第3話 メイドたちと親馬鹿男爵

「貴様ら、エリスをどこへやった」

「知りませんよ、スティーブンさん呼んでください」


 この男ローズベルト・クラムボンは冒険者でいうところのオリハルコンランクの冒険者だ。オリハルコンは純度が100%に近い鉄ようだが、この場合はゴールドランクよりも上の階級になる。。


「おい、スティーブンお前はどういうつもりだ」

「ちゃいますって、あの子の妹の形見を守って=」

「お前、私の娘をどこへやった」


 ローズベルトがギロチンの魔法を今にも行使させそうになりながら、メイドたちは戦慄している。


「タルワールに預けてきたんですよ。あのくねくねっていう優しい奴にね」

「......分かった。感謝する。スティーブン。後で酒場にでも行かないか?」

「わかったよ。お前が娘死んで悲しいのは分かるけどよ。お前自分のことを異常だと思ったことあるか?」

「全然ない」


 こうして、スティーブンと男爵ローズベルトは酒場にのみに行ったのだった。




 酔っている間の話をする。


「おいスティーブン。メラルダ呼んで来い。最高のサーカスを見せようじゃないか。」

「あー、俺らが冒険者だった時の奴な。あいつが形見捨てろって言ったみたいだぞ。」

「じゃあ試してやろうか。エリス、タルワール、マロン、レオナルド」

「雷電のアーチボルトを呼んで来い、そんでもってメラルダと一緒に戦わせる」

「お前......嫌われてもいいのか」

「ああ、いいさ。まあ、親のやさしさに気付ければ満点だがな」


 ここの町ノワールで大げさな父と娘の戦争が幕を開ける。



「おい、タルワール。すんげえいやな予感がすんだが......」

「分かった力を合わせて戦おう。これはローズベルト男爵の試練だ」

「へいへい、あんな屋敷に閉じ込めておくオヤジ何てクズ確定でーす」


 マロンが楽しみにしながら歯をスライム状にしながら構えていた。



「スティーブン、草薙の剣を使え」

「マジかよ。変過ぎるだろ」

「いいから使え。やらなければ絶対これは終わらない」

「切裂け、草薙剣」


 途端に雷電が走った。


「そろそろだね。さーてどのように調理しようか」


 そこへジョサパテが割り込む


「これはこれはとてつもないまるでケーキのようなパンができそうですね」


 途端に雷がパンに変わる。


「は.....」

「ww」


 ローズベルトは動揺した。草薙剣で切り裂こうとした部分が途端にパンに変わってしまったからだ。


「なあ、ローズベルト、エリスだってもう大人だ。考えてみればこの家制限され過ぎだと思わないか?」


 空間からまるで雹のようなパンが降り注ぐ。そしてこちら側に帰ってきた。


「おいパズズ、生クリーム持ってこい。おそらくはこいつらジョサパテといるはずだ」

「待て、そいつ何者だ」


 スティーブンが口にする


「ま、一言でいえば天才パン職人だよ」


 なるほど、とローズベルトは感心した。草薙剣の斬撃をパンに変えれるのは奴しかいないと


「エリス、お前は誰と絡んでいるんだ?」


 父の素朴な疑問が沸く。これからはきっと若者が世界を作り上げていくのだろうと思いながらも不審に思った。

こうして、クラムボン家は新クランブラックエメラルドに一度完敗した。


「なあよ、ローズベルト、どうせならメイド軍団襲撃事件とか起こしてみねえかおそらく、あっちにはゴリラがいる」

「あー、それはちょうどいいな。だが」


 一呼吸置いて言う。


「エリスをひどい目に合わせたら粉々にしてやる」

「分かった分かった。でもたぶんレオナルドだったら、絶対そんなことはしないはずだ。だからお前は少しは安心しろ。つかしとけゴリラの逆鱗に触れるようなもんだぞ」

「分かってる。だが万一の場合だ」

「おい出雲、あいつらの行動を24時間監視しておけ」

「分かりました。契約者ローズベルト様。魔神のランプの精、出雲がサポートいたしますよ」


 出雲。こいつは東方からやってきた魔神だ。提灯と呼ばれるランプのようなもので呼び出す。ジンのような存在だった。


「いやー、東方だとかなり気持ち悪がられて嫌だったんですが、認めてくれる人がいてうれしーっすよ。契約者様」


 ジンとはアラビアンナイトでも登場する魔神だが、東洋の方では妖怪として追い払われ続けた。なんでも願いを叶える能力があるが、いったん貴族にとりついたが光源氏と呼ばれる人間に封印されてしまったらしい。


「俺が新クランだか何だかの最大の敵として立ちはだかろう」


 ローズベルト男爵は身構える。


「おい、分かってるか、レオナルドが相手だったら一気にこの家つぶされるかもしれないぞ」

「いや、この家は潰れたってなんだっていい。私はただ娘のエリスを守りたいだけだ」


 これはまるで自殺未遂のようだった。


「分かってる分かってる。お前さんが人として異常なことはそれこそ異常なくらいに理解してるよ。俺らがレオナルドいじめて助けるのがエリスちゃんって事だが?」

「いいなそれ」



「なあよ、俺って頼られてたりするのか」


 レオナルドが疑問に思う。


「知るか、お前がエリスちゃんといる限りこれ続くぞおそらく」

「おもしれえ、ぜんぶ跳ね返してやる」


 その時その騎士たちは現れた。


「我は雷電のアーチボルト レオナルド貴様を試す。」

「毒の息吹エスメラルダ」


 エメラルドのような息が襲ってくる。とっさにレオナルドはエリスの手を握る。そして抱きかかえた。


「何が何でもエリスちゃんだけは守る」

「いいのかい、それで」


 タルワールの方向を見てメラルダが言う


「あいつは大丈夫さ。だてにくねくねやってねえよ。エリスちゃん、君だけは守る」

「爆殺のギガンテス」


 レオナルドの呪文によって鉄のような結界が張られる。


「おい、レオナルド、うちはそんな」

「邪魔だマロン。あいつに必要なのは人のぬくもりだ」

「んな言い方ないよ」

「俺だってこんな言い方したくない。だけど今は我慢してくれ」

「分かった。私はタルワールを信じるよ」


 こうしてエメラルドポイズンブレスといわれるメラルダの吐息は放たれた。


「エリス、俺は怪物じゃねえよな」

「何言ってるの。十分立派な人よ」


 こうしてこの二人は結婚することになった。



「なあ、もういいんじゃねえかローズベルト」


 それもそうかもしれない。だが、メイドの暗殺部隊をおくりつづけてやろう。


「行け魅惑の魔女アリエル」


 完全に未知の世界だった。このローズベルト、様々な精霊と契約している。アリエルもその一人で彼女はサキュパスと呼ばれる部類だ。


「さて冥土さま、踊ってくれよレオナルドとな」

「承知いたしました。ご主人様」


 こうしてサキュバスのメイドは放たれた。


「何だ、エリスちゃんじゃない偽物が現れてる気がするぞ。

「や、やめて」


 エリスのような幻は言う。これはサキュパスの見せる夢

 エリスをしばらく抱きかかえたままだったのでレオナルドの違和感は少し入った。


「磁石の力でいじめてあげましょうか」

「ふざけるな」


 サキュバスとレオナルドの戦いは始まりそうになった。


「ちょっと待って、レオナルドさん。この人......」

「何、もしかして知り合い?」

「そうかもしれない」


 戦う必要すらなかった。それはエリスと瓜二つの顔をした何かだったからだ。

「これはお父さんの作ってたタルパだよ」

「は?」

 途端にエリスの近くによる。

「違う。私はサキュバス。まあ、あなたの言ってることも正しいけど正確に言えばサキュバスなのよ」

「お父様、もう嫌い、あっち行ってて」


 途端にレオナルドにサキュバスがついていく


「ふざけないでってお父様に伝えてくれるかしら。サキュバスさん」


 エリスの起こった顔はとても怖かった。まるで能面のような顔になりながらサキュバスを追い払った。


「分かった分かった。ご主人様に能面盗んでおくってやるよ」

「何だこいつ。犯罪者まがいの子とする奴だな。

「へえ、天下のローズベルト様を殺してもエリスちゃんを守りたい?」

「ンなわけねえだろ。その親父は多分相当の馬鹿だぞ。能面盗まずに馬鹿野郎って伝えとけ」

「了解しました。つか、第二のマスターと呼びます。結局私も使い捨てだと思うんで」

「あー、やりそうですね。この子預かっておきませんかタルワールさん」

「あー、あのローズベルトのやり方はむかつく。どうせならカウンタースライムみたいなことしてえよ。なあマロン」

「やめなやめな。あの男かなりの頑固者だからさ。一回会うのをおすすめするよ」

「は......じゃあ俺がついてけねえじゃねえか」

「レオナルド、しつこいと嫌われるぞ」

「ははは、俺はオロチを信じる。だから貴族みたいな連中にはガキが食われてたまるか」

 のこぎりを騎士アーチボルトに投げた。

「貰っていく」

 雷電のアーチボルトはその雷電でオロチの形見といわれるのこぎりを握りしめた。

「ほう、面白いついでに招き猫も」

「やめろ、糞が」

 エリスからの発言だった。

「雪のような埃が舞う」

妹からの言葉が身に染みた。

『お姉ちゃん、この招き猫大事にしてね』

「猫牙老若拳」

 アーチボルトは石となった。

 そしてエリスは粉々に砕いた。

「ほら、オロチの形見なんでしょレオナルド」

残ったのこぎりを見ながら言う。

「ありがとう。エリス」

ブラックケンダーと呼ばれる彼は人間にあこがれを持っていた。だから、このエリスというお嬢様がとても気に入った。まあ、メイドメラルダにも似ているのだが。

「素敵な相手を見つけたようですねエリス。今回はここで勘弁してあげましょう。だが、貴方がいつ死んでもおかしくないように遺書を書いておきなさい」

「嫌」

 遺書を残したくない。エリスはそんな気持ちでいっぱいになった。

「ふざけるなエスメラルダ。俺が本気出したらどうなるか分かるか」

今度はタルワールがクランドを従えながら言う。

「分かったわ。何ならあんたの本気も試してみるくねくね」

「あーそうかよ。行くぞクランド。ゴキブリの羽DCromwell」

クランドという白蛇はその城からも想像のつかないほどにゴキブリを食べている。食べることにより能力をコピーする能力の持ち主だった。

「へえ、君って本気出せば強いんだ。じゃあ何でブロンズランクにとどまってるのさ」

「俺はドラゴンが嫌いだからだ」

オロチの時の回廊が流れ出す。

「オロチって知ってるか、あいつ鉛ランクのくせに無茶ばっかりする奴だったんだよ」











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