僕っ娘同級生

【京都人】内田ミヤコ

第1話

彼女は自らのことを指して僕と言っています。私は彼女のことがもー好き好きちょー好き。絶賛片想い中です。と言っても同じクラスというだけで、他に接点は全くない。彼女がノートを取っている姿を見つめたり。ただ、彼女が友達と話しているのを遠目から眺めるだけ。

だったんだけど、ある出来事をきっかけに私たちは一つだけ、秘密を共有することになりました。

私は毎日夜遅くまで部活動に励んでいました。部活が終わって帰る頃、ふと、教室に忘れ物をしたことに気づき、友達と別れて教室へ戻りました。

夜の静かな教室。何も出ないと分かっていても不気味です。私は自分の心臓の音を無視しながら、さっさと忘れ物を取って帰ろう、と思い自分の席に来ました。

すると、彼女の机が目に入りました。いよいよ心臓の音がうるさくて、耳鳴りがし始めました。

私は彼女の席に座ってみました。そして、確かめるように机に手を這わせました。私は、彼女の机から彼女の教科書、彼女のノート、彼女のテストの答案を取り出し、食い入るように読みました。私と同じもののはずなのに、なぜ彼女の持ち物というだけでこんなに愛おしいのでしょう?

僕、頭が悪いのよね。。。ほんと嫌になっちゃう。と、彼女の言葉を思い出します。確かにテストの点は低いのですが、字がお手本のように綺麗でした。


それから私は毎夜彼女の机に座って、彼女の私物を手にとるのが日課になりました。


もう罪悪感もなく、部活の終盤ともなるとそのことばかりが頭を支配します。今日のノートの落書きはなんだろう。犬かな?猫かな?友達への手紙はもう書き終えたのかな。

そそくさと部活の友達に別れを告げて、教室へ戻り彼女の席につきました。私と彼女の時間です。

私は机を弄ると。。。ごとっ棒のような固いもの手が当たりました。それ以外には机に何も入っていないようでした。

えっと思い、棒のようなものを取り出すと、鞘に収まったナイフでした。

机にはナイフ以外には何も入っていませんでした。

私はそのままナイフを手に取って見つめていました。鞘からスッと抜いてみると、白い刀身が現れ、夜の教室の中でしっとりと濡れたように輝いていて、彼女の肌のように美しかったです。

私は自分のカバンからノートを取り出し、ナイフをページに滑らせると面白いようにすーっと切れました。

へえ。。。と思わず声が漏れます。すると、


僕のよ、それ。


背後に彼女が立っていました。

う、あ!私は慌ててナイフを手から落としそうになり、驚いて指を切りました。いたっ!ナイフはよく切れるのでざっくりと傷があき、血が、彼女の制服に飛び、滲みました。


しかし、彼女は微動だにせず私をみていました。

僕の席でしょ、そこ。


私は走って逃げました。彼女は追ってきませんでした。

翌日、学校に行きましたが、彼女は何も言われず、私の変な噂が立つ、ということもありませんでした。

私が彼女を眺める権利は今も許されているようです。もちろん、あれ以来彼女に席には座っていません。

彼女が友達に向かって言いました。この制服のシミ?ご飯の時にこぼしてしまったの、ふふ。私は彼女の優しいところも大好きです。

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僕っ娘同級生 【京都人】内田ミヤコ @uttixi

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