8話 突然の刺客
「
僕が思い切ってそう言うと、サスケさんがキラさんを軽くどついた。
「キラ殿。ルンちゃん殿が嫌がることでもしたのでござるかあ?」
「やっ……えー……あー、まあPvPに巻き込んじゃったかな? あははは」
「なるほど。ではルンちゃん殿は、キラ殿とフレのままでいるのは危ないと判断したでござるなあ。であれば納得のゆく申し出でござるよ」
「一人で納得してるけどさあ、その流れでいくと同じ闇ギルドに所属してるサスケもフレにはなれないってことだよ」
「さようか……ルンちゃん殿、
思っていたよりもすごく穏便な態度に、僕はちょっとだけ拍子抜けしてしまう。
それどころか、キラさんに原因があると思われてしまって申し訳ない気持ちになった。
「
だから言える範囲で正直に伝える。
「ルンちゃん師匠の問題?」
それからキラさんは僕を上から下まで観察して、『あっ』と何かに気付いたように呟く。
それから隣にいるサスケさんに向かってコソコソ話始めた。
「もしかして——リアル実年齢も————見た目通りなのかも——お偉いさんごっことか————」
「なるほどなるほど——年齢制限でござるかあ——」
「見ず知らずのネットの人と——フレンドなんて————」
「親御さんの許可が取れず——無闇に聞くのもまずいでござるな——」
「——プライバシーだし?」
ごにょごにょと内緒話をしていたお二人さんだが、秘密の会話が終わる頃にはニッコニコだった。
これからどうやって僕をキルする算段を立てていたとか……でなければいいんだけど。
「わかった! ルンちゃん師匠がそう言うなら、俺はフレンドを解除しようと思う」
「ただ、せっかくできた縁でござる。またどこかで顔を合わせた時には、ともに人斬りを楽しもうぞ」
「あっ、や……うむ。人斬りは、その……
あまりにもあっけなくキラさんが了承してくれたので、僕はついつい
「お! やっぱりルンちゃん師匠はわかってるね!」
「ふふふふ……ルンちゃん殿はPK以外にも好きなものはござるか?」
「え、あっ、えーっと、ピーナッツが好きである」
「ピーナッツ? あははははっ、リアルじゃなくてゲームの話だよ?」
「ピーナッツは確かにカリッとした食感がやみつきでござるなあ」
自分の勘違いに頬が熱くなったけど、サスケさんがピーナッツ談議に乗っかってくれたので少しだけ嬉しくなってしまう。
「いかにも! 実はピーナッツは、自家製栽培する時は土作りが重要でな……!」
「まさかのルンちゃん師匠が、大のピーナッツ好きだったとは驚きだね」
「しかもご自身で栽培とは趣があるでござるなあ」
僕は夢中になってベランダで育てているピーナッツについて語ってしまった。
自分の好きなものを話せるのはやっぱり幸せで、だからいつか『可愛い』が好きって趣味も、誰かと共有できたらと願ってしまう。
そんな大それた願いを抱いてしまったからなのか、幸せの終わりは突然訪れた。
「やっぱりお兄ちゃん、ゲームしてた」
よく聞きなれた声が、不意をつくように背後から発せられた。
一部の界隈では『とろける声』と心酔されるほどで、僕がこの声を聞き間違えるはずもない。
そして僕を『お兄ちゃん』と呼ぶのは、この世で
ゆっくり、ゆっくりと振り返れば、そこには銀髪の姫カット姿がよく似合う美少女
「お兄ちゃん、嘘、だめ」
「な……
頭上に表記されたキャラクター名もメル。
しかも声もリアルと同じなら、容姿まで現実とそっくりで、彼女は僕に怖い笑顔を向けていた。
「ど、どうして
「それは秘密」
僕が戦々恐々していると、キラさんとサスケさんは芽瑠を見て疑問符を浮かべた。
「んん、ルンちゃん師匠の知り合い? あれ? どこかで見たことあるような——」
「ルンちゃん殿が……
サスケさんの鋭い疑問に僕は
正確には隣室にいる妹に向けて、魂の咆哮と懇願を。
「めるうううううううう! 頼むからもう何も言わないでくれええええ!」
「私に黙って、ゲームしてた罰……!」
「お願いしますうううううううううううううう!」
壁越しによる兄妹戦争が幕を開けた。
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