一週間後……【闘技場】で勝負だ」
「別にいい」
「【
「んん……弱い人、だから【
よくわからないけど、どうやら【
ナリヤさんが、リアルマネーがどうのって騒ぎ立てるぐらいだし。
「やってやろうじゃねえか! てか今やってやるよ、この貧乏人が!」
おっと、どうやらナリヤさんは自分で言いだした期日まで待てないご様子だ。
ついには腰に吊るした片手剣に手を伸ばしかける。
これはさすがに僕も黙って見ていられないので、さっきから気になっていた
実はナリヤさんたちのすぐ背後の壁には、トラップ系のモンスターが潜んでいるのだ。
石壁から僕だけが見える様々な項目が出現するなか、ただ無言で『襲え』と命令を下す。
途端に壁はゴゴゴッと動き始め、巨腕を
「あっ? なんだ?」
「今いいとこだから、ノンちゃんのおぱんヅッ」
「ふざけんッぎゃっ、ぐぎっ!?」
【
「可愛いは、不意打ち、なのである」
◇
ルンちゃん師匠のストーカーをストーカーしていたら、なんだかすごい揉め事を配信しちゃっていました。
:『よめるめる』が使ってるのって新スキルか?
:偽装系統のスキルにしては興味深い
:うわ、ナリヤって奴やばいなww
:ペイント塗ってるから『よめるめる』って気付いてないのは草
:すごいケンカ腰だよな
:闘技場で向き合って、正体知ってポカーンってなりそうwwww
:おれ一週間後の試合ぜってー見に行くww
:楽しみすぎる
リスナーさんたちが喜んでいるのも束の間で、事態は急展開を見せました。
そう、ルンちゃん師匠お得意の可憐な殺戮ショーです。
:お、おいおい……なんだよあのゴーレムは!?
:【剣闘市オールドナイン】にはあんな化物が潜んでたのか!?
:黄金領域って安全じゃないのかよ……
:そういや度々、冒険者が消えるって話があったけどまさかアイツの仕業じゃ
:キラリン逃げろ!
きっとあれは、ルンちゃん師匠のテイムスキルだと思います。
石壁から突如として出現したゴーレムが、ナリヤさんたちを一網打尽にしてしまいます。
圧倒的な殺傷力で
まさに私の思い描いた理想の可愛い、究極に庇護欲をそそられる美幼女のままなのです。
やっぱりルンちゃん師匠は危険です。
危険であればあるほど、その可愛らしさが際立つのです。
:あれ? めるめるとノンって少女は襲われてない?
:いや、まだゴーレム動いてるぞ!
:危ない危ない!
:え、『よめるめる』の妹が突っ込んだ!?
:以外に素早い動きだな
:おーあの剛腕をかいくぐって二人を救出してるな
ですが、ルンちゃん師匠のテイムスキルも完全ではないのかもしれません。
暴れ続けるゴーレムの猛威から、『よめるめる』とノンと呼ばれた少女の腕を掴んで、離脱を図っているようです。
:こっちに逃げてくる!?
:あっ、キラリンに気付いた!?
:今、目が合ったよな!?
「えっ、あっ!? き、貴様もついてくるがよい」
「はっ、はい!」
私の存在に気付いてくれたルンちゃん師匠は、私を巻き込まないようにと、素敵な逃走劇へとお誘いしてくれました。
何もかもがとっさの出来事で、やっぱりルンちゃん師匠といるのは楽しいなと思うのでした。
:てかキラリンを助けにいこうぜ!
:めるめるや妹ちゃんにも会えるしな!
:ノンって子もなかなか可愛くないか!?
:
あれれ?
ちょっとリスナーのみなさん、落ち着いてくださいね?
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