大文字伝子が行く132

クライングフリーマン

ブラックスニーカーの最後(前編)

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。

 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。

 愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。警部。丸髷警察署に普段は勤務している。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。EITOに出向。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。喫茶店アテロゴのマスター。

 物部(逢坂)栞・・・伝子の大学の翻訳部の同輩。物部の妻。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田(小田)慶子・・・やすらぎほのかホテル東京副支配人。依田の妻。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進んでいたが、現在は建築事務所非正規社員。

 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。後に福本と結婚する。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、現在は妻と塾経営。

 南原(大田原)文子・・・父の経営していた塾を引き継ぎ、夫と経営。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。現在は、海自事務官。

 山城(南原)蘭・・・南原の妹。美容師。

服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。

 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。EITO大阪支部メンバー。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

 副島はるか・・・伝子の小学校の書道部の先輩。彼女の父が書道部顧問。EITO東京本部準隊員。

 兼子省吾・・・副島の父の弟子。伝子と愛宕の恩師。

 宮本貞子・・・副島の弟子。

 天童晃(ひかる)・・・EITO東京本部武術顧問。

 松本悦司・・・EITO東京本部武術顧問。

 須藤桃子医官・・EITO東京本部勤務。

 池上葉子院長・・・池上病院院長。高遠の中学卓球部後輩の母。

 本庄病院副院長・・・本庄病院副院長。


 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==

 ==EITOエンジェルズとは、EITO大阪支部の、女性だけの精鋭部隊である。==


 午前11時。伝子のマンション。

 服部夫妻が訪れていた。愛宕がやって来た。

 高遠は、お茶とお茶菓子をリビングに用意した。

 「火事?」と伝子が驚いた。

 「ええ、服部さんがよく利用していた中古レコード店『夢見堂』は、先日音信不通だと言うことで、不動産屋の立ち会いで入った所、亡くなっていました。死後数日経っていました。親族に了解を得て、家宅捜索しました。それで、服部さん宛の荷物があったので、指紋等を調べた上でお渡ししたのですが・・・。」と、愛宕が説明した。

 「それがね、先輩。僕は注文した覚えがないんですよ。それで、仲間に連絡を取りました。仲間というのは、夢見堂をよく利用していた仲間で6人います。その中の鳳さんが注文していたもののようです。傷物でもいいから、出回っていたら入手したい、とお願いしていたそうです。爺さん、ボケが始まったのか、よく僕と鳳さんを間違えていました。」

 「あなたと似ているの?」と、コウが尋ねた。

 「うん。体格が似ている。同じ服着て並んで後ろから見たら双子、かもね、なんてメンバーの木更津さんが言ってたことがある。」

 「じゃあ、服部に用意したんじゃなくて、鳳さんに用意していたレコードかあ。」

 「今夜のお通夜に来るので、渡す予定なんですが・・・。」

 「先輩。僕の勘なんですが、そのお通夜に犯人が現れると思います。」と愛宕が言った。

 「愛宕?犯人が?」「実は、殺されていたんです。頸動脈の近くに両刃カミソリがボンドで貼り付けられて、手足はロープで縛れていて。肋骨も折られていました。それと、火事は近所の方々のバケツリレーの結果、ボヤで済みましたが、漆喰壁から麻薬が出てきました。」

 「残虐だなあ。テロリストみたいだ。」「新しく塗り直した所から麻薬が出たので、葬儀の後、建物自体を壊して徹底捜査するそうです。勿論、マスコミには殺人事件のことしか発表していません。」

 顔を歪めた高遠に、愛宕は応えた。「そうなんです、EITOにも捜査協力が出ました。」

 「愛宕。お通夜は何時だ?場所は?」伝子が尋ねると、「暁光寺。午後7時の予定です。親族の方は鹿児島市の方で、到着はギリギリになるかも知れない、ということなので、最悪の場合は警察が式を執り行います。名目は服部さん達愛好会が喪主ということで。」

 午後1時。EITO本部会議室。

 「単なる物取りではあり得ない。商売っ気のない人で、買うときは相手の言い値、売る時は発売当時の額面通り。採算なんか関係ない趣味の仕事だった。昔ミュージシャンだったかも知れないと服部氏達はし話しあったこともあるが、根拠はない。レコード会社にも知人はいなかったようだ。財布は無かったが、預金通帳や判子はあったよ、寝ている部屋の床下に。それより壁から出てきた麻薬の方が問題だな。単なる人のいい爺さんじゃ無かったのかも知れない。」と、理事官は言った。

「泥棒なら、ふん縛って財布奪って、消えるだけですよね。」と静音が言い、「怨恨なら財布要らないわ。あ。麻薬を取りに来たのか。」と、伊知地が言った。

「おねえさま。やっぱりEITOが出ないといけませんね。」

 「うん。今回は、なぎさが指揮を執れ。あつこは警察関係に連携を取らせてくれ。」「了解しました。」

 「隊長。ブラックスニーカーか、えだは会が絡んでいるんでしょうか?」と、本郷が言った。

 「何とも言えないな。だが、ブラックスニーカーは、近々大きな対決を挑んで来そうな気がする。」

 午後5時。芝公園。

 路上ライブを終えた服部は、妻のコウと片付けを始めた。

 「あのー、服部さんですか?」と、トラックの運転手風の男が声をかけてきた。

 「夢見堂から預かったモノを渡して貰おうか?なあに、家まで送ってやるから、そこで渡してくれりゃあいいんだよ。」

 5人ほどの男達が服部達を取り囲んだ。

 あつこ、みちる、結城、あかりが現れた。「逮捕!」

 午後6時。警視庁。

 取り調べ室から久保田管理官が出てくる。

 「こんな簡単な取り調べ、経験したことがない。まあ、実害がないと言えばないが、一応恐喝だな。ワンダー商会という半グレの下請けのチンピラだった。」

 管理官の言葉に、あつこは「おじさま。半グレに依頼したのは?」と尋ねると、ネットの闇バイトだそうだ。レコードを奪うだけの、バイト。レコードは、ちょっと傷のある、普通のレコードだがな。お通夜も狙われるかも知れないな。」

午後6時半。暁光寺。

 親族は何とか間に合い、喪主は親族の一人が執り行った。受付が始まった。

 中庭で、鳳が服部に謝った。「ごめんなさい。人違いで服部さんは狙われたんだね。」

 「いや、それだけじゃない。そのレコードに麻薬が挟まっていたのかも知れない。侵入者は2人いた。店主を殺そうとしていた犯人と、麻薬を横取りしようとした犯人。」

 伝子は言い切った。「断じて、許さん。」

 午後7時。読経が始まった。

 午後8時。一般のお通夜は散会になった。

 服部達6人は、木刀を持った集団に取り囲まれた。

 「麻薬なら。持って無い。脅しても出てこない。」

 「痛い目を見たいようだな。」と、リーダー格が言うと、「痛い目って、どんな目かな?」と言う声が聞こえた。

 銀頭巾の姿の天童と、紫頭巾の格好の静音が現れ、30分も経たない内に、集団を 倒した。待機していた警官隊がすぐに集団を逮捕連行した。

 喪主の男は、そっと様子を見ていた。

 午後9時。New tubeのブラックスニーカーがアップロードされた。


 《

 EITOの皆さん、ご苦労さん。イベントのお知らせだよ。

 まあ、すかっとしたお知らせをしたいところだが、そうは行かないよね。

 人数は1500人。午後3時。ああ、オプションで、『書道の先生』も参加だ。

 お楽しみにー。

 》


 午後10時。伝子のマンション。

 「New tubeでの果たし状は以上だ。高遠君の推理を聞こうか。」

 EITO用のPCに繋がっているモニターの向こうで理事官は腕を組んで言った。

 「以前、準備をお願いしましたよね、東京ドームか葡萄館を選んで来るかも知れないということで。マスカットを否定しているから、本命は東京ドームでしょう。葡萄館にはダミーの警備をして、東京ドームの近くにドローン隊を配備して、敵の通信の妨害をして下さい。音声だけでいいです。」

 「了解した。」

 「書道の先生というのは、副島先輩のことですよね。副島先輩は、GW休みを取っていたのではなく、拉致されていたということですね。そして、誘拐した副島先輩を連れて来るということは、伝子達を無抵抗で全滅させる作戦なのかも。」

「作戦会議は明日行うとして、理事官にお願いがあります。」

 翌日。午後3時。東京ドーム。

 エマージェンシーガールズが入場すると、既に1500人の刺客が待ち受けていた。

 トラックが何台も駐まっている。集団の半分は銃や機関銃を持っている。

 50メートル先に、大きな黒い幕をかけた物体があった。

「試合、を始める前に、俺達の総監督に会って貰おうか。」リーダー格の男が言うと、幕が開いた。

 大きなケージがあり、その横に女子高生が立っていた。黒いスニーカーを履いている。

 宮本貞子だった。

 ケージの中にはベッドがあり、副島が寝かされている。頸動脈付近に両刃カミソリが貼られていて、副島の隣にいる兼子の手が両刃カミソリに添えられている。その手は、隣の装置に固定され、時間が経つと共に腕が上がっていく仕掛けのようだ。

女子高生は言った。「隊長の大文字伝子、出てこい。今から副島奪還ゲームを始める。先頭の日向は下がれ。影武者は要らん!」

 日向は後尾に下がり、稲森が前に出た。

 なぎさが、DDバッジを押そうとした。

 「そこの!DDバッジを押すな。おい!バッジを回収しろ。それと、長波ホイッスルもだ。」

 DDバッジとは、緊急連絡信号を出すバッジだ。長波ホイッスルとは、犬笛のようなホイッスルで、やはり緊急信号を送る。

 高遠と伝子と理事官は、副島が拉致された事で、漏れたに違いない情報を整理し、対処していた。一昨日までの通信イヤリングを止めて、スーツ内蔵のインカムに切り替えたのもその為だ。後方にいた江南は、小声でインカムに囁いた。「10分前。」

集団の部下達が、用意していた箱を送ってきた。一人ずつ箱に入れさせるのではなく、『プリント送り』だ。なぎさは、書道教室の生徒にも裏切り者がいると思った。

 「一回戦は、棒術だ。バトルスティックで闘え!」稲森は、バトルスティックで闘い始めた。倒しても倒しても次から次へと敵は現れる。

 貞子は笑った。

 ―完―


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大文字伝子が行く132 クライングフリーマン @dansan01

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