第4話 誇り 結婚できたことが

ここはクラムボン家の密室。丁度スティーブンが当主ローズベルトと対話しながら


「てかよ、もうこれ結婚式必要なくねえか。レオナルドとエリスが結婚するのだったら」


スティーブンが優しく言う。


「甘いな、よりその絆の深さを試したくなった」

「おめえそれヤンデレっていうんだぞ知ってるか?」

「知るかそんなしょうもない用語」

「しょうもなくねえよ、今のお前がまさにそうだからだよ」

「はあ......]


 考えてみればエカテリーナのことはかなり大事に、それも姉が意地悪しないように扱っていた。

 姉妹にしてはとてつもなく仲がいい姉妹だった。


「エカテリーナは自分が動いたことによって死んでしまった。丁度オロチがドラゴンに立ち向かっている時に」

「ああ、あの時だったのか!!エカテリーナちゃんが死んだのは」


悲痛な顔をしながらローズベルトは言う。


「人の死ってあっという間だからな。もうメイドの襲撃はやめにしよう。俺はエリスを信じてみようと思う」

「へえ、あんたあたいが帰ってきた時にそんなこと言えるなんてやっぱ根性あるわね」


 メラルダが帰ってきた。この女ダークエルフだ。夜の能力は絶倫に近い。


「あの子、招き猫使ってたわよ。家は潔癖症すぎるのよ。だからしばらくは戦いはやめない。あのくねくねっていう奴がゴールドランク以上の冒険者になるまでねえ」

「メラルダ。お前を俺は信じていいのか」

「ああ、本当よ。ダーリン」

ローズベルトにメラルダが抱き着く



その頃。


「おい、タルワール気を付けろお前はクラムボン家のメイドたちに目を付けられたぞ」

「ヘイヘイそんなことくらい分かってるさ。だが今はお前がついてるから大丈夫さ」

「油断するなよ」


ここから先は冒険者である。エリスの埃使いとしてのスタートはこうして始まった。


「エリスちゃーん......生きてるかーい」


マロンがピンクの髪を微かに靡かせながら確認する。


「大丈夫ですわ、マロン。これからもよろしく」

「んじゃ、今日はジョサパテの作ったパン屋でパン祭りするか」


パンは目の前に膨大にある。

というかそこら中食パンだらけになっていた。


「あと始末だ。クランドちょっと無理しても食ってくれねえか。これだけ小麦使うなんてあんた何ちゅうパン屋なんだよ」

「私、天才と呼ばれていましてね。実はローズベルト様ともつながりがございます」


エリスの中にこの人からは離れなければならないという勘が働いた。


「私、メラルダさんのことずっと好きでした。でもあんなことするんだったら大嫌いです。だからここにいちゃいけないと思います。お父様も大嫌い」

「おいおい、慌てるなって。パンになったからか鳥がいっぱい来てうれしくないのか」


パンをハトがついばんでいる。栗鼠もひっかいて口にしている。実に平和な光景だった。

その時、雷電秘孔と呼ばれた奴が現れた。


「貴様達、アーチボルトを殺したな。仇を討ってやる」

「へえ、そんなに慕ってたならなんでついていてやらないんだ雷電秘孔の李空信」


雷電秘孔はそんなくねくねと呼ばれるタルワールと対峙した。


「今ならまだ復活させることはできるが」

「は、誰がそんな無茶をさせた」

「手前ら、俺ら若者をなめ過ぎだ 甦れアウクレピオス」


 蛇が動くと同時に瞬時に雷電のアーチボルトは復活した。


「タルワール、感謝する」


 雷電のアーチボルトはタルワールとレオナルド、マロンにエリス。すべてに感謝していた。


「雷電秘孔さん。ごめんなさい。私のせいで」

「謝るな。こういう時は感謝するのさ」


雷電秘孔とエリスが対話した。


「ところで李空信さん。貴方は埃使いにはどういうイメージがあります?」

「一番厄介だそれは」


その時、教会の大きな古時計の鐘が鳴る。


「ヘレナ・チョコ・ノワール様のお成ーりー」


教会の牧師アマデウス・ブラックがお姫様が通ることを感謝した。


「へ、ヘレナ様が通るんですか?ちょっと聞いてないんですけど」


タルワールが言う。


「ヘレナ様。お騒がせして申し訳ありませんー」

「まあ、なんて素敵なお城なの」


ジョサパテのパンを裁くスピードと草薙剣が合体してケーキの家が出来上がった。


「お姫様、俺ら結婚しようと思ってるんだけどいいか」


レオナルドが恥ずかしげもなく言う。


「え、結婚式ですか。これはまた立派な結婚式ですわね。カーネルお父様に伝えましょう。貴方たちに光があることを祈ります」


瞬時に姫は消える。テレポートの魔法を使って。


「良かったなレオナルド、そしてエリス。姫様に認められたってことはメラルダじゃ対抗できないはずだ」

「油断するな。あのダークエルフのメイドは魔族を従えている。しかもヘレナ姫は騙されやすいことで有名だ」


まだ、警戒を解くのは早いかもしれない。だが、こうしてレオナルドとエリスの絆はまた一つ深まったのだった。


「なあ、エリスちゃん。キスしないか」

「いいけど、ちょっと恥ずかしい」

「なら俺の剛毛で隠してやらないか」


レオナルドはゴリラの状態になる。


「その前にちょっと撫でさせて、ゴリラになったレオナルド可愛いからさ」

「!!いいよ。てかありがとう。君にそう思ってくれるのは逆にうれしい」


その瞬間毒針が伸びる。


「はっ。何イチャイチャしてるんだよ。戦闘はまだ終わってないぞエリス」


メラルダが瞬間移動してやってきた。


「しつこい、もう来ないで」

「さて、じゃあ、あんた私を殺すつもりでかかってきなさい」


メラルダは影分身を使った。

それはレオナルドすら対抗できないくらいに


「糞、これじゃ俺が攻撃できない」

「嫌」


その時粉塵爆発が起こった。周りには飴細工の勾玉が降り尽くしている。


「あんた、一つ聞いていい。それは信じられる愛なのか」

「そうに決まってるでしょ。もう嫌だ」


さらに粉塵爆発が起こる。


「あんたは埃使いになりなさい。私を殺せるようになってからねえ」

「メラルダさんまで死んじゃうのは嫌だ」

「しゃあないわね。でも、一つ覚えておきなさい。自分が妹の死にどれだけ悲しんでいるのかが周りにどんな影響を与えるかを」


途端に影分身が消える。


「レオナルドとか言ったかしら。私とこの子どちらが大事?」

「エリスに決まってるだろ」


泣きながらレオナルドは叫ぶ。この動き完全にゴリラだ。だがその目には涙を浮かべていた。


「オロチが死んだくらいでへこたれるな。なんならそののこぎり奪って捨ててやるよ」

「ふざけるな」


野生の勘で本物のメラルダに体当たりした。


「ま、せいぜい頑張りなさい。でも、あなた、ローズベルト様に目を付けられたことだけは言っておくわ」


ダークエルフは美しい。だがこの女は男爵ローズベルトにとても似ていた。


「ああ、そんなことがあったら逆にぶっ殺してくれると助かる」


そんな物騒な会話をしながらレオナルドはエリスを抱きかかえた。




「畜生、メラルダ。俺にエリスを見せろ」

ローズベルトは言う。

「見るな。監視カメラでもつけたいのかお前は少しは二人だけにさせてやれよ」

先ほどのテレポートで戻ってきたメラルダが言う。

「......確かにな、俺もこの癖を直さなければならないな」

「男爵、またドラゴンがこの国を襲撃しようとしてるらしいです」

「は......何だととてもちょうどいいではないか、今夜はドラゴンの肉のステーキだぞ」


その時教会の鐘は鳴る

「光あれ、光あれ、光あれ」

教会の前にいる烏が鳴いている。どうやってこんな声を出しているのか。それはさておき闇魔法使い達がこの場に集う。

「油方部羅」

魔法使いの一番先頭にいる人間が呪文を唱える。

「ABURAKATABURA」

背後にいる魔法使い達もそれに続く。

「切裂けドラゴンスレイヤー」

その後ろにいた戦の灼熱アスモデウスがドラゴンにとどめを刺した。

「キャー、アスモデウスさんかっこいいー」

「ふっ、俺は俺の仕事をしただけさ、これしかできなくて困ってるくらいだ。なあ、マグニフォ」


先頭の魔術師はギルド長マグラ・マグニフォだった。


「お疲れ様。今日はレオナルドとエリス・クラムボンの結婚式だ。お前ら楽しめ」


「「「「よっしゃー」」」」」


 こうしてメイド集団達との戦いはひとまず決着がついた。

 ドラゴンの鱗も皮も肉もなかなか食べられないものだった。



「肉はどうやって処理しようか」

「おい、ローズベルト。どうやってドラゴン殺したんだよ」

「アスモデウスとマグニフォを一緒に戦わせたんだよ。オロチみたいな犠牲者を出さないためにもな」


 オロチは昔から親にも反抗しないい奴だった。だからこそドラゴンが来た時に真正面から立ち向かって死んでしまった人間なのだ。白髪黒目の美少年だったが、もしかすると生きているのかもしれない。


「ドラゴンの心臓を確認するぞ。オロチが生きているなら反応するだろう」

ローズベルトはその茨の能力を駆使してオロチを探した。

「いたぞ、オロチ、そしてお前はエカテリーナ」

「は......生きてたのかよ二人とも」


「お父さん。私は生きてたよこのお兄ちゃんと一緒にね」

「親父さん少しは周りのことも考えて行動してください。本当にお願いします」

「ちょうど良かった。お前達とエリスを合わせてやろう。メラルダ。ここに奴らブラックエメラルドを連れてこい」

「ヘイヘイ。お任せあれ」

 即座にブラックエメラルドが魔法によって召喚される。

「スティーブンさんありがとうございます。僕達にこんな経験をさせてくれて」


 くねくねことタルワールがクランドと共にお辞儀する。


「お前たちに合わせたい奴がいる」

「何だ男爵様また攻撃か?」

「違う、オロチとエカテリーナはドラゴンの心臓の中で生きていた。だから合わせたいと思ったのだ」

「「「「「!!!!!」」」」」

めでたしめでたし




























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