〖溺愛〗がインストールされました①
英雄の書庫――ライブラ。
新たなギルド名が、冒険者組合のリストに登録された。
現在、公式に活動中のギルドは一〇八組織ある。
ギルドはこれまでの実績でランキング順位が割り振られていて、上位のギルドほど人気が高く、冒険者組合からの信頼も厚い。
信頼を獲得すれば、組合との取引が有利になったり、組合から様々な支援を得られたり、時に外部からの依頼を受けることもある。
それ故に、ギルドの多くがトップテン入りを目指している。
俺たちライブラは最下位の一〇八位からスタートだ。
支部長のラクテルさんからはテン。
「あなたならすぐに上位陣に参入するでしょう。期待していますよ」
と、言って貰っている。
一応、個人としては阿修羅討伐の功績が得られた。
次に何か目立つ功績を残すことができれば、一気にランキングが上がるだろう。
気合を入れて頑張らないと。
その前にまず、大切なことをしておこう。
「それじゃ、まずお互いの自己紹介から始めようか」
「そうだな! 何事も最初が肝心だ」
俺とライラが二人並んで座り、新しくメンバーになってくれた三人の女の子が対面に座る。
ギルドとして正式に受理され、手続きも終えた。
せっかくなので、ちょっと高めのお店で夕食を取りながら、お互いに挨拶をしようと考えている。
中々訪れないおしゃれな店だ。
ちょっぴり俺は緊張しているけど、ライラは逆にワクワクしていて、他三人はあまり気にしていないように見える。
女の子はこういう雰囲気の店に慣れているのかな?
「おほんっ、えっと、まずは改めてありがとう。俺のギルドに入ってくれて」
「そんな! 私たちのほうこそありがとうございます! 新人の私たちが、レオルスさんみたいに凄い冒険者さんのギルドに入れるなんて、夢みたいです」
「凄いなんて、俺は大したことは――痛っ」
ライラに脇をつつかれた。
視線を向けると、小さく笑いながら彼女は言う。
「こういう時は素直に喜べばいい。この組織の頭はお前さんだろ? ならもっと堂々としていろ。自信のないリーダーになぞ、誰も安心してついてこれないぞ?」
「……そうだね、うん」
ライラのいう通りだと頷く。
俺は今日から、このギルドのトップ……ギルドマスターになった。
彼女たちの進退、未来を背負って立つんだ。
もっと堂々としよう。
不安にさせぬよう。
まだまだ自分に自信なんて持てそうにないけど、せめて側だけでも被らないと。
俺は咳ばらいをして、改めて話を続ける。
「俺のことはラクテルさんから聞いてるかな? 名前はレオルス、冒険者になってちょうど一年で、つい先日まで別のギルドにいたんだ」
「い、一年だったのか! あんなに強いのに!」
「わ、私たちと変わりませんね……」
元気な黄色い髪の女の子と、もじもじした人見知りな女の子。
二人とも同時に驚いていた。
どうやら聞いているのは名前だけで、詳しい事情は知らないようだ。
赤い髪の女の子が尋ねてくる。
「戦っていたのは元ギルドの方々ですよね? どうしてあんなことに?」
「それは……話せば少し長くなるんだ。その前、簡単に名前だけも交換しないか?」
あまり話したくはないけれど、仲間になったなら知っておいてもらおう。
上手く説明できるかわからない。
だから彼女たちの自己紹介の間に、上手い説明を考えておこうと思う。
と、その前に彼女のことだ。
「俺の隣にいるのはライラ。えっと……」
なんて説明すればいいんだ?
彼女の正体は他言無用。
その上で彼女のことを説明する語句が浮かばない。
悩んで数秒、間が開いてしまう。
「相棒、というのはどうだ?」
「――!」
ライラがそう言ってくれた。
相棒、か。
うん、悪くないな。
「そんな感じだ」
「ライラさんも同じギルドだったんですか?」
「いいや、レオルスとは偶然、ダンジョンの中で運命的な出会いをしてなぁ。あの日、共に生きようと誓い合った仲だ」
「お、おお……なんか凄そうだぜ」
少々語弊があるし、なぜダンジョンで出会ったのか疑問は浮かぶだろうけど、とりあえず話を次に進めよう。
「君たちの名前も教えてくれるかな?」
一応、ギルドメンバーの登録で三人の名前は聞いているけど。
こういう場で改めて聞いておくのもいいだろう。
最初に口を開いたのは、赤い髪の女の子だった。
「はい! 私はエリカです! 剣術が得意です! なんて、レオルスさんと比べたら天と地ですけど……少しでも上達できるように頑張ります!」
「うん。俺もまだまだ未熟だから、一緒に頑張ろう」
彼女は三人の中でリーダー的な存在のようだ。
チラッと登録の時に見たけど、年齢は三人とも十六歳らしい。
全員俺より年下で、俺より一年速く冒険者の道を歩んだ。
女の子が若くして冒険者を目指すのは、中々勇気ある選択だと思う。
続けて元気いっぱいに黄色い髪の女の子が手を上げる。
「はいはい! オレはクロム! オレも剣が得意なんだけど、割と武器なら何でも使えるぜ! レオルス兄さんの戦い、すっげー格好良かった!」
「ありがとう。兄さん?」
「おう! 俺より年上だし!」
「そ、そうか。うん、よくわからないけどよろしくね」
見た目美少年にも見える彼女は、三人の中で一番元気がいい。
字を書くのが下手だったり、大雑把な一面もあるみたいだけど、元気があるのはいいことだ。
そして最後、クロムとは対照的に恥ずかしがりながら口を開く。
「わ、私はフィオレと……いいます。職業は、一応……錬金術師です」
「錬金術師なんだ!」
「は、はい! だからその、戦ったりは苦手で……その分、ポーションとか裏方でサポートします」
「いや、十分にありがたいよ」
錬金術師に会うのは初めてで少し興奮してしまった。
ワイルドハントにもいない希少な才能をもっているらしい。
それぞれ個性的な子たちだ。
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