第62話
石段を上ってお参りをして、神社の由来などを書き留めていたら、りこちゃんたちのグループに会ってしまった。
りこちゃんは、ねねちゃんを含めてみんな女の子ばかりの五人グループだった。
あたしたちはしばらくお互いを見ていた。
すごく気まずかった。
何しろ、りこちゃんとはあのフェスの日以来、ちゃんと話していなかったのだ。
「行こう」とコタくんが言って、あたしたちは声をかけることもなく、場所を変えようとした。
「しずくちゃん!」
そうしたら、名前を呼ばれた。
振り向くと、りこちゃんがもう一度、「しずくちゃん!」と言った。
あたしは立ち止まって、りこちゃんを見た。
コタくんはあたしを心配して、あたしの手を握った。
それを見たりこちゃんの顔がぴくってなったので、あたしは胸が締めつけられそうになりながら、りこちゃんの次の言葉を待った。
「しずくちゃん……いろいろ、ごめんなさい!」
「……りこちゃん」
また何か嫌なことを言われるのかと思っていたあたしは、びっくりしてしまった。
「このまま、卒業しちゃうと気分が悪いし。……やっぱりあたしが悪いんだし。……だから、ごめんなさい!」
りこちゃんの後ろから、ねねちゃんが目で合図送っていた。
「うん、もういいよ」
あたしはそう言って、コタくんの手をぎゅっと握った。
りこちゃんはそれだけ言うと、「じゃっ!」と言って行ってしまった。
「すごいね、りこちゃんが謝ったね」
ここみちゃんが言った。
「びっくりしたね」
ひびきくんが言った。
「うん、びっくりしたよ。――でも、よかった、かな?」
「そうだね」
コタくんが言って、「じゃあ、社会科見学の続きしようか」ってひびきくんが言った。
「行こう!」
ここみちゃんが歩き出して、あたしたちは後に続いた。
あたしたちは予定通り山の方も行き、いろいろメモもした。
「これで、宿題はばっりちだね!」
あたしが言うと「だといいなあ」とコタくんが言って、みんなで笑った。
帰り道、またりこちゃんたちにあって、ちょっと手を振り合った。
くろとは駅のところで会った。
ずっと、食べ歩きをしていたらしい。
「……くろ、食べ過ぎじゃないの?」
「食べ過ぎて苦しい……」
くろはそう言って、しゅるんと小さくなりあたしのポケットに入った。
そして、お腹をぱんぱんにして小さくなったくろをあたしのポケットに入れて、あたしたちは学校へ戻った。
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